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本番を想定した練習

 講演でよく細川の話をしていた。細川は平尾の3つ下母親同士が姉妹で従兄弟になり、伏見工業~同志社~神戸製鋼と同じ道を歩んだできた。平尾と同時期に日本代表のフルバックとしても活躍、大半の試合でプレースキッカーの重責も担っていた。

 神戸製鋼時代 全体練習が終わってから、個人練習が始まる。 他のプレースキッカーを目指す選手は、多くのボールを抱えて、何本も蹴っていた。 対する細川のキックの練習で持つのはボール一つ、場所を決めて一人でぶつぶつ(この時に、時間や点差を自分で決めてその状況をイメージしてつぶやいてたそうだ)、試合と全く同じ動作で、ボールを置いて 距離を置き、助走してキックをける。「すごい集中力で取組んでいた」と教えてもらった。 そんな細川が日本代表のテストマッチで大切なプレースキックの場面が来た。 相手がオフサイドで日本のペナルティ、ゴールまでの距離は40M強。その時ケガをして倒れてた選手がいたためレフリーがボールの地点から離れる。 偶然でできた時間にキャプテンの平尾は細川に「入るか?」と聞いたら、細川は「無理、1メートル遠い」と答える、レフリーがまだ離れているので、平尾はボールの地点にいたスクラムハーフ堀越に「(ボールを)1メートル前に出せ」と伝える。 堀越はレフリーの目を盗み、足でボール軽くける、少しだけ動いた。。平尾は細川に「これで行けるか?」と聞いたら「あと50センチ」と答えた。 レフリーが怪我人の対応を終えた。 平尾はプレースキックを選択、細川に『何とか入れろ』と伝え、細川がプレースキックを狙う。 いつも通りのルーチンで キックをけると、ゴールポストの横のバーに当たってギリギリ入った。緊張もする日本代表の試合で完全に細川の予測通り。「細川はたいしたもんや」と一流のプレーヤーでキッカーだったと聞かせてくれた。

 近年ラグビーでは五郎丸選手のお陰でキックの時のルーティーンは、真似をする子供も出るほど多くの方にも知られはじめた。ルーティーンを守る事で、緊張するような場面でもいつも通りの力を発揮できる。 ただ、細川の場合は少し違うかもしれない。動作はそれほど精密ではなく、精神状態を本番さながらで練習する事でいつでも「本番」と一緒。 練習のためのキックではなく、本番を想定したキック。 本番をイメージしマネージする力。 私にはよくわからないけど、、、すごい選手なのは間違いない。



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