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【じんたろホカホカ壁新聞】Go To トラベルで観光業界を救おう!

Go Toトラベルとは何か?

 ある旅行サイトにはこう書いてあります。
「新型コロナウイルスの影響により、甚大な被害を受けている観光業等を対象に消費喚起キャンペーンとして『Go Toキャンペーン』が実施されます。
今回のキャンペーンは、なんと旅行代金が実質半額!この機会にお得に旅行を楽しもう!」

 Go To Travelは、Go Toキャンペーンの一つで、感染症収束後の旅行需要喚起策として、「ふっこう割」と同様に、宿泊付きの場合は1泊あたり2万円、日帰り旅行は1万円を上限に旅行代金の半額が、旅行代金の割引やクーポン等の形で割引されます。
 でも、半額ってのは一番割引率が大きいケースで、7月は旅行代金の割引(旅行代金の35%割引相当)から先行して始まります。旅行先で使える地域共通クーポン(旅行代金の15%相当)については、準備に時間がかかることから9月以降の開始となる見込みです。そのためキャンペーン開始から当面の間は旅行代金の35%割引のみが適用となります。

○「Go Toトラベルキャンペーン」で新型コロナ収束後におもいっきりお得に旅行を楽しもう!
https://tour.vipliner.biz/campaign/goto-travel/#:~:text=Go%20To%20Travel%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%81%AF,%E5%89%B2%E5%BC%95%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

 要するに政府が旅行に行く人の経済的インセンティブを税金で行うってことです。
 まあ、税金で個人への補助するってことだから、国民経済における経済回復効果がどの程度あるかって大きな問題ですよね。
 では、この政策が出てきた背景ってどういうことで、どうしてこれが効果があると考えられているんでしょうか。

観光産業の経済的打撃は一般人が思う以上に大きい

 ゴールデンウィークで書き入れ時であったであろう5月の宿泊費は97.6%も減少しているとか。何も手を打たずにこの状態が続けば、国内の観光産業が壊滅的な状況に追い込まれるという悲愴な見方もあります。
 で、内部観光消費による生産波及効果55.2兆円にもおよび、日本経済にとって、観光は非常に重要かつ巨大な産業なんだと言います。なにせ、日帰り旅行を含めた日本人による国内旅行消費額(2017年)は約21.1兆円であり、訪日外国人客による国内観光消費は4.1兆円、そして日本人の海外旅行による国内分消費も含めれば、日本国内における内部観光消費は27.1兆円にものぼります。

○しかし、このままだと観光産業は死ぬ ~Go Toトラベルをどう考えればいいのか~
中田大悟 | 独立行政法人経済産業研究所 上席研究員
7/14(火)
https://news.yahoo.co.jp/byline/nakatadaigo/20200714-00188107/


経済効果の見込みはどんなものか?

 2020年6月24日、第一生命経済研究所が「Go To キャンペーン」による需要創出効果を発表しました。第一生命経済研究所によると、最大で1.37兆円を押し上げる見通しとか。ただし、付与額に1人あたり1泊2万円までと上限が定められているため、旅行の効果が下振れる可能性があるとされています。

○Go To キャンペーン、旅行で55.1%の需要創出効果見込み、市場規模拡大額1.37兆円:8月開始目指す
https://honichi.com/news/2020/06/29/gototravelnews/

 ちょっとまてよ。観光庁は2020年4月7日、緊急事態宣言の発令にあわせ、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」の施策に対する補正予算の概要を発表していよね。そこでは、観光業界向けの施策が中核に「Go To キャンペーン事業」の中核ともいえる「Go To Travel キャンペーン」には、観光予算として過去に例を見ない1兆3,500億円を計上し、宿泊旅行で5,000万人泊ほどの需要喚起を見込んでいたはず。
 要するに補助金がそのまま、観光業の売り上げに寄与するってことなのか。

○かつてない予算額1.3兆円、新型コロナ収束時の観光市場回復を後押し「Go To キャンペーン事業」5,000万人泊の需要喚起へ:外食・イベント・商店街対象事業も
https://honichi.com/news/2020/04/20/gotocampaign/

 いやいや、そういうことではなく、この55%の需要喚起という意味は、市場全体の需要を喚起することで、旅行の市場規模を「55%」押し上げ、市場規模の拡大額は最大で 2.80 兆円になるとの試算らしい。補助金、クーポンなどの投資をすれば、その2倍のレバレッジ効果ということなんでしょう。
 まあ、思惑通りに行けば、観光産業がホントに回復するってことかもしれません。

○Go To キャンペーンの需要創出効果、最大2.8兆円と試算 旅行「55%」押し上げ効果も 第一生命経済研究所2020.07.01
https://airstair.jp/goto-economic-trends/

宿泊業の倒産は心配ないのか?

 でも、それなら直接、補助金を観光産業に回すとか、融資枠を広げればいいのではないかという主張もあります。
 1兆3500億もあるなら、それを人件費や施設維持費に投入して経営を維持できるのではないかという仮説も成り立ちます。
 ではそれはどうなんでしょうか。
 
 東京商工リサーチが6月に発表したコロナ倒産の累積件数は105件。業種別でみた場合、多さの順に並べると下記のようになります。

宿泊業 22件
飲食業 15件
アパレル関連 10件
食品製造業 9件
サービス業 8件
娯楽業 8件

 圧倒的に宿泊業が多いですが、この東京商工リサーチのこの件数は、負債が1,000万円未満の倒産は含まれていません。そのため、実際にはもっと多くの民間企業でコロナ破綻が起きていると考えた方が良いとか。
 この記事によると、日本政府観光局の調べでは今年3月は前年同月比で訪日客数が推計値で93.0%減となりました。このような状況は、新型コロナウイルスの感染拡大が終息しない限り続いていきます。日本人の国内旅行者も終息からしばらく経つまでは元通りには戻りません。そして、売上が立たなければキャッシュフローはどんどん厳しくなります。

 宿泊業では、ワンランク上のカプセルホテルというイメージで事業を拡大していた「ファーストキャビン」の倒産は大きな衝撃を与えました。3月下旬から4月上旬ごろの客室稼働率は10%程度までに落ち込み、4月24日に東京地方裁判所に破産を申請しました。
 ホテルやリゾートの運営受託などを手掛けてきた大阪のWBFホテル&リゾーツは大阪地方裁判所に対し、4月27日に民事再生法の適用を申請しています。ファーストキャビンと同様に宿泊客の急速な減少が経営に大きなダメージを与えました。

○「コロナ破綻」100件超え!データから分かる日本経済の真実
THE OWNER2020/06/06
https://the-owner.jp/archives/3145

 しかし、いつまでもコロナ感染が続くわけではないでしょう。最近発表された全国約300施設の5月25日までの推移調査では、4月10日を底に徐々に回復し、2月20日くらいの需要まで回復しています。

○宿泊予約に回復の兆し PRTimesとりぷら2020/6/10
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000051.000019447.html

宿泊業のキャッシュフローは実際にどうなのか?

 日本政策金融公庫等が、新型コロナの影響で経営状況が悪化した生活衛生関係営業を営む事業主に対し、金利の引き下げと無担保での融資を実施しました。担保の有無に関わらず一律金利とし、融資後の3年間まで0.9%の金利引き下げた制度です。
 ただしコロナ等に関する他の貸付制度なども同時に申請している場合、合計で3000万円という限度があります。つまり、コロナ不況で3000万円までは融資が受けられるということです。
 一時期パチンコ店がこの制度から外されていて問題になっていました。

○[新型コロナ資金繰り] 生活衛生関係の事業者向け(旅館業・飲食店の方向け)の融資制度を解説
2020.05.13リードブレーン株式会社
https://leadbrain.co.jp/contents/lb/3731/

 しかし、この程度の融資ではどうにもならないというのが実際の経営でしょう。
 旅館・ホテル業界の経営実態を知る情報でまとまったものがネットにはないのですが、こんな資料がありました。

○旅館業(ホテル)の財務分析
www.zaimu-shindan-kenkyukai.jp › app › download

 この資料を見ると、2011年度の財務はこういうことです。
■パレスホテル 年間売り上げ36億3200万円、年間人件費29億8100万円(売上げの82%)※パレスホテルは、ホテル5拠点と賃貸オフィスビル1棟を所有し運営
■丸の内ホテル 年間売り上げ23億9000万円、年間人件費9億700万円(売上げの38%)
※丸の内ホテルは、ホテルひとつの他にレストランを展開

パレスホテルのようにホテルが主な事業だと人件費比率が8割以上と高くなることがわかります。

 しかし、こういう大規模なホテルの方が少数で、大多数はもっと小規模なホテル、旅館です。
 その辺りの経営がどうなっているかの詳細はわかりませんが、こういう記事がありました。

○アフターコロナと宿泊業
昼間はホテルの支配人やってるIT社長のブログ
2020.05.27
https://fringe.co.jp/%E3%82%A2%E3%83%95%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%81%A8%E5%AE%BF%E6%B3%8A%E6%A5%AD/

 この社長はブログの中でこう言っています。
「3月から6月にかけて売上が殆どゼロに近い宿泊業において、セーフティーネットでの借入分は殆どが消化されてしまっているのが現実です。実際に、40店舗ほどビジネスホテルを展開しているホテルチェーンさんとも話しましたが、個別店舗のキャッシュフローは既に5月末時点で行き詰っており、本社からの毎月の借入がなくなれば、その瞬間にキャッシュアウトになる状態です。7月には60%は稼働が戻らないと限界を迎えてしまうのが現実ですが、今の所、出張や観光の宿泊需要は見える気配がありません。」

さらにこう続けています。
「助成金を頼るにしても、ある程度の客室数がある宿泊施設の場合、毎月の固定費は1,500万円以上かかってしまうので、持続化給付金200万円、家賃補助も1ヵ月100万円ほどでは、全くまかなうことができません。そうなると、6月末の時点でかなり多くの宿泊施設が閉館してしまう可能性があります。
7月末からの<Go To キャンペーン>の施策は多くの施設にとって、正直間に合わない気がします。」

 キャッシュフローうんぬんという一般論ではホテル・旅館などの宿泊業を救うことはできないでしょう。チェーンのホテルでは本社からの借入ができるかどうか、7月に稼働率60%くらいを上回っていないと経営は続けられない。ある程度客室数があるホテルでは毎月の固定費が1500万円くらいはかかるので、3000万円の日本政策金融公庫から3000万円借りてもほとんど意味は無い。そういうことなんでしょう。付き合いのある銀行や信用金庫からどれだけ融資枠を増やせるのか、売却して食いつなぐ資産があるのか、小さな旅館なら親や親戚からお金が借りられるのか、そういう問題です。

 ただ、先の調査でも300施設の調査では5月末に稼働率60%くらいになっているという結果も出ています。メディアの性格上、おそらく大きな規模の施設ばかりと思われますので、もう少し回復すれば、すべての施設が60%以上になる可能性もあります。

Go To トラベルを利用して、宿泊業、観光業を救おう! それも楽天トラベルとかで

 ということで、いま私たちにできることは、感染防止を十分にして、旅行でもして旅館やホテル、観光業を救うことくらいでしょう。
 新幹線では席を空けるとか、ドアをしょっちゅう開閉するとか、喚起を十分にする。まあ、JR各社は当たり前のようにしているだろうけど。
 ホテルでも衛生管理に注意して、大宴会などは避けるとか。三密回避で集団感染を防止さえすれば、感染リスクは抑えられる。
 旅行しなくても、部屋でじっとしていない限り、どこにでも感染リスクは存在する。健康管理に注意しないといけないのはどこにいても同じ。
 東京都がどうのこうのと問題になっていますが、マクロ視点ではわからないでもありませんが、ミクロレベル、つまり個々人の感染防止レベルでは、都道府県の県境を越えるかどうかってあんまり問題じゃないと思います。実際に通勤している人多いしね。

 なお、わたしはネット予約はしないポリシーだ!なんて宿泊施設への直接予約にしてもその事業者が今後、GoToトラベル事業の「参加登録の認定」を受けなければなりません。つまり、宿泊事業者が申請を行わなかった場合は、対象外となるみたいです。
 結局、先行予約の受付をしている予約サイト(JTB・HIS・Yahoo!トラベル・一休・楽天トラベルなど)を通しての予約、7月27日以降の割引済商品が販売されるのを待ってから予約するのがベターでしょう。

 ふつうの市民として感染防止と経済復興のために知恵を出すなら、旅行中いかにして感染防止できるかの方法や観光地での感染防止しながらの楽しみかたなのではないでしょうか。「じんたろホカホカ壁新聞」は、今困っているひとたちのために、政策批判よりもっと個人レベルの生活の楽しみ方を考えたいと思います。

○Go To トラベルキャンペーン還付対象となる旅行の条件とは
2020年7月18日
https://travelersnavi.com/coupon/goto722



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