見え隠れ

捨てたはず 執着未だ 見え隠れ

執着は 捨てたはずだが 見え隠れ

覚悟決め 捨てたはずだが 振り返り
未練がましくないか
山頭火の
捨てきれぬ荷物 前後ろ

西行はこだわりを捨てきれず、
死ぬ日まで 桜の花と 辞世詠み

「願わくは花の下にて春死なむその如月の望月のころ」
満月までも望むとは、
捨てきれないんでしょう。

落語の西行のお話

佐藤兵衛尉義清が呼ばれて、飲みかけの杯を直にもらった。美女だと聞いていたので、見上げてみたら震えが止まらないくらい美しかった。その日から恋煩いになって、寝込んでしまった。思っていても帝の御内侍、身分が違いすぎる。しかし、この話が都中に広がり、何時しか染殿の耳にも入った。染殿は言い寄られる事はあったが、こんなナイーブな男は見た事が無いと手紙を書いた。

 義清が見ると、夢にまで見た内侍の御文。 喜んで開けてみると、
 「ひとつこの世にては逢はず、あの世にても逢はず、三世(みよ)過ぎて後、天に花咲き地に実り、人間絶えし後、西方弥陀の浄土で我を待つべし、あなかしこ」 とあった。 万が一落としたりして他人に見られたら困るので、隠し文になっていた。将来西行となる人ですから、この謎が分かった。『この世にては逢わずというから、今夜は逢わないということ、あの世は明の夜だから明日の晩もダメ。三世過ぎて後だから四日目の晩、天に花咲きだから、星の出る項。地に実は、草木も露を含んだ深夜。人間絶えし後は丑三ツ時。西方浄土は、西の方角にある阿弥陀堂で待っていろということだろう』、と気がついた。

 待ちわびていたので早くに行きすぎ、来か疲れ(こずかづかれ)でうたた寝をしてしまった。そこへ内侍が現れ、
 「実あらばいかでまどろまん誠無ければうたた寝をする」。
私の事なんかスキでも無いから寝ちゃったんでしょ。と言われ帰ろうとした内侍に、十二単の裾を掴んで義清が返歌をした。
 「宵は待ち夜中に恨み暁は夢にや見んとしばしまどろむ」と返した。
宵のうちはあなたが来るかと待ちました。夜中になったら貴方は来ないと恨みました。明け方になったら、夢の中だけでも貴方に会いたいと思って、まどろんでいました。と答えた。染殿の怒りも消えて、

 二人の影がひとつになった。

 鶏鳴暁を告げる頃、袖にすがって「染殿またの逢瀬は・・・」、「義清様、阿漕であろう」と、言葉を残して立ち去った。義清どう考えてもこの”あこぎ”が分からなかった。義太夫の素養があれば、
「伊勢の海阿漕(あこぎ)が浦にひく網も度重なれば人もこそ知れ」、と有るのが分かったのですが、それが分からないため髪を下ろして、僧侶から歌の道に入ってしまった。

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