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【参加レポ】2023年度JACET英語辞書研究会第2回例会

こんにちは!Lakkaです。

3月10日に中央大学にて行われた2023年度JACET英語辞書研究会第2回例会に参加してきましたので、今回はそのレポート回です。10月の第1回例会では本サークルの代表・ふずくも発表しました。

↓↓ 第1回例会のレポート記事はこちら ↓↓

辞書尚友からは、前回と同じ3名が参加しました。


JACET英語辞書研究会とは

JACET英語辞書研究会は,英語の辞書についての研究発表の場を設ける等の目的のもとに1995年12月に発足し,以後,英語辞書・英語語法に関する研究を精力的に展開しています。原則として年に1回の大会を開催するほか,適宜,ワークショップや講演会を実施しています。2006年末には,辞書学及びその関連分野に特化した論考を収めた本邦初の論文集,English Lexicography in Japan(大修館書店)を刊行しました。当研究会は,「JACET英語語彙研究会」とも密接な研究上の連携をとっています。

大学英語教育学会英語辞書研究会ホームページ

プログラム

テーマ:辞書製作にまつわるお金の話

・廣瀬恵理奈氏(株式会社kotoba)「辞書を取り巻く状況」
・星野龍氏(株式会社研究社)「インフラ化する辞書」

感想

ふずく

やあやあどうもふずくです• ᴥ •
今回のテーマは「辞書製作にまつわるお金の話」ということで、いまいちど辞書業界が置かれている情報を整理する機会になりました。

「こういう辞書があったらいいのに」「ここはもっとこうできるはず!」と言うだけなら簡単ですが、実現できるかは別問題なんだなあ、と痛感した次第です。

個人的に印象に残ったのは、GIGAスクール構想が辞書改訂のハードルとなるという点です。

GIGAスクール構想
・1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで、特別な支援を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育 環境を実現する
・これまでの我が国の教育実践と最先端のICTのベストミックスを図ることにより、教師・児童生徒の力を最大限に引き出す

(リーフレット)GIGAスクール構想の実現へ

1人1台端末?便利でよさそうじゃん!
私たちの時代とは違うんだなあ(老人並感)という印象しかなかったので、この話は寝耳に水でした。

なぜGIGAスクール構想が改訂のハードルになるのか。

タブレットで辞書を使うのにデジタル辞書サービスは予算で採択されず、無料のよく分からない辞書アプリやインターネット検索・翻訳サイトに流れていくんだそう。

学習に使うものなんだから、ちゃんとしたものを使ってほしいという気持ちはあるけれど、予算が厳しいんだったらどうしようもないのか……。
お金を出すのが学校ならまだしも、各家庭の場合は特に厳しいでしょうし……。ウーンウーン。ままならない。

紙辞書を使わないのは悪ではないが、質が低い辞書や教育向けでないものを使うことに。それでは学習にプラスにならない。

そうなんです。
紙辞書がただ偉いんではなくて、学習上の要求(ことばの意味を調べる・知らない漢字を調べる)に対してもっとも合致するツールが紙辞書であるから、紙辞書を使ってもらえていない現状を変えたいんです。
もちろん儲かるにこしたことはないんですけどね。

さて、以降はふずくが個人的に考えていることを交えながら……。

辞書はやはり厳しい状態にあるのは間違いない。
けれども、辞書業界全体として、何を求められているのか、何が不足しているのか、どうもうまく捉えきれていない印象があります。
作り手が問題視している部分は実はユーザーには些末なことであったり、逆にユーザーの不満を作り手が「辞書はそういうものではないから」と言ってみたり。
作り手とユーザーの認識の乖離をどう埋めていくかが課題のような気がします。

今回の会は、現状を見つめ直すことで、そういった課題を打破せんとするよい機会だったと思います。
次は、未来の話をしたいですね。
ではでは。

Lakka

会のはじめに、代表の小室先生がこのようなお話をされました。
「アカデミックの世界ではお金の話をしない。しかし辞書は本来商品であり、売れないと意味がない。改訂もできない」

これまで一辞書ファンとして過ごしてきた私にとって、この言葉は衝撃的でした。もちろん、辞書が売れない、厳しい状態であることは何となくわかっていましたが、改めてその現実を突きつけられたように感じたのです。

廣瀬さんは辞書編集者から見た辞書の諸問題をまとめた上で、これからの辞書に必要なことを述べられました。特に印象に残っているのは、「ユーザーが引きたい瞬間と辞書を近づける」というお話です。具体的には、ネット記事やSNSで調べたい言葉を見つけたとき、辞書アプリにそのまま飛ぶことができるようになれば便利だよね、というようなことです。

私は紙辞書を100冊以上持っていますが、普段はアプリの辞書(物書堂)を使っています。理由は単純で、本棚から取り出して、引いて、また別の辞書を取り出して、引いて、という過程が面倒くさいからです。そもそも外出中であれば、本棚から取り出すこともできません。
調べたいと思った瞬間にすぐ調べられるという即時性は、単純なことですが、本当に大事だと思います。デジタル化が進む現代において、"ユーザーフレンドリーな辞書"の定義も変わってきているのではないでしょうか。

星野さんの「インフラ化する辞書」という発表では、辞書という存在が形を失いやすいものであるということに気づかされました。星野さんによると、無料のウェブ辞書の普及に伴って"辞書にお金を払う"という感覚が失われつつあるのだといいます。つまり、辞書はひとつの機能としてしか認識されていない、ということです。

私は辞書の役割について次のように考えています。様々な情報が溢れる現代において、私たちは簡単に多くの情報を得ることができます。しかし、情報が多すぎてどれが正しいのかわからない、またうまくまとめることができないと感じる人は少なくないと思います。そうした人たちに短く、正確な情報を提供するのが辞書です。出版社から発行されている辞書にはある程度の権威があり、信頼できる情報源であると言えるでしょう。辞書は、私たちの代わりに溢れた情報を整理し、まとめてくれているのです。

辞書のインフラ化が進んでいるという事実は間違いありません。その背景には、ユーザーと作り手の間に認識のずれがあることが挙げられると思います。どうやったら辞書を使ってもらえるか、引いてもらえるかを考えることよりも、今の辞書にどんな魅力があり、使うことでどのようなメリットがあるかをユーザーに伝えることが必要なのではないでしょうか。おふたりの発表を通して、辞書の未来に強い危機感を持ちました。今回学んだことや感じたことを忘れないようにしたいです。

葵井

こんにちは、葵井です。昨年の第一回例会に続き今回も参加させていただきました。

今日出版業界は軒並み不況と呼ばれ、斜陽産業と揶揄する声さえも聞かれます。

インターネットの発達に伴い、若年層を中心に書籍離れ・ネット依存が加速していることはまごうことなき事実です。しかし出版社無くしてトレンドを創出し、私たちに提供してくれる存在は他にありません。
基本的にネット記事を信用しない私は、特に書籍・雑誌を情報源によくしています。(笑)

さて今回は出版業界において殊に発行部数が落ち込んでいる辞書の現状を「お金」の側面から見つめる、というテーマに基づきお二方にお話をいただきました。

まず私は誰もが耳にし、目にしたことがある著名な辞書ですらも利潤をあまり得られていないという事実に愕然としました。
初版数十万部を売り上げながら収支は赤字となった辞書もあったそうです。


お二方のお話を伺って実感したのは、何よりもまず辞書の収益性の低さでした。


辞書を新しく発刊する際、語義や字義等は既存の辞書を参考に掲載されます。
しかし言葉は流動性の高い概念。用例は時代に応じて更新する必要性があります。
語義に関しても所謂誤用や慣用読みをどのように扱うか検討する必要があります。
さらには使用する紙を選定し、二色刷りとするか多色刷りとするかを決定し、と刊行に至るまでに膨大な時間と労力を要する過酷な作業が待ち受けています。

私は辞書の販売価格はあまりにも低すぎるのではないかと思います。ただその作業に見合った価格に改定した場合、辞書の販売冊数はより減る可能性が十分に考えられますし、いずれにせよ苦境に立たされる現況はあまりにも嘆かわしく思われました。

無料のオンライン辞書サービスで入る広告料、電子辞書にコンテンツとして搭載される上でのライセンス料、どれもお世辞にも高いとは言えません。電子辞書は平成19年をピークに売上台数が激減、平成30年には微増に転じるも俯瞰して見るとかつての3割ほどにまで落ち込んでいます。


辞書尚友のメンバーは皆紙の辞書を大切に思っています。中には自宅に辞書を数百冊取り揃えていらっしゃる猛者も…(しかも複数名…)。

私は辞書の勉強をするために参加した身ですから数十冊程度しか所有していません。ただ辞書が好きだという気持ちは強くあります。

その上で今回のお話を受けて、紙の辞書の重要性を再認識しました。

私は電子辞書を肌身離さず持ち歩いています。やはり利便性の高さでは紙の辞書は敵いませんし、インターネットの情報とは違う担保された正確性があるからです。

ただ電子辞書に収録されていない辞書は無数にあり、素晴らしい内容の物も数多あります。


辞書の改訂計画は基本的に紙媒体の売上数で決定されるそうです。

オンライン辞書も電子辞書も、辞書アプリも。それぞれに長所があります。
しかし辞書の原点は紙であり、紙の辞書にも長所はあります。

これからの辞書尚友メンバーとしての活動を通して、紙媒体の辞書の良さを広くアピールできればと思います。


今回も大変貴重な機会をいただきありがとうございました。

おわりに

今回の例会は、これからの辞書について考える非常に貴重な機会となりました。感想からもわかるように、メンバーごとに違った学びがあったのではないかと思います。今回学んだことを今後の活動に生かせるよう、これからも精進していきたいです。

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