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〈初体験〉全く別の世界の仕事を半年間やってみた時の日記。

これはデザインしかやったことがない人間が、移住先で日本酒造りの杜氏修行を6カ月間した時の気持ちを綴った手記である。

書くネタを探していて、Evernoteの奥の方にあった記事を見つけた。
春の季節に似合う、初心の表れたノートもたまには、いいかなと思った。

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6カ月が経った。
僕が青森県十和田市に来て、
酒づくりに携わって。

経ってみると早い。が、
(酒造りの)最中は、まだかまだかと終わるのを待ち望んでいた。
それぐらい、過酷な時があった。
けど、その過酷にも慣れるから凄い。

もうすぐ、そのシーズンが終了するが、初めての体験を記しておこうと思う。

酒造りは赤子をあやすのに似ている

酒造りは、何しろ手間がかかる。
それは、子育てに似ている気がした。
きっと、母の気持ちとは、こんな感じなのではと。
男として思う。

逃れられないことの辛さ。
ずっと、子どもに向き合う日々。
産まれたての子どもに付き添って、消耗する。
時には体力を奪われながら、憔悴しながら、それでも、幸せに包まれながら。
そう、喜びがあるので、
辛さが帳消しなる感じ。

そんなところまで、似ている。気がする。
ちなみに、酒づくりの“喜び”は、
麹(こうじ)に触れている時にやってくる。

他の仕事の大半は、溜め息系に属する*と思うけど、麹に触れている時は、別のスイッチが入るからとても不思議だ。

*7割は洗い物と掃除と力仕事。

麹室(こうじむろ)と呼ばれる部屋で、米を麹菌によって麹に化けさせる。
つまり、米のでんぷんを糖に変えるのだが。
その時の米が、人肌の体温に近くなる。

さらに、その米を様々な布地で、やりとりするのだが、まるで赤子をあやすかのような錯覚がある。
大事に。丁寧に。慎重に。
それでも泣くから、手早く。
みたいな感じ。
(ニュアンス伝わるといいのですが…)

この室仕事(“ムロしごと”と呼ぶ)は、きっと僕だけでなく、誰もが近い感覚を味わうのではないかなと思う。
特に、日本人は。米に対して特別な愛情があるし。

睡眠が必要

ところで、
酒造りは、寒くなる冬のシーズンに始まり、桜の咲く頃に終わる。
もっとも大変な期間には、
二週間ぶっ通しで働く。

まだ陽のない時間から、
夜更けまで。
体力仕事とデスクワークとでは、
同じ時間でも、全く疲れが違うことが分かった。

どちらがよいということでなく、
体力仕事を使う仕事では、
必ず睡眠が必要になってくる。
寝ないとチカラがでないのだ。
だから、必然的に睡眠時間が4時間→6時間になった。

春がくるとやっと休める

蔵人の仕事は秋に始まる。小さな蔵は、冬季の間に酒造りを集中する。*
一年の中のその時だけ、手伝いに来る人もいて増員する。
懐かしい顔が現れると『おう、元気にしてたか〜』と世間話から始まる。

*若手が育たない、人員を確保できないなどの理由から、雇用問題を解決するため、通年醸造に切り替える蔵もある。しかし、それには設備が必要。

凍てつく寒さをすぎると、陽も少しずつ長くなる。タンクの中のもろみがどんどん少なくなると、安堵とともに蔵人たちの緊張も緩む。春だ。春がきた。

うちの猫のオヤツが豪華になります