全能感をコントロールする世界王者ジョコビッチ

政治資金の私的流用が発覚した舛添都知事や、覚せい剤で逮捕された清原の裁判のニュースで持ちきりですが、先日、ローマで行われたテニス男子シングルス準決勝の世界王者のジョコビッチがすごかった。
開始早々、ジョコビッチは左足の怪我のため、メディカルタイムアウトを取りますが、その怪我のせいなのか、第1セットはジョコビッチは破れてしまいました。
第2セットに入っても、ペースの掴めないジョコビッチは、第6ゲームで、ついつい(だと思うのですが)、錦織のフォルトのサーブを強くラケットで払ってしまいます。
それがまた、運の悪いことに、そのボールがボールボーイに当たり、審判から警告を取られてしまいました。
ジョコビッチは、そんな警告などあり得ないと、いかにも不服そうな表情を浮かべ、今にも主審に噛みつこうかという態度を見せましたが、観客はそんな態度をする世界王者に対してブーイングの嵐を浴びせます。
試合にも負けている上に、さらに高まるアウェイ感。
自分がこんな立場に置かれたら、どうするかな、と手に汗を握りましたが、さすがは世界王者のジョコビッチ。
ジョコビッチはそのボールボーイの元に歩み寄り、すまなかったと謝罪した上で、その彼の頭をクシャクシャと撫でました。
その神対応に、あれだけの観客のブーイングは一瞬にしてジョコビッチへの賞賛の拍手へと変わりました。
当然、会場の空気は一挙にジョコビッチの方に流れ、すこぶる調子の良かった錦織は残念なことにジョコビッチに惜敗してしまいました。
こういうことが流れを引き寄せるということなのでしょう。
世界王者という立場であるなら、全能感に支配されているはずです。しかし、その全能感をコントロールをできているから、あの場面で、ボールボーイに頭を下げることができたのでしょう。
聞けば、セルビア人であるジョコビッチですが、ヨガやレイキをトレーニングに取り入れて精神性を高めているといいます。
素直で謙虚であることが成長の絶対条件です。世界王者のジョコビッチですら、ボールボーイに頭を下げるのです。全能感や万能感を支配するために金や権力や覚せい剤を使うのではなく、ヨガやレイキで精神性を高め、それをコントロールするほうを選択する人間でありたいと、この試合を見て思いました。
(2016年5月18日)

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