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スリル・ミー(2023年木村前田ペア)

柳さんと配信を見た!

以前から人のツイートがきっかけで気になっており、この度配信があるということで誰のペアを見ようかな〜とツイートしていたらありがたいことに柳さんが一緒に見ましょう!と声をかけてくれたので一緒に見た!嬉しいお誘いだね。

ちなみに筆者は過去スリル・ミーを観劇したことがなく、今回は木村達成・前田公輝ペアしか見ていない初見の感想です。
木村達成氏の演技や歌は過去テニミュで見ていて、前田公輝氏はよくドラマに出てらっしゃるのは知ってるけど演技はちゃんと知らない!という印象。

今回は感想というよりも、自分が未来で読み返した時に参考になるメモという意味合いが強いので長い!
全部書き終わったら1万4000字あった。自分以外誰が読むんだよ。

・実際にあった事件が元になっている
・青年たちは弁護士を目指している
・犯罪行為をする
・同性間の強い感情が見られる(おそらくブロマンス)
・観終わった後は元気がなくなる
という以上の情報をひっさげてTRUMPシリーズを観るような気持ちで意気揚々と観始めたんだけど、ブロマンスとかじゃなくてシンプルに性愛とかの愛の話だったのでびっくりした。

余白が多い舞台だったので人によって表情ひとつ、セリフや歌の言い方一つで受け取る感情がかなり違うだろうな。

この作品では罪を犯した後2人は逮捕されてしまうのか?というハラハラシーンに重きを置いているかと思っていたので、裁判のシーンから始まって驚いた。
もう私は捕まっていて、34年服役していて、ではなぜ19歳だった頃の私が彼と共に罪を犯したかという理由が私の口から語られる。
だからこの時は53歳なのかな。
(追記:どうやら54歳らしい。)

この54歳の木村私は伏目で顎をあげていることが多いのでまつ毛が顔に大きな影を落としているし、まつ毛が照明を浴びて白く輝いている。
まつ毛が白くなっているようで、そこを含めて年齢を感じさせる。
だからこそ私の回想シーンになるとまつ毛が黒々としているので、ぱっちり目を開けているだけで一気に若返った印象になる。
長いまつ毛にはこんな使い方があるんだなぁ……
メガネのレンズにまつ毛が当たってしまいそうだ。

冒頭のバードウォッチングのシーンで私は手帳を上から片手でつまむように持ちながら書き物をしていてかなり独特。書きづらくないのかな?

彼が後ろから音もなく近づいて来て私を驚かせるシーンで、彼の手が完全に私の胸のあたりを揉む手の形だったの、な、何……?と思った。
ここ、驚かせるのが目的だから肩をポン!とするとかでも良いはずなのに。

「もう来ないかと思った!約束は3時だよね?」って言っている時点でかなりの時間が経過しているはず。
下手したら1時間くらい待たされていた可能性がある。それでも彼と約束をしたから、彼に会えるかもしれないからと健気に待ち続ける私よ。
そして待たせたにもかかわらずごめんの一言も言わない彼の対比。
ここ、彼は多分力の差とか立場をわからせるために適当な場所で時間を潰してあえて遅れてきたんじゃないかな〜と思う。

「他の奴らはこんな面倒なことはしない」「だってただの友達じゃないはずだろ!」のくだりで、自分の彼女に「あーあ……おれの元カノ(セフレ)ならこんなこと言わなかったんだけどな……」と言って嫉妬や束縛を牽制するモラハラ彼氏っぽさを感じたんだけど、この直感はかなり当たっていた。

私は私で「僕だけがわかってる!他の奴らと一緒にいる意味はない」と断言しているので、自分だけが彼の理解者だという強い自信がありそう。
自分に言い聞かせるような言い方じゃなくて、自明の理である言い方。これってすごくない?
そう思えるだけ私は頭が良くて、彼と長くつるんでいるから彼のことを理解しきっていて、一緒にいて気が引けないくらい実家が太いんだろうな。

彼が「火持ってるか?」と言った時点ですでに私がマッチ箱を差し出しているシーンがあるけど、この時点で既に私にとって彼のことはお見通しと示唆されているのかなぁ。
それにしても舞台上で本当にマッチに火をつけてタバコを吸うシーンってなかなか見ないので、火と煙を見た時はかなり驚いた。

「僕の元へ帰った!一番大切な僕の元へ」のシーンでニコニコ笑っているのって、やっぱり自分が彼のいちばんにふさわしいという自負があるからなんだろう。
まぁ普通の人は放火や盗みなどの犯罪行為に付き合ってくれないでしょうし……
これって愛や、彼からの言葉のコントロールの結果もあるけど、ホモソーシャルもあるんじゃないかなと思った。
この二人の関係性がたまたま一対一だから見えづらいけど、これが一対複数だったら彼のホモソーシャルがよりわかりやすく見えるんだと思う。
犯罪をする男らしさ。勇気。スリル。

この前田彼、女の子からはめちゃくちゃモテそうだし、男からも割と慕われていそうだしかなり完璧な人間の雰囲気が漂っている。そりゃ令嬢とも遊びますわな。

タバコの煙を顔に吹きかけられて私がむせた時、その反応を見て彼が楽しそうにニヤッと笑っている。
自分の言動で私が困ったり悲しんだりするのが心地よくて嬉しいんだろうな。
手のひらの上で相手が転がってくれることに安心感を抱いている。

ニーチェの会に行くのはやめて予定を変えてお前に付き合ってやるって言った彼に私が「車で出かける?どこか」って言うんだけど、一言一句に音符マークが付いていた。
私は彼といる時間が大切で楽しくて嬉しくて仕方がないんだな。尻尾を振る犬が見えた。
でもこの彼と車でどこかに出かけて楽しいか……?楽しいのか。私がいいならいいんだけどさ……

あと彼ってもしかして元々ニーチェの会に行く気はあんまりなかったんじゃないかなぁ……
最初から私と放火する気満々だった気がする。
あえてこの後用事があるって言った後で、やっぱりお前のためにその用事はやめてやるって行ったほうが相手は嬉しいじゃんね。こういう言葉のコントロールが上手い。
このシーンでつんく♂のこのツイートを思い出しました。


「“また”火をつける気か!」ってセリフでしっかり前科がある〜!と思ったし、牛小屋や資料室に火をつけてたり、同級生の高級タイプライターを盗んでたりで冒頭のシーンから結構罪を重ねている。
こういう悪いけどリーダーシップがある男って“男らしく”見えるから人の目から見てかっこよく映るだろうな。

明らかに放火に乗り気でない私を見て帰ろうとした足をUターンしてきて、口角を上げたまま急に私に軽いキスする彼、すごい、すごいことする、すごくない?
自分に物凄い自信と、自分が相手にとって価値のある存在という自覚と、相手が自分にゾッコンであるという自認がないとできないことだよ。
しかもそれっておそらくこの私から慕われまくった結果培われたものなんだろうな……

前田私って典型的なモラハラ彼氏って感じがするけど、笑った時の口がωっぽいというか、アヒル口っぽくなるというか、口角の端がにゅんと上がるためチャーミングな印象も受けるのでずるいなと思う。
そんな彼がニヤッと笑った後で後頭部に手を回して唇を喰むようなキスを繰り返してくるの、狂っちゃうよ。

しかも彼に縋り付きたくなったタイミングでパッと切り上げるのも、私が絶対に満足していないのを見越した上で「これで満足か?」と言うのも狡い。
彼の指示に従って命令を聞いていればこのキスの続きができるかもしれないと思わせるのが巧み。
木村私って物足りないって顔をするのが上手い。前田彼に触れられるのが心底好きなんだろうなという表情をする。
(ここの場面、人の感想を読んでいたら私からキスを切り上げた、私は寂しそうな悲しそうな顔という意見が多数だったのでかなり色眼鏡で見ていたかも)

レイってどういう経緯でついた愛称なのかわからないけど、言葉の響きが美しく玲瓏でいいなと思う。本名ではなさそう。
彼の口から出るレイという言葉の響きの美しさに惚れ惚れしてしまう。

そのため呼んで欲しいとわかっていたからあえて名前を呼ばなかった彼の気持ちもわかる。だってこんなに美しい響きなんだもの。
私にとっては何よりも甘美な響きだろうし、そりゃ出し惜しみしたいよな。

私が「お前は変わっていない。幼い」と言われた後に「どれだけ成長したか見せてやるよ。触って」「ちゃんとお願いするんだ」「触って、ください……」って言って手を握るシーンってかなり身体関係やセクシャルな関係の比喩だと思っているんだけど合っている?
だってセックスでもしてないと普段こんな言葉の掛け合いなんてしないし。
そのとってもらった手に愛おしそうに頬擦りする私……歌いながらゆっくり手を私の首に這わせる彼……それに恍惚とした表情をする私……

彼も私に触れるのってあながち満更でもないのかもなと思った。
お預けにして、待てをされた子犬のようになる私をそれなりに愛しんでいるのかもしれない。
「続きは場所を変えてから!消防車が来るよ」の私ってこれ以上のことをしたいけど、消防車にそれを中断されても興醒めだし別の場所に行こう!というニュアンスだよね。
この炎のシーンの木村私の彼に被せるような高い歌声が好き。

そして最後まで見るとこのシーンまでの時間が、なんならこの時間が2人にとって一番良い時間だったんじゃないかなと思ってしまうよ。
放火はしてるけど……

彼から連絡が来なかったことに耐えられず夜遅くに直接彼の家を訪ねて行った私、この当時にLINEがなくて良かったね……と心底思った。
LINEがあったら既読がつくつかない、返事が来る来ない、通話がかかってくるかもしれない、で私は狂っていたんじゃないか。

そして弟に入れてもらったと言った時に彼が「締め殺してやる」って言うんだけど、この締め殺してやるがあながち冗談でもないことが後にわかる。

私は彼に弟を当てつけるとある程度言いなりになるのを覚えて、幼い子が1つ覚えで使っているような印象を受ける。
彼は本気で弟のことが嫌いなので、弟を引き合いに出されたらその言いなりになるしかなくて心底不快だろうな〜

「俺が寝てるのを見てれば良い」に「ありがとう」と言う私、本当に嬉しそう。
寝顔を見せてもらえるのが嬉しいのかもしれないし、木村私なら本当に寝ている前田彼を一晩中見ていそうなパワーを感じる。
ありがとうの後に少し逡巡するものの彼に近付かず、離れたところから見てるだけなので律儀な男だよ。

ニーチェの本を差し出してきたので受け取ろうとしたら彼が床にベシっと投げつけて、私があっ……って顔をした時、彼は気持ちよかっただろうな〜
私ってあまりにも彼に従順なのでキュートアグレッションを刺激されそう。
身長は変わらないのに彼を上目遣いで見る健気さを見ているとチクチクと意地悪したくなるというか。

ここの本を受け取った私が背表紙でタイトルを見て、左から表紙を開いたのであれ?と思ったけどそりゃ外国語の本だからそうか。

放火を続けることに不安を抱いている私を後ろから抱き抱えるように肩を抱いて、私がすがる瞬間パッと立ち上がって「もういいよ」と突き放した後「お前がいなきゃダメなんだ」と2回も言う彼、DV彼氏のお手本のような飴と鞭の使い方だ。

ここで「別に止めようとしてるわけじゃない……!」って強く出られないけど、「どうせ裏切られるだけなんだ!」って彼に言う私はかなり気持ちが揺れていることがわかる。
が、がんばれ!いや犯罪行為は止めろよ!法律の勉強してるんでしょ!?おっしゃる通り裏切られるだけだぞ!って応援したくなるんだけど、「がっかりだな……少しはまともな人間になったと思ったのに」「上辺だけの親友か?」と私の“人間性”と“関係性”に言及することで気持ちを揺さぶるのがお上手。
あとここで名前を呼ぶ。
私を都合よく動かしたい時にだけ、彼は「レイ」と名前を呼ぶ。

彼の「対等で平等な立場紙の上」って歌詞、誰がどの立場で言ってるのよ!すぎる。
言葉巧みに私をコントロールしておいて、対等で平等て!

彼って大人っぽさと子どもの幼さを兼ね備えている人だと思うんだけど、契約書のくだりなんかはわかりやすく子どもっぽい。
関係を保つために契約書に記すのおかしいだろ!人との関係性を保つためにそんな紙面上の契約なんか必要ありません!と思うけど、彼がそういうならその形式がベストなのもしれない……と口答えできない雰囲気を持っている。
彼は大学で習った契約書の形式を実生活で使ってみたい好奇心みたいなのもあって契約書を作っているよね。

この後私は懐からおもむろにメガネを取り出すんだけど、メガネをかけた後クリアになった視界で彼のことをジ……と見つめていたので笑ってしまった。
本当に彼のこと好きなんだな。彼の顔も心底かっこいいな〜!って思っているんだろうな。
このシーンのタイプライターを打つ手つきが滑らかで、音も心地よく、紙も動いていて作りが凝っているな〜と感心しながら見ていた。小道具の造りがいいのって素敵だ。

ナイフがよく似合う前田彼。
私は彼のことが好きだけど、彼は人をいたぶるのが好きだと知ってるので指を出すのに躊躇する。
「痛くはしない」と優しく言われておずおずと差し出したのに、力ずくで手を引っ張られて結構深めにナイフで切られるのでしゃがれた呻き声が出てしまう木村私、可哀想。
「前にもやったことがある」と言いながら自分の指は一切見ずに私に見せつけるようにしてナイフで指を切る彼、「前にもやったことがある」というのは自分の意志で自分をナイフで切った自傷にかかっているのか、こういう血判を以前誰かとしたのにかかっているのか。
尋ねても教えてくれないであろうことを匂わせて不安な気持ちにさせるのがうまい。

この赤い血のサインの曲好きだな〜
契約書が出来上がった時彼の懐に入ろうとした途端スッと身を引かれてしまうところに私の愛おしさが出ている。
彼にとっては契約書を作るまでが気持ちの最骨頂だったのであって、出来上がって仕舞えば指でお前が持っておけとピッと払う程度の扱いでしかない。

強盗をした後、前田彼は高揚してヒャハ!ヒャハハ!と笑いながら来るけど、木村私は喉から出るヒュウヒュウとした悲鳴を押し殺せていない。
彼がここに来た瞬間は体の底から湧き上がる高揚感をなんとかいなしている感じだったけど、その感情はすぐに萎んでしまった。
一方私はとんでもないことをしてしまったと今にも泣き出しそう。

彼が戦利品のジッポを取って、片手だけを使って火をつける仕草が何回見てもスマート。
火を見る彼に触れようとする私の手は壊れ物を触るようだ。
そして強盗を手伝った代わりに欲しいものが絞り出すような「抱きしめて欲しい」だったのであまりの健気さにびっくりした。
強盗と釣り合ってないよ、そんなの……

彼は火を見た後から自分のコンプレックスが発露して、家族への鬱憤が今にも破裂しそう。様子がおかしくなる。
それをはねつけるように「僕の方を向いて!そして僕の目を見て!」と言う私は彼がずっと犯罪や家族にしか目を向けていないのが不安。嫉妬しているのかも。
とにかく彼が自分に対して関心が薄いことが気に入らない。でもその不安をぶつけるのは今じゃなかったかも。

私が彼の不安を理解して抱き締めることができなかった時点でここの関係性がめちゃくちゃになるのは目に見えているんだけど、同じく不安を抱えている19歳の少年にその役割は無茶だわな……という気持ちもある。

「今度は抱きしめて、もう焦らさないで!」のところ、木村私は焦らさないで!の言い方がかなり力強い。
確かに前田彼ってセクシャルな意味でも焦らすのがめちゃくちゃうまそう。
木村私を見ているとニンジンを目の前に吊り下げられながら走る馬を彷彿とさせる。

床に這いつくばって彼のこと無理やり抱きしめに行こうとした瞬間、彼から盗んだ鞄をぶん投げられる勢いが良すぎてちょっと笑ってしまう。
勢いよく彼を抱きしめようとしたのにそれを上回る勢いで鞄が吹っ飛んできた感じ。
木村私って触れ合いに重きを置いていそう。

前田彼、カッ!っと激怒を表面に露出させた途端その激怒を身体の中にしまい込む感じがある。
表面には出ていないだけで、身体の中で怒りの炎がメラメラと燃えているのがわかるというか、消火しかねる感じ。

契約書を見せて「ここで破り捨ててほしい?」って言うシーンは私が若干優位なシーンだから段差の上に立っているのかな。

ここ、私のお願いは「抱きしめて欲しい」だったのに彼が服を脱ぎ出したのでびっくりしてしまった。性行為の比喩だったんですね。
それに対してわざとらしく「さっさと済まそう。明日は、早いんだ」と言う彼の冷たさ。
マイクがこめかみのあたりについているせいで服の衣擦れまで仔細に聞こえてきてドキドキする。
そして私のサスペンダー姿がかなり良かった。サスペンダー似合うね。

ボタンが外された彼のベストの中に私の手を差し入れて、なすがままの彼が流されるように体を任せて、私が「スリルミー」と歌うシーンの官能さよ。
調べるとどうやらスリルミーって性愛のスラングでもあるらしく、ここって明らかにそういう意味で使っているよね。

2人ともサスペンダーを付けているけど、この時代はサスペンダーが主流だったのかな。

裁判のシーンで「彼の、友情が必要でしたから」と言うとき、回想シーンでは明らかに性行為をしている表現があるし、友情で済ませられる関係性じゃないんだけど、時代背景的に友情と言わざるを得なかったんだろうな……

性行為の後、彼に触れられたからルンルンでニコニコしながら服を直す私と、呆然として心ここに在らずといった感じの彼の様子が対照的。
ここのシーンの私、ジャケットを着た後でネクタイを締めていて締めにくくない?と思いながら見ていた。
ここから彼はネクタイを締めない。

それにしても性行為のあと「俺が興奮することを思い付いた、殺人だ」という辺り、さっきまでの行為の中で自分のプライドとか自尊心が踏み躙られるような感覚があったのかな。
この後の死体(弟)を偽装工作としてレイプしようと言うくだりもあるし。

彼が「超人だろ?俺たちには殺人しかない。一生のうちに何かどデカいこと、それをしてみたくないか?」と私に語りかけている間、私は彼のあまりにも突飛な発言についていけなくて、それよりも彼に触れられていることに意識がいっているように見える。
途中彼の顔がかなり近付くシーンではキスしたそうな顔をしているし……
でも気力で何とか振り払う。えらい。

その後「誰を殺すっていうんだ?」という話で彼が「わかるだろ、俺が一番ムカつくやつ」って言った瞬間消え入るように「ぼく……?」と言う私。
彼にイライラされている自覚はある。
たぶん彼にとってこういうところが捨ておけなくて可愛いんだろうな。

彼が天啓を受けたように弟を殺す!と決定事項のように歌っている間、弟を恨んでいる彼が弟を殺せば、彼はほぼ確実に容疑者になることを心配している私。
そんな彼に「弟が死んだら親が悲しむ」「彼も家族だ!」と言う私、家族から愛されて育ったボンボンすぎる!
多分その言葉って彼のコンプレックスが刺激されるし逆効果だよ。

でもこの言葉で冷たい無表情をしているのに弟を殺すのをやめるんだよね。
これって私が殺人にある程度乗り気じゃないと協力が杜撰になると思っているからなのかな。

じゃあ子どもでも殺すか、となって「そりゃいいね!その方がよっぽど素晴らしいよ」とヤケになって言う私もだいぶ感覚が狂って来ている。殺しに素晴らしいも何もあるか。
「誘拐する?」と言った私に、(この作中で)初めて見るクシャッとした笑顔をして彼が「さすがだ……お前はなんて天才なんだ!」と言うのがあまりにもアンバランス。
そして「レイ」と呼ぶ。呼んだら相手が自分に従ってくれるとわかっていて。

ハンマーで頭を割る!のところはがなるように、顔に塩酸すべてを焼いて!のところは今にもひっくり返りそうな声でヒィヒィ笑いながら高らかに歌う。
ここの前田彼、時折すごいチャーミングというか、目が離せないような魅力的な顔をするんだよな。

私は今にも泣き出しそうに眉間に皺を寄せているんだけど、彼に柔らかくハグされた途端に安心、安寧、というような表情をするんだよな。彼さえいればいいと割り切ったかもしれない。

このハグの瞬間に私はどんな罪を犯したとしても彼さえいればいいから、もし彼に裏切られたら彼を出し抜くことを考えたのかもしれないな、とふと思った。

彼が殺しの道具を準備している前で裁判中の私が「戻れない、あまりにも遠くに来てしまった」と歌っているところを見て、まだ!まだ手遅れじゃないでしょう!と思ったけど私にとってはここまで来たらもう戻れないという段階まで来てしまっていたんだな。
ということは道具を1つ用意するたびに今ならまだ戻れるかも……と思っていたのかな。
この歌は曲調もあってイノセントな感じがある。
最後の私の「永遠の時間、」の時は過去を思うように苦しげに、つらそうに眉根を寄せて歌っていたけど、「そう、信じてた」のところでは若干口角があがりギラリと目を見開いている。

彼が子どもを誘拐する時の服装、見るたびに絵本の『すてきな三にんぐみ』を思い出す。
そんなん絶対目立つだろ。

前田彼の誘拐のシーン、ピアノのボーン、ぼーん、という低い音が低く響いているのにニコーッ!とした笑顔でウキウキしたような声音で話しかける。
前田彼って他者から見ても好青年で魅力的だろうと思うので、子どもがついて行きたくなるような気持ちがわかる。
いきなり「僕たち友だち!」と言って相手との距離を詰めるのが上手い。
「いえは、どこなの?」「なまえは?……いいなまえだね」の言い方が痺れるほど優しかったので本当に男の子が見えた。
幼い子と話すときの、こっちまで少し舌ったらずになるような言い方。鍵で相手を釣るような動きもある。
「近くに、おいで〜」のところ、最後がかすれるようになっているのも含めてあまりにも不穏なロングトーン。

「超人であることを〜」と歌うシーン、おそらく木村私が塩酸を見ながら歌わなきゃいけないのにあまりにも前田彼の顔ばかり見て歌っているので、塩酸と私の顔を交互に素早く見て誘導するように2度見している。笑ってしまった。
でも木村私って前田彼にぞっこんだし近付かれたら触ってもらえるかも!とメロメロになってしまうので全然納得できる。
「世の中騒ぎ出す」→彼が縄パン!→私が悲鳴をあげるのシーン、木村私は悲鳴とリアクション控えめで、ひっくり返ったような悲鳴が微かに聞こえる。

「高貴な理想を追い求めるんだ」と2人で歌うところではそれまで不安げで泣き出しそうな顔をしていた私が彼と同じ目をかっぴらいた表情になるのが印象的。どんどん彼に染まっていく。
彼って私を正面からハグすることってものすごく少なくて、後ろから抱えるようにする。それすらも深く抱きしめたりはしない。

この歌が終わった後、行こうとする彼の手を強く握って悲しそうな切なそうな顔をして、2人で幼子のように手を繋ぎながらその場を去って行くのがアンバランスだ。

脅迫状を作る時、彼ってワクワクるんるんした感じで「ここまでは完璧だっ」と言うんだけど、それを受けて「あぁ、完璧だ」としみじみと返す私の目がギラッとしていて怖い。
私も私の計画を独自で進めていて、それがうまく進んでいるぞ……という顔。

“自慢の息子である私”を犯罪に巻き込むという構図で彼は自分の家の自慢の息子である弟を重ね合わせているのかもしれない。
そして彼はその私の人生をめちゃくちゃにすることで、間接的に弟の人生もめちゃくちゃにしたつもりになってフラストレーションを満たしているんじゃないかな。

弟に対して柔らかな声で接する私は弟と自分とで何かシンパシーを感じるものがあるのかもしれないし、弟のことを結構気にいっていて、気にかけているのかもしれない。
弟は金を貰ったら兄のことを喋るってかなりいい性格してると思うんだけど、それでも私にとっては気のおけない友人の一人だったのかも。

うざったいと思いながら私からの電話を律儀にとる彼。
受話器を耳から適宜離したりしているので、私のことを本当に騒がしいしうるせえしやかましいな〜と思ってるんだろうな。でも相手を落ち着かせるように、言い聞かせるようにレイと呼んでやる。
「僕ら取り調べられるだろう」「僕らじゃない。お前だけだ」の後、ポツリと漏れるように出た私の小さな小さな「えっ、」が好きだ。

この後予想外のスピードで遺体が見つかって、遺体の身元が判明して、証拠品らしきものまで出てしまって大慌てしているだろうに、虚勢を張って落ち着いたようなそぶりで足を組みながら新聞を読んでいる彼。
このシーンでそれぞれの考え方がすれ違っているのが同じ曲なのに歌詞が違うという点でわかるので、私は大慌てしているように見えてしめしめ……と思っていたんだろうし、彼の言葉の端々からでる憤りやイライラ、慌てているような声色は聞いていて愉悦を感じていただろうな。

裁判私が「あんなに早くわかるとは、とても驚きました」とうすら笑いで言っているところ、あまりにも嘘すぎてちゃんと見返したら白々しすぎる。
メガネの件が判明して泣きそうな声音で彼に「怖いよ……」というシーンもどの口が……と思ってしまう。
でも手を口元に当てたり、不安そうな仕草をしている私を見ると放って置けないって思わせる何かがある。
彼からしたら自分が疑われないためのコマでしかないんだろうが。

手を繋いで「思い出せない」のくだりでは勝ち誇ったような彼がグイッと手をやったあと、その手を返す私も結構力強い。

「俺との関係は一切話すな」と口酸っぱく言う彼のことを34年経った裁判でも友情と言って守り続けているのって健気なのかな。
それとも同性愛を隠さざるを得ない時代背景ゆえかな。まぁ両方だろうけど……

「どう?褒めてくれる?」「ああ、よくやった」の後、私の肩に手をかけてくれた彼の手を取ろうとしたらスッと引かれてしまって寂しげな顔をするので本当に触れ合いが好きな人だな……
この後「お前はもう超人じゃない」と言われてしまうんだけど、これって彼にとっての縁切り宣言に近いものがあるのかなぁ。

カマをかけるようにして彼の感情を揺さぶる私、実は内心ニコニコだったんだろうな……

前田彼はかなり激怒している時にそれを飲み込むようにヘラヘラと笑いながら、でも怒りの炎が堪えきれずに時折熱い息が漏れたあと、爆発するようにヒートアップして怒鳴って、スンと静かになるよね。

「こんなはずじゃなかった。お前のせいでもう弁護士どころじゃない」「俺を巻き込むな。メガネを落としたのは俺じゃない」「もう2度と会うことはないからな」「お前は、最低だ」の彼の発言、誰が何言ってんだ🎶すぎるし、あまりにもクズすぎてたまらなくなる。あなたが巻き込んだんですよ。
私が自首して全部ゲロったら終わるのに、めちゃくちゃな男だよ。
これも彼がよくやる試し行為の一つだったのかな。

彼の「このっ……裏切り者」のところ、この、のところまでは感情がのりそうだったけど、裏切り者のところでは飲み込んで至極冷酷に言った雰囲気があった。
この辺りから彼の前髪が乱れ出して、目にかかっているのがセクシーで良い。

捨てろや拭き取れと言われていたことを全て残していた私、さすがだよな……彼に裏切られるところまで見越して計算に入れている。
でも「えっ、」のところは虚をつかれたようなリアクションだったので、裏切られる前提で事を進めていたけどまさか本当に裏切られるとは思ってなかったのかもしれない。
それに対して「そうか」とつとめて冷静に言う彼、明らかに虚勢だ。

僕は執行猶予がつくだろうけど、君は違うことになるだろうね。という私に対して「なぁレイ、まだ遅くない。2人とも助かる道があるはずだ」と言う彼、今更どの口が!すぎてびっくりする。自己保身の天才だ。
このシーンの私の表情が秀逸で、この期に及んで都合のいいことを言われて苦虫を噛み潰したような表情にも、相手の滑稽さに笑いを堪えているような表情にも見える。
眉間に皺を寄せて、唇を強く噛んでいるけど見ようによっては端が少しだけ上がっているような。

「まだ間に合うよ。助けてくれ。まだ間に合うよ。俺を信じて。血と血で交わしたあの契約は切れることは無い、レイ。」「俺を捨てる気か?2人でいよう」「わかっているよ、レイ。俺のせいだよ、傷付けたのは。行かないでくれ」という彼の怒涛の説得タイム、見ていた時はレイ!負けないで!言葉に耳を貸しちゃダメ!許すな!と応援していたんだけど、私の大好きなハグをされてしまってからはかなり負けそうだったし、案の定キスまでされちゃって折れていた。
でもこのシーンって私から見たら彼が弱音を吐いてくれるボーナスタイムだったんだな。

キスをされている時にレイの体を這う彼の手が白くて指がすらっとして長くて、爪の形まで整っていて美しい。
その手首を私がグイッと掴んで止めるのが良い。

「わかったよ。何でもしてあげるね」「いいよぉ」の私の言い方がとにかく柔らかい。
ここ、虚勢で生きている彼のことを哀れんでいながらも心底愛おしく思っているんだろうな。

拘置所で不安がっている彼の弱音を聴くシーン大好き。
どんどん彼の髪が乱れていくところは彼の心の乱れを表しているようで良い。
「怖いんだ」のところの彼、今にもその整えられた美しい爪を噛み出しそう。口元を覆って不安を隠そうとしているようにも見える。
手を口元に当てては離しているんだけど、過去それで爪を噛むな!みっともない!って父親に躾けられた記憶でもあるのかな。

そしてこの吐露のシーン、時折見える木村私が目をギラっと見開いて興奮している顔をしていて怖い。
死にたくない!のところは彼の顔アップだったけど、ここがいちばんの興奮どころだろうからすごいを顔していただろうな。
あと前田彼の下の歯の歯並びがかなり好きなので、このアップのシーンでは下の歯を上から見られる形になってとても嬉しかった。この先ずっと矯正しないで欲しい。

次の日の朝「怖くないの?」ときく私、昨日の吐露をきいておいて意地悪だなぁ。
そして「刑務所が?まさか」と半笑いでいう彼よ!

「殺人を死刑という同じ殺人で裁くことが私たちの仕事なのでしょうか」って一言一句覚えている彼は本当に弁護士になりたかったんだろうし、この弁護に感動したんだろうな。
それに対して「ほんとにあの最終弁論すごかったね」って返す私の言い方が音符マークでも付いてそうな感じでニッコニコるんるんだったので笑ってしまった。能天気すぎる。
そしてこの期に及んで自分はこんな弁護士になりたかったんだ!という彼、彼、彼〜!今更何言ってんだ!放火した時点で弁護士人生はもう終わっているのよ!捨てろ!そんな気持ち!
でもそんな愚かな彼が私は好きなんだろうな〜……

「奇妙な鳥が二羽……」のとき、私の顔に白くて眩しい光が当たっているせいで、目の中が瞳も白目も全て真っ黒に見える。
おそらくまつ毛が長いせいで目に光が入らないんだろうな。
「狂ったのか」の時の彼ってかなり淡々とした声音だけど、前田彼って感情的になりそうな時に声のトーンを消す傾向があるのでここの彼って実際よからぬ気配を感じ取っていてかなり怖かったんじゃないかな。

「99年」の時の私の笑顔があまりにも無邪気で、勝ち誇った顔。
木村達成ってクシャッと笑った顔がチャーミングだけど、そのくしゃっとした笑顔が私の狂気を引き立てる。
それに対してずりずりといけるまで後ろに行く彼の表情があからさまに引き攣っているのに、そんな自分に気付いたのか取り繕うように笑うのでこの期に及んで虚勢を張り続けるのか!と惚れ惚れする。

「死刑になってたら?」と訊かれて「一緒に死ねるなら、それも悪くない」の時、私がニコッ!と笑った後に泣きそうに眉をよせるの、若干“今”裁判をしている私の感情がはいっていたように見える。
私にとっては99年を、永遠を、彼と過ごすはずだったのにその計画があっという間に崩れてしまったから……
いっそあの時一緒に死んでしまえたらどんなに良かったか。

彼に対して「怖くなったか」と言う私の声って少しだけ脅すようなトーンで、どうだ?と試すように言うよね。相手を攻撃したいニュアンスはない。
どう?見返しただろ?みたいな。

「だがこれから君は孤独だ、一人」が彼なりの最後の必死の虚勢という感じで痛々しい。
これからずっと、死ぬまで一緒なのにね。
「99ねん……」とその数字の大きさに魂が抜けたように呆然と言う彼、「永遠に、」と恍惚と言った後にうっそりと笑う私。私は本当に嬉しいんだろうな。

私って彼に触れられることを重要視していたように見えるし、刑務所ではそんな触れ合ったりできないよ?いや……まぁショーシャンクの空にみたいな事例はあるが……と思うけど、私にとってはそんなことどうでもよくて、自分の緻密にたてた計画で賢い彼が自分の腕の中に転がり落ちてきてくれたこと自体が嬉しいんだろう。

裁判中の私には彼の影が一切ないとは思っていたものの、「刑務所のシャワー室で他の囚人に刺されて死ぬようなことがなかったら」という話でかなり衝撃を受けた。
私の永遠って本当にあっけなく破綻してしまったんだな。
まぁ言われてみれば彼ってかなりプライドが高いし、人の怒りをかいそうな性格をしているもんな……刺されてもおかしくない。
おそらく刑務所外で暮らしていたとしても人から嫉妬妬み嫉みをかって刺されて死んでいたと思うよ。彼は。

私が持っていた一枚の写真のくだりのあとに出てくる彼はあの私に追い詰められてキリキリした表情をした髪の乱れた彼じゃなくて、ネクタイまで完璧に締めて髪型もきっちりと整えた理想の彼なんだよね。
そんな“完璧な”彼が私の方を見て「レイ」と優しく語りかけてくれるの、私が過去に縋って生きていくしかないという証明でつらい。
人殺しの前科もある、青春と呼ばれる若い時間は刑務所内で過ごした、この人のために生涯をかけてもいいと思った愛する人はもうとっくに死んだ、34年の年月だけがいたずらに過ぎていった。
この後私は何を糧に、どうやって生きていくんだろう。

私にとってはその犯罪じたいのスリルよりも、彼と私が二人っきりの共犯者であることが「スリル・ミー」だった。
過去を想ってにっこりと満足げに笑った後に今を向くように表情がスッと抜け落ちる最後が痛々しい。


いや〜すごい舞台だった。これはずっしりと心にのしかかってくる。
そしてこの舞台2011年とかからやってるんだね。もう10年以上上演しているのか。すごいな。
地方を含めて全国あちこちで上演しているので、次は見に行くチャンスがあるかもしれない。
スリルミーはぜひ生で見てみたいな〜!
次の公演ではキャストが変わるだろうけど、今からどんな舞台になるのか楽しみ。
そして初めてのスリルミーのペアが木村前田ペアでよかったなと思った。
(どのペアを見ていたとしても、初めて見たペアが特別になっていただろうけど)
松岡山崎ペア、尾上廣瀬ペアも見たかったな……今年は金銭的に流すしかなかったけど、未来の自分には金銭的に余裕があることを信じている。
とっても面白かった!当分は人の感想を読みまくろうと思う。

追記
配信が終わってからも心にポッカリと穴が空いたようにスリルミーのことばかり考えている。
もうこの二人のスリルミーが見られないのかと思うと寂しくて仕方がなく、普段全然絵を描かない人間なのにファンアートを描いてTwitterに載せたりして心の穴を埋めようとしていた。
どうかDVDやBlu-ray、それが難しければCDが発売されてくれないかな〜と思うけど、このペアの良さは繊細な表情にあるので、やっぱりDVDかBlu-rayが欲しいです。

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