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蝉時雨鎮まりし夜の残耳(ざんじ)かな
朗読は拙さのまま合歓の花
春の夢ありしあやめし虫の声
さみしさに菓子買うてあり神無月
柑橘の肌や渦埋(うづも)る黒腋臭
濃い幹に羽ひたしつつ法師蝉
柿のなるあーあと聞こゆ隣家(となりや)に
水無月や静かに熟れてゆく果実
蟬時雨われ先をゆく背の汗に
バス停の錆びて半夏の思いかな
落蝉や落蝉の死をたたみゆく
山谷に触れたき指や色蓬
とろろ汁啜らふ老ひや暮れ残る
カヌーより触れる花面や朝寝髪