詩『帰路』
例えば夕焼けの中
金木犀を揺らす風に耳を澄ませて
十代が終わったことを知る
例えば暗がりの帰り道
河川敷のススキを指でなぞって
今はもういない人を想う
思い出はセピア色なんかじゃなくて
何色もの絵の具をバケツに流して
何度も何度も攪拌して
輪郭がぼやけた記憶は
ただどこかで聞いた誰かの物語と
あったかもしれないぼくの物語とが綯い交ぜになってできている
自傷行為としての自嘲を重ねて
どこにも行けやしない夜でも
擦り切れた皮膚を冷やしてくれる月明かりがあるから
長い坂を登って
葡萄畑のそばを抜けて
少し遠回りしてから家に帰る
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