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カーリングにおけるパフォーマンス指標について

カーリングでは、選手個人やチームのパフォーマンスを表すための指標としてショット率がよく用いられます。これは、スキップの指示したショットに対して、どれだけ忠実に実行できたかについて5段階(100%、75%、50%、25%、0%、または、4点、3点、2点、1点、0点と表すこともある)で評価したものです。

これを各選手やチームごとで集計することで、チームや選手個人のパフォーマンス指標として用いられます。

ショット率という表現から、少し誤解を生んでいる面があります。例えば、1エンドでまだ2投しか投げていないのに、ショット率88%などとなることがあります。これは、100回投球すれば88回が成功する、ということを意味していません。

各ショットについて、成功/不成功というだけでなく、達成度のような形で評価しています。先の例では、2投のショット率がそれぞれ100%と75%で、平均すると88%ということを意味しています。点数でいうと4点と3点で平均は3.5点という意味となります。このことから、ショット率をショットスコアと呼ぶこともあり、こちらの方がイメージしやすいかもしれません。

ショット率/ショットスコアは、選手個人やチームのパフォーマンスを測る指標として広く用いられていますが、ショット自体の難しさを反映していないという問題もあります。スキップはどうしても得点に直結する難しいショットを強いられる場合が多くなるため、一般的にはショット率は他のポジションに比べて低くなる傾向があります。

そのため、難易度という指標と併せて評価される場合がありますが、一般には難易度を用いずに、単にショット率/ショットスコアを用いることの方が多いです。

一方、チーム全体の評価として、ショット率とは違う尺度があります。例えば、あるチームが後攻時に2点以上の複数点を取ることができる率を表すHammer Efficiency (HE) と呼ばれる指標などがその例です。以下では、よく用いられるそれらの指標について説明します。

【後攻時の指標】
Hammer Efficiency (HE):後攻で2点以上取った割合(ただし、ブランクエンドは除く)
Steal Defence (SD):後攻でスチールされた割合(ただし、ブランクは含む) 
*この指標は低ければ低いほど良い
Hammer Factor (HF):HE-SDで算出される後攻でスチールされずに複数点を取ることができる総合的指標

【先攻時の指標】
Force Efficiency (FE):先攻で相手を1点に抑えた割合(ただし、スチール・ブランクは除く)
Steal Efficiency (SE):先攻でスチールした割合(ただし、ブランクは含む)

トップチームの目安は、HEが0.4以上、SDが0.2以下、FEが0.6以上、SEが0.3以上といったところでしょうか。最近の世界選手権やオリンピックなどの大会ごとに見てみると、上位のチームはSDが0.15以下などともう少し良い値を出しているようです。

ただし、これらの指標は、相手チームのレベルによって上下するので、あるチームのパフォーマンスをこれらの指標で評価する場合は、対戦相手についても考慮する必要があります。

以下は、2022年2月に開催された北京オリンピック女子カーリングの各チームの指標です。

北京オリンピック女子カーリングの指標

優勝したイギリスは、被スチール率であるSDが0.120という非常に小さい値でした。つまり、イギリス相手にはほとんどスチールできなかったことを意味します。日本のスチール率は 0.259と高い数字でしたが、イギリスとの決勝戦では、被スチール率の低いイギリスからスチールすることができませんでした。

このように、これらの指標は各チームの特徴を表していると考えることができます。実際に、トップチームの指標の値は素晴らしいものとなっていますので、各チームの指標を比較することで自チームや対象とするチームがどのような特徴をもち、どのような位置づけなのかを知ることもできます。

これらの指標の意味を知ることで、今後のカーリング観戦がまた一段と面白くなるかもしれません。