ぶん回せ!
人間生きていれば誰しも全力で誰かにラリアットしたい時ってあるよな。間違いなく今がそうだ。
ここは廃ビルの屋上。何ならフェンスの外に立たされており、もうすぐ落下コース間違いなしだ。しかしその前に、俺の背後にいる半グレだか全グレだかを片っ端からラリアットして一足先にビル下のアスファルトに叩き込みたい。その上で俺の自由意思で自由落下し、先に落下したグレグレ達を緩衝材にして無傷生還を決めたい。決めたいのだ。
そう思ったら頭より体が動き出してしまう。俺の両手は腰の後ろでがっつり縄で括られており、実際どうにも動かしようがないのだが、ゴリラよろしく腕力の先祖返りを起こして縄を引きちぎり、三倍くらいに膨れ上がった上腕二頭筋でラリアット祭りを決めたくて仕方がない。
「言い残すことはあるか。」
どチンピラのカス野郎が何か言っているが、ファックの一言に尽きる。25年も生きて何ら成果を挙げない俺の腐れボディに鞭を打てそうになっているのに水を差すな。もう少しだけ妄想に浸らせてくれ。ラリアットを繰り返せば空を飛べるのでは。名付けてラリコプター。この期に及んでも俺は真面目になれない。どうして俺はこうなった。救いようのない闇バイター。
「何もないのか。最後までクズだな。」
うるせえよ。決めた決めた。突き落とされる瞬間に俺は足でラリアットを決める。腕だけがラリアットではない。お前がゴミセンスで身に着けたドルガバだか何だかのガバガバベルト目掛けて全力で足を回す。
そうと決めたら善は急げ。足を回せ。回せ。
ぶん回せ!!
「ッしてんだコラッ!!!」
俺は瞬発力の全てを込めて時計回りにしゃがみ、カス野郎の腕ラリアットを華麗に躱すとともに、その勢いのまま反転して汚ねえケツ目掛けて足をぶん回す。
絶叫花火。
からのアスファルトのシミ第1号爆誕。ナム。
俺はクソみたいな肉体を制御できた喜びに震えながら、フェンスに足を掛けたカス2号の処理を考える。
≪続く≫
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