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国語辞典の図版を数える : ①概要と結果

はじめまして、Lakka26です。
国語辞典や百科事典、図書館に興味があります。時々Wikipediaも書きます。


はじめに

突然ですがみなさんは国語辞典の図版に注目したことがありますか。
友人に聞いてみたところ、「そういえば小さい頃、辞書のイラストがあるページをひたすら見ていた」という答えが返ってきました。そんな幼少期を過ごした全国5000万人の辞書ファンのみなさんに朗報です。

全部数えました!!!!!!!

この記事を読むとどの辞書が図版が多く、どの辞書が図版が少ないかを知ることができます。また、その調査を通じてわかったそれぞれの辞書の特徴もまとめる予定です。数回にわたる連載とはなりますが、どうぞ最後までお付き合い下さい。

🔍調査対象

一般向けの小型国語辞典で、10年以内に改訂されているものを対象としました。その結果、以下の9冊が調査対象として選出されました。

🔍調査方法

上に挙げた9種類の辞書を最初から最後までめくり、目視でカウントしました。Excelに見出し・表記を打ち込み、各辞書のその項目の図版の有無を○と×で示します。ここで3つの注意点があります。

  1. 今回の調査で言う「図版」とはイラストのことを指します。表・コラム等はカウントの対象外とし、(今後何度も登場するであろう)Excel表には反映されていません。それらについては、個別に辞書を見る際に触れていければと考えています。

  2. 先程述べた通り、目視でカウントしています。気をつけてはいますが、確実に見落とし等あると思います。

  3. 今回の調査では図版の数を数えることを第一の目的としています。そのため、「何の図版が載っているか」という点において精密性を欠くところがあります。例えば「葛」を見てみると、<三国8>にしか○がついていませんが、実際は<新選10><旺国11>の「秋の七草」の項目にも「葛」のイラストが載っています。(表1)

表1.秋の七草,葛

調子にのって調べすぎたのでご覧の通りExcel表がめちゃくちゃ小さいです。先に謝っておきます。申し訳ないです。

🔍調査結果

⑴図版数

まずは単純に多い順に並べてみます。結果は次のようになりました。

① <新選10>  574個
② <旺国11>       466
③ <三国8>     390
④ <学現新6>    294
⑤ <三現新6>     140
⑥ <明鏡3>    6
⑦ <現国例5>   2
⑧ <岩国8>    0
⑧'  <新明国8>    0

<新選10><旺国11><三国8><学現新6><三現新6>は100を超えているのに対し、<明鏡3><現国例5>1桁<岩国8><新明国8>0という結果になりました。

⑵何語に1つ図版があるか

もっと詳しく見てみましょう。
何語に1つ図版が載っているか調べてみることにします。計算式は以下の通りです。

(収録語数)÷(図版数)

収録語数は調査対象で示した各辞書の公式サイトのものを使用します。<明鏡3>は公式サイトに収録語数が見当たらなかったので、こちらの記事を参考としました。

いずれも大体の語数ではありますが、細かいことは気にしないことにします。

※きれいに割り切れなかったものは小数点第二位を四捨五入。

さて、結果はこのようになりました。

① <新選10>  93910÷574= 163.6
② <旺国11>  83500÷466= 179.2
③ <三国8>    84000÷390= 215.4
④ <学現新6>   77000÷294= 261.9
⑤ <三現新6>   77500÷140= 553.6
⑥ <明鏡3>   73000÷6= 12166.7
⑦ <現国例5>     71000÷2= 35500
⑧ <岩国8>           67000÷0= 0
⑧'  <新明国8>        79000÷0= 0

順序は⑴と同じでした。
数字が大きすぎて全くピンときません。次はもっと大きな単位で計算してみましょう。

⑶何ページに1つ図版があるか

何ページに1つ図版が載っているか、以下の方法で計算します。

(ページ数)÷(図版数)

※ページ数は序文、索引、付録等を除いたページを示します。
※きれいに割り切れなかったものは小数点第二位を四捨五入。

結果は以下の通りです。

① <新選10>  1484÷574= 2.6
② <旺国11>  
1590÷466= 3.4
③ <三国8>   
1688÷390= 4.3
④ <学現新6>   
1574÷294= 5.4
⑤ <三現新6>   
1527÷140= 10.9
⑥ <明鏡3>    
1796÷6=  299.3
⑦ <現国例5>   
1526÷2=  763
⑧ <岩国8>          
1693÷0=  0
⑧'  <新明国8>      
1700÷0=  0

こちらも⑴や⑵と変わらない順序です。
しかし、かなりイメージしやすくなったのではないでしょうか。

最も図版数が多かった<新選10>2.6ページに1つ図版があるという驚異的な数字を叩き出しました。
<新選10>は調査対象の辞書の中で最もページ数が少ないので(若干ですが)、こうして割合の数字を出すとより図版の多さが際立ちます。

個人的には<学現新6>5.4ページに1つでもそこそこ多い印象を受けるのですが……



⚠️ここまで図版の数や割合をランキングのように示してきましたが、多いから良い・少ないから悪いというわけではありません。これらはそれぞれの辞書の特徴に基づいており、辞書を読み解く鍵のひとつとなると考えます⚠️

実際<新選10><現国例5>はどちらも小学館から出ている辞書ですが、<新選10>574個に対し、<現国例5>2個
三省堂の辞書も明確な違いがあり、<三国8>390個<三現新6>140個<新明国8>0個です。

では、こうした違いを生み出すそれぞれの辞書の特徴とは一体どのようなものなのでしょうか。

次回は、9種類の辞書1つ1つに注目し、分析や考察を進めていきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。


※追記
続編が出ました!


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