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液体燃料炉が不採用になった背景を踏まえた次世代への流れ

 1950年代から1960年代にかけて、軽水炉と並び、原子力推進の分野で最も有力視されていたのは、液体燃料を使用する原子炉、特に溶融塩炉でした。 溶融塩炉は、液体燃料を使用することにより、過熱や圧力の急激な上昇を抑制しやすく、核燃料の漏洩や過剰な反応を防ぐことが可能であり、 そのため理論上の安全性が高いとされているようです。

 溶融塩炉の開発は、アルヴィン・マーティン・ワインバーグ(Alvin Martin Weinberg)が所長を務めるオークリッジ国立研究所で、実験用原子炉「溶融塩炉実験炉(Molten-Salt Reactor Experiment; MSR)」 として1960年代に推進されました。MSRは1965年に臨界に達し、以降4年間、26,000時間にわたって稼働し、その間、重大な問題は発生しませんでした。ワインバーグは、軽水炉の安全性に疑問を持ち、原子炉は 安全でなければならないと主張し続けました。
 この優れた原子炉の開発が中止された理由は、1970年代のアメリカ大統領ジミー・カーターの政策に関連があります。この時期、核拡散の懸念が高まり、プルトニウムを生産し、核兵器に転用可能な技術の開発に対する警戒 が高まっていました。溶融塩炉は、プルトニウムを生産せず、より拡散を止めるものとされていましたが、軽水炉に比べて技術的な成熟度が低かったため、政策的に優先度が下がったと考えられます。

 日本は核燃料サイクルを基本としていますが、方針に反してプルトニウムはたまり続け、その保有量は高止まりの状態です。プルトニウムを計画的に消費できる手段が未だ確立できておりません。 また、経済的に見ても核燃料サイクルのメリットは薄く、再処理工場の建設費用が膨れ上がり、電気料金に上乗せされることが懸念されています。

 このような背景もあり、安全性と効率性を備え、、純粋なエネルギー供給源としての役割を持つ次世代原子力発電に興味を持っています。

https://note.com/jissenkeiei2023/n/n49a119ca3d52

 以前も触れた、中国の事例です。上海応用物理研究所(SINAP)は、中国科学院の一部門であり、実験用のトリウム駆動型溶融塩炉、TMSR-LF1の運用許可を取得しています。

 この炉の建設は、2021年8月に完了しました。TMSR-LF1が成功すれば、中国は2030年までに373 MWtの容量を持つ炉を建設する計画です​​。 溶融塩炉は、より「安全で」「環境に優しい」という理論に基づいて、この実験炉でトリウム燃料を使用することについては、以下も参考になります。

https://gigazine.net/news/20210720-china-molten-salt-nuclear-reactor/

 12月27日に、原子力規制委員会が、テロ対策上の問題が発生していた新潟県の東京電力柏崎刈羽原発に対する運転禁止命令を解除したというNHKの報道がありました。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231227/k10014300631000.html

 様々な立場の理解に努めながら、一層、エネルギー問題への理解を深めていきたいと思っています。


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