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ブランクエンドの効果について

カーリングでは、双方のチームに点が入らないで0点となるエンドのことをブランクエンドと呼びます。後攻チームが2点以上の複数点を取れないと判断したときや、偶数エンドで後攻を取りたいというときに、戦略上、敢えてブランクエンドを狙うことがあります。

この記事では、ブランクエンドを狙うことの効果について、女子の勝率テーブルの値を使って考えてみます。

まず、同点の状況で、後攻側がブランクを狙うべきかどうかを見てみます。以下の図は、同点のときの残りエンド数に対する期待勝率の遷移を表しています。

同点時にブランクエンドを続けたときの勝率遷移

つまり、青い点線は、試合開始時からずっとブランクエンドを続けたときの勝率変化を示しています。残り5エンドくらいの後半から徐々にブランクエンドを続ける効果があることが分かります。後攻を維持していくことで残りエンド数が少なくなるとより有利になるということです。特に、最終エンドを後攻で迎えるためのブランクエンドは、勝率が66.0%から74.9%に跳ね上がり、ブランクエンドの効果が高いことを意味します。

次に、ブランクエンドを、点数が動く状況と比較してみましょう。次の図は先ほどの図に点数を取った/取られたときの勝率変化もグラフにしています。

同点時からの期待勝率遷移

例えば、図の中の赤い○が残り4エンド(10エンドゲームなら6エンド終了時)の期待勝率が64.5%であることを意味しています。そして、次の7エンド目に、2点を取る、ブランクエンドにする、1点を取る、1点スチールされる、の4通りとなったときの勝率変化を矢印で示しています。

これを見ると次をブランクエンドとしたときは、わずかに勝率が上がり(64.5%から65.9%)、2点を取ると勝率は75.2%とぐんと跳ね上がります。また、1点だけ取ると勝率は、64.5%から59.0%へと下がります。もちろん、1点スチールされると、勝率は64.5%から41.0%とさらに下がってしまいます。

他のエンドのときも、ブランクの青い点線のBというところを基点にして、次のエンドの勝率変化を見て下さい。そうすると、どのエンドでも、ブランクが常に1点を取るよりも上回ることが分かります。

1点リードしている状況でも同じような傾向が見られます。次の図は、1点リード時の先ほどと同じ図です。

1点リード時からの期待勝率遷移

残り3エンド以降の後半では、1点取るのに比べてブランクの効果が絶大になっていきます。1点負けているときはどうでしょうか。次の図は1点リードされている状況の図です。

1点負けの状況からの期待勝率遷移

やはり、後半に向けて1点取るよりブランクの方が勝っていきます。特に残り2エンドの状況を見てみます。35.3%の状況から、次のエンドをブランクエンドとすることで期待勝率は42.3%まで上がるのに対して、1点取らされてる形になってしまうと、18.5%まで下がってしまい大きな差となってしまいます。

以上、まとめると、後攻では、

2点以上取る > ブランク > 1点を取る > スチールされる

が常に成り立ちそうです。

別の記事では、よく言われている「偶数エンドを後攻で迎えたい」という考えは正しいのか?について考えてみたいと思います。