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ししノベル

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#逆噴射小説大賞2020

鷲狩りの騎士団ホルガー・ダンスク

鷲狩りの騎士団ホルガー・ダンスク

「ゲシュタポだ!」
誰かが叫び、俺たちは一目散に逃げ出した。灯りが消された。銃声。家具が倒れる音。

「逃げろーッみんな逃げろーッ」
銃声。銃声。バタバタと扉を押し合っている。ミケル、馬鹿野郎。お前も逃げろ。

隠れ家の外は森だ。ナチ野郎の懐中電灯が光の剣みたいに森を切り裂いて蠢いている。早く。早くここを離れよう。泥まみれになって這いずり、転がった。木の根がやたらと体にぶつかったが、痛みを感じてる

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神州人虎伝

神州人虎伝

『畜生どもに合力を恃んだこと、悔やまれてならぬ』
御屋形の末期が思い出された。

ちぐはぐな武者鎧を着た男たちの貌が、見る間に変貌した。全身を黒縞の毛が覆い、瞳が縦に窄む。耳まで口が裂ける。汚らしく嗤った口内に牙が並んだ。

「けだものよな」
大胡武蔵守は怖れ気もなく抜刀すると、目の前の「虎」の口に、一息に太刀を叩き込んだ。
悲鳴が上がり、即座に残りの「虎」どもが武蔵守に飛びかかった。

(早い)

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