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あなたの年末年始の予定は怒火レイジング・ファイアを見ることになりました

 これを読んでいる貴方。おめでとう。貴方の年末年始の予定は『怒火 レイジング・ファイア』を見ることに決まりました。これは超幸運なことですよ?地球が誕生して40億年ぐらい経ちますが、年末年始に怒火レイジングファイアを見ることのできる人類は私たちだけです。宇宙開闢以来の奇跡といっていい。そうです。

 えっ?呪術が?マトリックス?いいでしょう、いいでしょう。人間には自由があり、選択権がある。もちろん貴方はそれを見てもいい。怒火レイジングファイアの 後 に ね。

 えっ?エクストリーム・ジョブみたいな警察チームと仮面を被った闇エクストリーム・ジョブみたいな闇チームが全面対決して解像度の高い無名街みたいなところで大捕物をやってカーチェイスをして子供を助けてダークナイトをやった後でHEATをやって、最後に教会でMAXカンフーファイトをするような全編にドニー・イェンと闇堕ちニコラス・ツェーが出っ放しな映画が見たい?何やってるんだいますぐ怒火レイジングファイアを見にいけグズグズするんじゃないッッ!

 いいですか、怒火レイジングファイアは遊びじゃないんですよ。ドニー・イェンなんです。遊びじゃないんですよ。これはもう60億人に対する福祉。香港映画という名の必須栄養素を無料配布している福祉なんですよ。有料ですが実質無料なんですよ。

闇堕ちするニコラス・ツェー

 ドニー・イェンといえば無敵の代名詞な訳です。ドニーさんが映画に出るということは、相手は全員死ぬということです。(生きている場合もあります)

 ドニーさんに勝てるのは辮髪にしたジェット・リーぐらいなので、同格の敵役を用意するのは超至難の業です。

 ですから、枷をはめないといけない。これは鉄則なわけです。ですから盲目にして帝国軍に包囲させたり、拳の道を捨てた人間として救命阿させたり、前髪を伸ばして20代の役をやらせたりしてバランスを取ってきたわけです。

 こういった事実を踏まえて怒火レイジングファイアが用意した答え、それが闇堕ちしたニコラス・ツェーです。メガネをかけている好青年だったニコラス・ツェーを丁寧に現実に絶望させ、顔面に傷をつけて前髪を乱すのです。闇堕ちさせることで生まれる重力加速度。これがドニーさんに対抗できる無限のパワーを生むわけです。

 そうやって生まれた闇のニコラス・ツェーの悪のパワー。この圧倒的存在感がドニーさんの善のそれと拮抗し、トモエめいた回転、つまりカラテを生み出し、怒火レイジングファイアを公共の福祉の位置に押し上げたわけです。本当本当。

自分で交通事故を起こして自分で被害者を助けるドニー・イェンの圧倒的パワー

 凡百のアクション映画に義務的に差し挟まれたカーチェイスシーン。貴方も見たことがあるでしょう。アクション映画といえばカーチェイスシーンがないとダメなんですよねー観客は好きだからカーチェイスーはいはいカーチェイスカーチェイス事故事故転倒転倒悲鳴悲鳴みたいなやつ。

 そういうのは画面全体から出るアレが全くもってクソで、メトロゴールデンメイヤーのライオンぐらいやる気がないことが伝わってきます。ああいうのは全くもってクソです。


 しかしながら怒火レイジングファイアは違います。ドニー・イェンが全力を出してアクション映画をすると、カーチェイスが無敵になります。具体的には自分で轢きそうになった子供をドニーさんが運転席から出てきて自分で助けます。本当です。私はノー・ドラッグです。自分で轢く寸前だった子供を運転中の車の運転席から飛び出したドニーさんが自分で助けるんです。本当です。私はノー・ドラッグです。

 ガンスミス・キャッツで轢きそうになった子供を運転席のドアから中に入れて助手席のドアから外に出して無傷で救出するシーンがありますが、ドニーさんはそれよりヤバい、見てても理解できないやつを一人で実写でやるわけです。本当です

アカデミー内容そのまんま音楽賞七年連続受賞級の主題歌

 全てを見終わった我々の胸に、この2時間で体験したさまざまな思い出が去来します。スタッフロールです。正義…悪…怒り…悲しみ…運命の悪戯…揺れ動く心…譲れない信念…避けられぬ対決…。

ありがとう。それが怒火レイジングファイアの主題歌「対峙 deadlock」の歌詞です。全部歌います。名場面のイメージボードなんてケチ臭えことは言わねえ。歌え。聞け。歌うから聞け。スタッフロールで全部聞いて思い出せ。それが怒火レイジングファイアです。本当です。なんなら聞いたら本編いらないぐらいの内容がある。でもいらなくはないです。見ろ。

 冷静になってほしい。STORMよりもそのまんまの歌詞なんてことがこの世にあるだろうか?ある。そう、あるんです。ドニー・イェンならね。(サムズアップ)

未来へ

怒火レイジングファイアには全てがあるんです。喜び、怒り、悲しみ、香港映画が。新年を迎えるために必要なのは餅じゃない。門松じゃない。怒れる炎なんです。なんか角の立った痛そうなところにガッツンガッツン当たってマジで死ぬんじゃねと思うアクションなんです。

 ここまで書いてきて、ほとんどストーリーに触れていないことに気がつきましたが、そんなことは問題じゃない。全編がスムースに流れ、ガツンガツンと軽快に差し込まれ、急にしんみりし、ドカドカバリバリ撃ち合ったあとで、当たってはいけない速度で当たる蹴りがある。あとピアノがある。それで充分なんですよ。わかりますか?わかりました。ありがとうございます。質問はありますか?ありません。チケットの予約をしました。おめでとう。すぐ行け。

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