じりつくんについて
カーリング AI 「じりつくん」は、人工知能技術(AI) を用いてカーリングの局面を評価するソフトウェアです。
任意の局面について、そのエンドの期待得点分布を膨大なシミュレーションの結果にもとづいて学習をしています。つまり、その局面から両チームが投げ合い、エンドの終わりにどちらのチームが何点とる確率がどれくらいか、を見積もることが可能です。
また、残りエンド数と得点差、次のエンドの先攻/後攻の情報から算出される勝率テーブル(後述)を用いて、カーリングのゲーム途中の任意の局面から、そのゲームの期待勝率を予測することができます。その期待勝率を利用することで、AI が考える最善のプレイとそのときの勝率を提示することが可能です。
最善手(最善プレイ)の探索には、インターン/アウトターンそれぞれ4,800通りのショットをシミュレーション上で試し、結果の局面について上記の学習された期待得点分布と勝率テーブルを使って期待勝率を算出します。その期待勝率が最も高くなるプレイが最善であるとして提示します。
アイスの曲がり具合や、スイープの影響、衝突後のストーン挙動などなど、まだまだ不十分な点が多いですが、今の状況でも参考になることがありそうです。
一方、実際の試合データにもとづくデータ分析結果についても Twitter で公開しています。特に、勝率テーブルにもとづく期待勝率の算出は、以下のURLでWebサービスとして提供しています。こちらは AI を使っているわけではなく実際のプレイの統計データですのでご注意下さい。
勝率テーブルは、残りエンド数、得点差、次のエンドの先攻/後攻、の情報から、そのゲームの期待勝率を算出したものです。女子トップチームの2019年から2022年までの3シーズンの2,200試合余りの得点経過のデータから統計的に期待勝率を算出します。
カーリングゾーン(CuriingZone)というサイトにも同じような統計データが掲載されていますが、そちらでは、登録されているすべての試合データにもとづいて算出されています。じりつくんでは、トップチームの試合のみに絞って算出することで、世界トップレベルの試合を対象とした期待勝率を表示することが可能となっています。
以下の表は次のエンドが後攻のときの勝率テーブルです。例えば、残りエンド数が7(表では残りエンド数7の列を参照)、得点差が2点負けていて( 表では得点差-2の行を参照)、次のエンドを後攻で迎えるチームの期待勝率は、25.5%であることを示しています。これは、このような得点状況となった過去の試合の25.5%の試合で勝利したことを意味します。
以下は、次エンドが先攻時の勝率テーブルです。実は、このテーブルの数値は上記の後攻時の勝率テーブルから算出することも可能ですが、その度に少し計算しないとならないので、別途テーブルとして用意しておくと便利です。
先ほどのサイトは、この表の値を各種値を入力すると表示したものとなっています。使い方は以下を参照ください.
この他にも、後攻時に複数点を取る率である Hammer Efficiency (HE) や、先攻時にスチールする率である Steal Efficiency (SE) などといった指標についての分析結果も公開しています。こちらについては別の記事で詳しく解説します.