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【行列ゼロ!じんたろ法律事務所】ネットの中傷書き込みへの科料9000円は妥当なのか?

科料9000円の略式命令

フジテレビのリアリティー番組「テラスハウス」に出演していたプロレスラーの木村花さん(当時22)が自殺した問題で、東京区検は3月30日、ツイッターに誹謗(ひぼう)中傷する内容の投稿をしたとして、侮辱罪で大阪府の20代男性を略式起訴した。東京簡裁は同日、科料9000円の略式命令を出した。

犯人は即日納付したとか。
裁判所の命令には従う人なのね。
民事裁判は欠席だったとか。でも罰せられないからってのは、2ちゃんねる作ったひろゆき的な倫理観なんだろうね。

母親の前には法律の壁

母親の響子さんは刑事・民事両面で法的措置を取るため、準備を進めていた。
しかし、様々なハードルがあった。

まず大前提として、こうした誹謗中傷に対して訴えを起こす場合には、「プロパイダ責任制御法」に基づく発信者情報開示請求をする必要がある。そのプロセスは二段構えだ。

最初に、そうした書き込みがなされたSNSや掲示板、ブログなどに対して「IPアドレス」を開示請求し、そこからプロバイダ(インターネット会社や携帯会社など)を特定する。

そして、今後はプロバイダに対して、契約者情報についての開示請求をしないといけない。いよいよ契約者が判明した段階で、やっと刑事や民事の訴訟の手続きに移ることができるのだ。

つまり結果として計3回の訴訟が必要になる、ということだ。

響子さん側は、2020年7月にTwitterから発信者情報(IPアドレスとタイムスタンプ)の開示を受け、その情報をもとに、NTTコミュニケーションズに情報開示請求をした。

しかし、NTTが「権利が侵害されたことが明らかではない」として、開示を拒否したため、NTTを提訴。

その後、NTTから「契約者に意見照会を行なったところ、開示に同意するとの回答があった」との連絡があり、氏名や住所などの情報を得ることができた。

契約者と実際に投稿をした発信者が別人の可能性があるため、契約者に確認の手紙を2度送ったものの、返事は得られなかったという。

住民票の開示請求も試みたものの、その住所に該当する住民票はないとの回答だった。

死者を侮辱する容疑者

2020年5月に自殺した木村花さんだったが、その後、母親はこの投稿を目にした。

「あんたの死でみんな幸せになったよ、ありがとう。テラハ楽しみにしてたのにお前の自殺のせいで中止。最後まで迷惑掛けて何様?地獄に落ちなよ」

それで裁判を起こすことを決意した。

しかし、死者への権利侵害を裁くのは難しい。
母親は民事裁判で「亡くなったあとも中傷し、母親が娘を思う気持ちを侵害している」とも主張した。

響子さんは閉廷後、東京都内で記者会見し「被告は、花に対してしたことに向き合ってほしい。投稿した言葉の責任を取らせることが世の中のためになると思っている」と語った。

科料9000円は妥当なのか?

報道によると、警察は男性がツイッターに書き込んだ中傷コメントについて、どんどん激しい内容になっていったと話している。

しかし、男性が略式起訴された侮辱罪は、科料は1万円未満と法律で定められている。何らかの事実を示しながら名誉を傷つける名誉毀損罪では、法定刑の罰金は50万円以下となっている。

刑法で侮辱罪として訴える限界ともいえるだろう。
むしろ、今回の件で死者への侮辱を罪として認めたことが大きいのかもしれない。

注目すべきは、親の響子さんが男性に対し、限度を超えた侮辱行為で遺族の心情を傷付けたとして約294万円の損害賠償を求めている民事裁判の判決だろう。
4月21日に開かれる裁判で、相手側が3月22日と同じように出廷せず、反論しなければ結審となる。

さて、木村花さんに「あんたの死でみんな幸せになったよ、ありがとう。・・・地獄に落ちなよ」と書き込み続けた長野県在住の男性に裁判所はその責任をいくらとするのか?

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