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退く夏の汗頬骨のつくる影
八重歯剥き蝉(あぶら)声乗す熱波かな
レースに白い夏風 さめた鍵盤を弾ませて
遠花火啜り泣き止む奥座敷
入道もきのこの笠下(さんか)砂の膝
明鴉夏至のゾンビを啄んで あけがらすげしのぞんびをついばんで
老犬の舌縋りおる逃げ水や
柱傷春のかの夜のとまりかな
鳥発てば蛾は水面(みなのも)に呑まれけり
女郎蜘蛛衣摺れに巣の残したる
炎天の瞑目はてて赤薄らひ
空蝉やないといけないものなどは
ひまわりに貌描きつづけ十五の死
背に掌(ひら)を目にて別れの雛納