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テレマーケティングで使うトークスクリプトの作成方法

令和4年のこの時代に、テレマーケティングのトークスクリプトの作り方を知りたい方が果たして何人いらっしゃるのでしょうか(笑)

実際、私も新卒の頃に身につけた知識ですし、その会社は今はテレマーケティング事業をほとんどやっていなかったりするので、時代はだいぶ変わりました。今回は、どちらかというと、昔を懐かしむつもりで、記載したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【1】テレマーケティングからインサイドセールスへの進化の経緯

言葉の使い方は時代によって変わっています。テレマーケティングは少し昔の言い方かと思います。現在では「インサイドセールス」と言うことが圧倒的に多いです。

そもそも、テレマーケティングよりさらに前は「テレアポ」「テレアポ代行」という表現だったのですが、かなり泥臭さかったり、新人がやるみたいなイメージが強かったため、「テレマーケティング」という言葉にだんだんと移り変わっていきました。テレマーケティングというコンセプト自体は悪くはなく、PCメーカーDELL社のダイレクトモデルや通販業界の隆盛に合わせて、認知度も提要している内容も発展してきたのですが、その一方で、大量の電話営業スタイルであったり、一方的な電話営業を仕掛ける会社が少なからず存在し、テレマーケティングという言葉自体は一定の認知度を得たものの、業界を超えた潮流とはなりませんでした。

そして2010年代後半ついにテレマーケティングがインサイドセールスという言葉になって、ようやく花開きます。おそらくこれにはセールスフォース社がこの言葉の定着に一躍買っていると思うのですが、電話、メール、チャット、WEB、訪問・・・お客様とのあらゆる接点活動が、テレマーケティングを超えたインサイドセールスとして企業の営利活動の中で、非常に重要な立ち位置を獲得したのです。

【2】テレマーケティングの目的をおさらい

「アポ取れ」「新規取引先アポ取れ」「とにかくアポ取れ」・・・と昔は1日何回も言われましたが、現代ではもうそんなことを言う企業も上司もかなり少なくなったのではないでしょうか。もちろん、当時からアポ取ること自体は目的ではなく、大切なことは「会社の利益を最大化する」ことです。アポイントも「お客様がネット検索では出会えない貴重な情報を届ける」という意識でやっていました。

いずれにせよアポが目の前の目標になっていると、手段と目的が変わってきます。電話すること自体は、あくまで連絡手段の一つですし、Web、イベント展示会、飛込、DM、動画、SNSマーケティング・・・無数にあるお客様とつながるためのマーケティングチャネルの一つの手段でしかないです。これは必ず注意しましょう。

【3】ワードかパワポかExcelか?

かなり悩むところですが、ここはWordを推奨しましょう。理由ですが、パワーポイントは、スライドの2枚目以降に行くときの切り替わりの際に、視点がズレます。これは電話している時には非常に煩わしいです。Excelはスクロールバーを使うことで滑らかに切り替わりますが、セルに限りがないので、いたずらに会話のトピックや条件分岐を増やしてしまいがちです。また、テレアポは最初の挨拶等がほぼ決まっており短い一方で、話が進んだ後のメリットやアポイントオファーのトークは分量も話すタイミングもかなり多様性に富んでいます。そのため縦横テーブル形式が得意なExcelではつらいです。したがって必然的に残った選択肢のWordになるのですが、こんな感じでしょうか。

※細かなトーク内容はテキトーです。あくまで、全体デザインと流れのご参考に

テキストボックスを使い、次へのトークを明確にしていきます。Excelだと再現なくトークを記載できてしまいますが、ワードは紙のサイズの制限があるのが逆によいです。無駄なトークやトピックを無駄に増やすこともないので。また、縦型か横型どちらのフォーマットにするかということですが、コールセンターシステムやSFAといったちゃんとしたシステムがある会社の場合は、縦型というのも一理あります。システム入力のための画面スペースが確保ができますし、話してみるとわかりますが、縦の方が話が途切れにくく、流れるようなトークがしやすいです。

※ちなみに、自分が話やすいようにアレンジするといってトークスクリプトもアポ条件もまったく無視して、相手と仲良く話すことでアポを取ってくる方がいらっしゃいますが、正直あまり意味がないです。新人ならまだしも、ビジネスには効果測定、再現性、行動理由が必要です。根拠なくやっている電話営業は、まさにただの迷惑電話であり、"セールス"とも"マーケティング"とも言えません。

【4】トークスクリプトを用意すべき人とは

ここまでのトークスクリプトを見たとき大体の方は「こんな小難しい資料作ってられない、自分には無理」だと思います。正解です。私も普段の営業活動でこんな資料を用意するわけがありません(笑)ではどういう方がトークスクリプトを作るべきなのでしょうか?

《トークスクリプトを作るべき人・企業》                     単一事業、単一製品/サービスの企業、営業標準マニュアルを作るとき、営業管理職、インサイドセールスマネージャー、新人、あるいはコールセンターなどの特定の事業者・・・

結論、これらに該当する方はトークスクリプトを作った方がいい場合があります。例えば、私が、自分の作ったWebサービス「ポケプレ|Pokepre」を電話営業するとしましょう。売れるものはこれしかなく、長い目で見てもほかの事業に手を出さない・・・そのような場合は、私ならきちんとトークスクリプトを作ります。営業標準マニュアルを作る時も、作成していた方がよいでしょう。たった一つでも自社の最高のトークを作りあげることができれば、その後、入社する新人を含めて何十人もが、トップ営業のノウハウをすぐに学ぶことができます。

逆にこれらに該当しない人はメモ帳レベルで十分です。また、何千、何百という製品/サービスを取り扱う商社卸的な企業の場合も、いちいち作成していたらキリがありません、時間のムダです。キャンペーンや営業施策など、作成をするのは、本当に注力したい場面だけにし、作成はもちろん管理者や施策リーダーが一挙に行い、現場営業には展開するだけにします。

【5】KPI設定の作り方

インサイドセールスではただアポイントが取れればよいというものでもちろんはありません。狙ったターゲットに狙った想定通りにアポを取ることはもちろんですし、アポイントだけが目的ではなく、お客様との関係性をつないだり、情報収集したり、見込みがなければ優先順位を下げたり、あげたり(リードナーチャリングやジェネレーションと言われる)・・・色々なことが行われます。

むしろ、現代ではアポイント取得よりもこちらの方が重要と思いますし、電話~Web商談~そのまま受注というような営業プロセスもコロナ以降は普通にありえると思います。

そのため、KPIには、アポイント以外に以下のような項目を設定します。

①訪問許諾件数                                                       ②担当対話件数                                                                    ③コール数
④興味歓喜件数                                     ⑤BANT確認数                             ⑥その他の情報確認数

もちろん、すべて設定しなくてもかまいません。とくに重要な部分を解説すると・・・

まず②担当者対話数「受付や非決裁者ではなく、ちゃんと会話すべきキーマンと会話ができているか」です。このKPIを設定していないと「電話は何件もかけて頑張ってるのに」「とにかく電話さえかければいい」という思考に陥りやすくなります。受付の方は、検討も決裁もされない方になりますので、いくら電話しても本当にただの迷惑な電話になってしまいます。それはインサイドセールスでも何でもありません。大体は役職で定義することが多いでしょう。

⑤BANT確認数は基本ですが、担当対話を役職等で判断することが多いので、会話時に確認するべきは、大体スケジュール把握になります。「購入検討中」「購入3か月以内」「購入半年以内」「それ以降」業界やサービスによって異なりますが、こういったものを決めていきます。                         

⑥その他の情報確認数ですが、既存のお客様で関係性ができていればいるほど、⑥、⑦あたりの情報の比重がかなり大きくなってきます。例えば、販売管理システムのパッケージ営業でしたら、現状のシステム、メーカー名等も聞きますし、課題もヒアリングしていきます。

これらの指標を組み合わせて、「リード定義」として大体A~Cくらいに分類していきます。

〈リード定義の例〉                                         Aリード:部長職以上と対話×1か月以内購入意思あり×競合不満あり              Bリード:部長職以上対話×競合不満あり                         Cリード:係長・課長職以上対話×競合不満かスケジュール確認のいずれか               

そうして、①~⑥のこまかなKPI項目を追うのは担当営業に、マネージャーは、最終的にこのリード定義の方をKPIにしてプロジェクト全体をマネジメントしていきます。

慣れていない会社や現場の担当は、リードより①~⑥の項目の数字を追った方が具体的でイメージがわきやすいかもしれません。また、リード定義は日々変えたり、製品やサービスによっても変えるので、長期で追うのは中々大変だったりもします。自社の会社に合うKPIを設定しましょう。

【6】トーク・スクリプト品質管理の方法

さて、これらのKPIをトークに落とし込んでいきます。具体的には各テキストボックスにチェックポイントを設けておき、そのポイントまで話しが進んだら、チェックポイントクリアとなります。チェックポイントはトークしている担当者個人の目標にもなり、中々クリアできないチェックポイントがあった場合は、そのテキストボックスのトーク内容を見直していくことになります。システムを使えば、チェックポイントごとに何%次のトークポイントに入れたか測定できます。

こうすることで、スクリプトの全体の中で、どこのトークで会話が滞留しているのかボトルネック、改善点を数値としてみることができます。ただし、このレベルの測定は、コールセンターレベルの手法で、人力ではなくどうしてもITシステムを使わないと難しいので、現場の営業の方は「なんとなくトークするのではなく、流れを作ろう」「詰まってしまうポイントはどこだろう」くらいに意識ができれば十分だと思います。

また、Web業界ではA/Bテストという手法を使い、効果が高い方の広告デザインメッセージを採用するということができますが、テレマーケティング業界ではA/Bテストはあまり(ほとんど)行われないでしょう。電話である以上、Web広告より圧倒的にコストがかかる点、A/Bテストができるだけのコール件数が確保しにくい点、スクリプト以外の電話する時間帯、声のトーン、話すスピードなども関係してくる点などが理由です。
だからこそコールセンターのマネージャー、スーパーバイザーは大変なのです(数字管理はもちろんですが、録音を聞き、その人の話でどこかよかったのか悪かったのか、なにかふと雰囲気が変わるきっかけの言葉があったのか、本当に丁寧に教育とマネジメントをする必要があります

【7】トークのコツ

さて、ここまで5000文字近く書いて、ようやく"トークスクリプトの中身の話"です(笑)ただし、これまでのことができていれば、トークの中身は日々細かな点を改善するようなことなので、もうゴールは目の前です。

コツ①自分のことはちゃんと名乗る

中小企業の方で、時々、自分の会社名を名乗らない方がいらっしいますが、ビジネスマナーとしても、アポ率の数値としても、会社名を名乗る方が明確にアポ率がアップします

お世話になります。私し○○株式会社の△△と申します。

電話は20,30秒であっても、相手の時間を頂くことになります。このレベルでよいので、はっきり伝えましょう。内容は端的に最小限で大丈夫です。大企業ほど、自分のことを説明をしたがる傾向があり「弊社は東証一部に上場しており、セキュリティは安心でして、最新のDXソリューションを提供しておりますので・・・」うんちゃらかんちゃらですが、誰も聞いていませんので、スクリプトに入れる必要はないです。

ちなみに、そうはいっても人間"看板"には弱く、大手企業の社名を出すと、アポ率が明確に上がる(場合によっては10%以上も)のが面白いです。もちろん、知名度のない中小企業やベンチャーであっても、会社名を名乗らないより、やはり名乗った方がアポ率はあがります

次に、部署や担当者への取次をお願いするのですが、この時も、端的に「お恐れ入りますが、人事採用の責任者様にお取次ぎいただけますでしょうか」と素直に言った方が無難です。

お恐れ入りますが、人事採用の責任者様にお取次ぎいただけますでしょうか

受付の方にいきなり「弊社は、新卒採用に特化したメディアを運営しておりまして、現在、掲載キャンペーンが・・・」と製品/サービスの話をしてしまう方がいますが、受付の方は、適切に電話をしかるべき人に取り次ぐことが仕事であり、あなたの会社の製品/サービスを理解し、検討することは仕事ではありません。受付の方に、取り次ぐだけの最低限かつ必要十分な内容をお伝えするのがビジネスマナーであり、結果的に、アポ率も向上します。

コツ②製品/サービスに合わせたトーク

ここが一番難しいです。以下のマトリックスにしたがって、自身の製品/サービスがどれにあてはまるかよく検討し、伝える情報やトークを決めてください。

右上にいければ行く程、インサイドセールスというよりは、電話の行動量という様相になってきます。全員が購入してもらえて、無料なら、取りあえずばら撒くという結論になるので・・・一昔前のぐる〇び、〇Rの決済端末、ネット回線などです。                        左下は、その反対にどんどんと大型商談スキル、個別のアカウントプランの方が重要になって来ます。例えば、飛行機の営業の場合、テレマーケティングをしようにも、日本で購入候補となる企業は100社以下程度しかないと思います。                                            したがって、真ん中に位置するあたりの製品/サービスを取り扱う業界で、テレマーケティング・インサイドセールスという考えが最も発展していくことになります。前述のPCメーカーしかり、最近のSaas系のベンチャー、スタートアップのWebとインサイドセールスの組み合わせには目を見張るものがあります。

このマトリックスを使い、例えば、あなたが人材紹介業*に従事している場合は、比較的アポに比重をおいたスクリプトを考えることになります。いわゆるご挨拶アポもありながら、付加的に聞くとすれば例年の採用計画などです。一方、例えば"従業員エンゲージメント管理システム"を扱っているIT営業としましょう。まずはどのようなサービスかわからないと次のお話にいけないと思います。その上で、どんなメリットが合うのか、なぜその企業に合うのか、さらに、ニーズ確認、導入時期、ご予算に合うかどうか等ヒアリングすべき項目、リード定義も必要になります。まさにインサイドセールスです。

*人材紹介のビジネスモデルは、ほとんどが成果報酬(紹介はいくらでも無料)なので、取りあえず会ってもらいやすい。

*左上の安いのに難しい製品/サービスって何でしょうか?極端なこといえばpython(プログラミング言語)等のライブラリーを有償で外販したいとかですかね…右下の高額でわかりやすい製品/サービスなのは、ダイヤモンドやBMWを社長に買ってもらうとかでしょうか。いずれもインサイドセールスには向きません。

コツ③情報交換・情報提供のつもりで

情報交換や業界の事例をお伝えしたく・・・

「アポが取れない→売れない→無理のあるトークをする→余計にアポが取れなくなる」という負のループに入ってしまう方が、特に新人や新規営業の方には多いです。インサイドセールスが当たり前となり、オンライン商談も普通に行われる現在でも、電話のみで契約となることは基本的には少ないのですから、TELアポは情報提供や情報交換を主目的にすべきです。

特に、情報交換の事態の価値は、以前よりもどんどん高まっていると思います。爆発的ないきおいで手法が生まれ続けるWebマーケティング、本当に一部の先端企業が開発を行っているAI、ITテクノロジーはもちろん、大手からフリーランスまで細分化するビジネスモデル・・・確かにがんばってGoogleで調べようと思えば、調べられますが、本質的なところは、やはり直接人と会って知ることが多いですし、なにより経営者ほど調査や下調べにかける時間はありませんし、タイムイズマネーです。そんな相手にとって、情報交換とは、最速で、最新の生きた情報を、無料で知れる3拍子揃った貴重な機会なのです

コツ④オファリング

来週あたりに、3,40分ほどお時間いただけませんでしょうか。

電話の際、相手がどんなに優しい方であっても、自社がどんなにメリットのある製品しか売っていなくても、向こうから「是非御社の話聞きたいので、何日何時に来てくれませんか?買いたいので」と言ってもらえることはほとんどないでしょう。なので、やっぱりどこかのタイミングで自分から「お願い」を言うことが必要です。断られるのが怖くて、いつまでもこれを言わない方がいますが、自分から言い出しましょう。

この時「今週にするか来週にするか」「30分にするか1時間にするか」ですが、来週かつ1時間が一般的には答えです。
今日や今週だと、すでに予定が入っている方がほとんどですし、逆に暇なのかと思われてしまいます。時間は「3,40分」とオファーすると何故かみんな1時間とスケジュール帳に書き込んでもらえます。始まる時間はきっちりですが、終わる時間が予定より延びるのは、問題ないことが多いのは、日本の面白い文化です(笑)もちろん、本当に1時間じゃないといけない場合は「1時間ほどお時間ください」と言ってくださいね。3,40分とオファーするのは「30分でこちらの伝えたいことをすべて伝えられるが、時間をさらにもらえた場合には、より提供できる情報やメリットがある」場合のみです。

【8】まとめ

いかがでしたでしょうか?

一部古い情報もありますが、現代のインサイドセールスにも十分使える考え方と思います。また、意外と地味で、きめ細かな手法やテクニックの積み重ねとも思われたのではないでしょうか。

ですが、営業やマーケティングって結局そういうものだと思います。かっこいいスーツを着て、わざわざ高いポインター使ってプレゼンして、それはお客様に何のメリットがあるでしょうか。どの企業もどんな営業マンも小さな小さな工夫とお客様からの信頼を地道に積み上げて、アポ率のコンマ何%を上げているのです。

魔法のようなテクニックはありませんが、間違いなく、役に立つ内容かと思いますので、皆様の営業活動や営業資料作成のご参考に少しでもなれば幸いです。

以上です。

<本日の内容>星4つ★★★★☆
インサイドセールス業界に従事する方には星4くらい。
「資料作成を得意スキルに、職場で一目置かれる」                  それ以外の方は少し難しいめかも。星5つ★★★★★
「資料作成のプロフェッショナル!デザイナーや専門職を目指す」


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