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【じんたろホカホカ壁新聞】日本大学の澤田康広副学長は悪者なのか、それとも教育者なのか?


日大役員の処分決まる!


学生の大麻所持で警察に報告が遅れたことが原因になって、日本大学のガバナンスが問われていた。
昨日、役員の辞任や処分が発表された。

アメリカンフットボール部の薬物事件に関連し、日本大の酒井健夫学長と沢田康広副学長が理事会側からの辞任勧告を受け入れる方向で調整していることが26日、関係者への取材で分かった。2人は引責辞任に納得していないが、学内の混乱を避けたい意向があるという。林真理子理事長を減給50%とする処分案とともに、27日以降に学内の協議が進むとみられる。

学長、副学長は辞任。林真理子理事長は辞めずに、減給50%らしい。
減給50%とはずいぶん大きいなあ、と思っていたら、こんな記事もあった。

日大の公表資料によると、理事長報酬は月額200万円(年額2400万円)。

https://news.yahoo.co.jp/articles/c2664ef3496e4919f43335cb8e7683392d40c895

半額減っても、報酬が1200万円もあるなら、林氏にとってはあんまり痛くもないだろう。

と、思っていたら、今度は澤田氏が林真理子氏をパワハラで訴えた。

沢田副学長側は、アメフト部の薬物事件をめぐる今年8月の会見後、林理事長から「ほぼ全ての会議への出席が禁じられた」と指摘しています。
そのうえで、「全ての責任が沢田副学長にあるかのような印象操作をされたことによって、社会的評価を低下させられた」などと主張しています。
沢田副学長側は、こうした行為が「林理事長によるパワハラだ」として、林理事長に対し、1000万円の損害賠償を求める訴えを起こしました。

この学校法人はいったいどうなっているのだろうか?

大麻所持事件の経緯

でもなぜ日大の学長と副学長が辞任する事態になったのか?
直接の要因は、今年の6月に日大のアメフト部の部員が大麻所持しているという通報が警察にあったことから始まる。

会見の冒頭で酒井学長が今回の薬物事案の経緯を説明。6月30日に警視庁から部内での薬物疑惑の情報提供があり、大学側が部員の持ち物検査を実施した結果、7月6日に部員の荷物から植物片など不審物が見つかった。だが、この事実を大学から警視庁へ報告を入れたのは18日だった。

いわゆる「空白の12日間」と呼ばれている問題だ。

警察への報告がそうなった経緯について、澤田副学長はこう言っていた。

いわゆる〝空白の12日〟が発生した理由を沢田副学長は「まずは学生に反省させて自首させたいと考えていた」と説明。持ち物検査に立ち会った沢田副学長は見つかった植物片について「カスのようなもので、明らかに大麻とわかるようなものではなかった。違法薬物と確証はなく、まとめて警察に報告しようと思った」とし、警視庁に提出するまでは沢田副学長が保管していたという。

この話が本当だと、大学が徹底した調査をさせてほしいと警察に要望したら、警察からも大学の調査に委ねたいという話があったらしい。
そして警察から犯罪事実が認められたら「自首をさせてほしい」と言われたので、「隠蔽しようなんてことは全く考えておらず、本人に反省を促し自首させたいと考えていた」と語っていたとか。

調査では学生の同意の元で調査を行ったと強調。「荷物検査をした際に、ある学生の所持品から本件で問題となったものが発見された」。それについて「学生から発見されたブツは警察で鑑定した結果、大麻である植物細片であったと明らかになった。7月6日に私が発見した際には、ある入れ物に入っていたわけですが、大麻であるというふうに鑑定をされた小さなビニール袋…いわゆるパケと言われているものですが、その中に入っていたのは非常に微量で、言い方は悪いけど“カス”のような感じに見えました。ですからこれ自体が明らかに大麻だとは分かりませんでしたが、大麻のカスなのかもしれないと思いました。その時に私の方で認識できたのはそれだけのことであって。パケを見て、それ以外入れ物の中は触るべきではないと思いましたので全く触らなかった。中に何が入っているのか調べませんでしたので(のちに警察での鑑定で出てきた覚せい剤の)錠剤についての認識を持つことができなかった」と覚せい剤の錠剤の存在についても説明した。

記者会見で、大学の副学長が、「ブツ」「カス」「パケ」という専門用語を使うのも何かスゴいものを感じる。

澤田康広副学長とはどんな人なのか?

田中英壽前理事長の時に、関西学院大学とのアメフトの試合で起きた「悪質タックル」事件というのがあった。
このときに記者会見の司会をして、横柄な態度が話題になったのが、この澤田副学長だ。そう、あの人なのだ。
澤田氏はまだ、副学長をやっていたんだ。
澤田氏の経歴はこんな感じ。

【1992年/28歳】司法試験合格
【2011年4月/46歳】山口県の次席検事に就任
【2015年/50歳】東京地方検察庁総務部の副部長に就任
【2016年4月/53歳】宇都宮地検の次席検事に就任
【2018年3月/53歳】宇都宮地検の次席検事を退任
【2018年4月/53歳】日本大学法学部法学科の教授兼副学長に就任
【2020年4月/55歳】日本大学危機管理学部の非常勤講師に就任
【2021年4月/56歳】港区建築審査会委員、東京都港区建築審査会

https://blue-thermal.jp/entertainment/sawada-yasuhiro/#google_vignette

日大出身の元検事だ。
だから、使い慣れた言葉として「ブツ」「カス」「パケ」って言ったりするんだ。

「空白の12日間」は何が問題なのか?

澤田副学長は、学生が大麻を所持していることを知っていたのに警察に報告するのが遅れたということが問題にされている。
では、報告が遅かったことはどういう問題があるのだろうか?

このことに、元警察官僚の澤井康生弁護士が答えている。

――発見から警察への連絡まで「空白の12日」などとも言われています。

副学長が12日間にわたり植物細片を保管していた行為については、大麻所持罪の成否が問題となり得ます。
「所持」とは、人が物を保管する実力支配関係を内容とする行為のことをいいます(最高裁昭和24年5月18日判決)。
自分の身体に直接身に付けていなくても、自分の管理権の及ぶ範囲に物を置いている状態や他人に知られないように隠している場合なども所持に該当します。たとえば、自宅に覚醒剤を隠していれば、外出していた場合でも所持罪が成立します。
副学長が植物細片をどのような状態で保管していたのか、他の大学関係者と協議して行動していたのか不明ですが、自分の管理権の及ぶ範囲で保管していた場合や他人に知られないように隠していた場合、所持罪が成立する可能性があります。

つまり、もしも澤田副学長が大麻と知っていて持っていたなら、澤田副学長に大麻所持罪が成立するということだ。

――副学長は「違法薬物との確証はなかった」と主張しています。

大麻所持罪の故意を認めることができるのかが問題となります。
報道によると、2022年11月にアメフト部員が大麻の使用を自己申告したほか、2023年6月30日に警視庁から部内での薬物使用疑いの情報提供があったようです。これらの経緯からすると、大学側の調査結果で大麻のような植物細片を発見した時点で、「大麻である蓋然性が非常に高い」と判断できたのではないでしょうか。
ましてや副学長は法律の素人ではなく元検察官ですから、検察庁の刑事部や公判部で大麻所持罪の証拠品として大麻の現物を嫌というほど見てきたはずです。
このような客観的状況を前提とすれば、仮に100パーセント大麻であるとの確証がなかったとしても、「もしかしたら大麻を含む違法薬物かもしれない」との認識は十分に持てたはずです。

大麻かどうか調べていた澤田副学長は言っているが、それはどうなのだろうか?

――「違法薬物かもしれない」という認識さえあればいいのでしょうか。
過去の裁判例でも、違法薬物の認識については、必ずしも特定の薬物であるとの認識(「覚せい剤である」とか「ヘロインである」)までは必要なく、違法薬物の「類」の認識で足りるとされています。
たとえば、覚醒剤輸入罪について、覚醒剤との明確な認識がなくても、覚醒剤を含む身体に有害で違法な薬物類であるとの認識(概括的故意)で足りるとされています(最高裁平成2年2月9日判決)。
発見された植物細片が「大麻を含む違法薬物かもしれない」などと認識し得たといえる場合には、大麻所持の概括的故意が認められます。
副学長が植物細片を保管していた行為について、保管行為が短期間だったととらえて実際に立件することはなさそうに思いますが、理屈上は大麻所持罪の成立も否定できません。

澤田副学長は、教育的な理由から、学生に自首させようとしたとも言っている。その場合はどうなのだろうか?

――「学生に反省させて自首をさせたかった」という事情は何か影響しますか。

副学長が犯人である生徒を特定できていたにもかかわらず、自首を促すために12日間も警察に連絡しなかったことが、大麻所持罪の成立に影響を及ぼすことはありません。
自首するように説得する行為は、犯人隠避罪(刑法103条)との関係で、教育者の正当業務行為として違法性が否定(阻却)される可能性はあります。過去には、牧師が牧会活動で犯人を教会に宿泊させつつ説得して任意出頭させた行為について正当業務行為として違法性を阻却した判決があります(神戸簡裁昭和50年2月20日判決)。
大麻所持罪は単純に違法薬物を所持していた事実そのものを罰する刑罰規定ですから、生徒に自首を促すためという理由は違法性を阻却する事由にはなりません。ただ、仮に大麻所持罪で立件された場合、教育者として生徒のために行った行為として有利な情状になることはあり得ると思います。

https://news.yahoo.co.jp/articles/35603b001586bac1e462ebdc87c64c874b9dd561


つまり、澤田副学長が教育的な意味で学生に自首を促していたとしても、澤田副学長に大麻所持罪は成立する。大麻を所持していた学生にも大麻所持罪は成立する。しかし、澤田氏が起訴されても有利な情状にはなるということだ。

澤田副学長は、東京地検総務部副部長、宇都宮地検次席検事などを務めた経歴を持つ。澤田副学長は、調査を始めた経緯について、「犯罪事実が認められた場合、本人に反省を求めて自首をさせたいと思った」とし、「判断は間違いではなかった」と述べていた。そして実際に澤田氏は大麻を見つけたのだ。

7月6日、学生寮で11人に対して持ち物検査をしたところ、入れ物に入った「細かい茶葉のようなもの」を見つけたという。その後、部員らへのヒアリングを進めるとともに、7月13日には林理事長に報告。見つかった「茶葉のようなもの」の入った入れ物について18日に警察に報告したという。発見から報告までの12日間、この入れ物は沢田副学長が学内で保管していたという。

https://digital.asahi.com/articles/ASR885TYRR88UTIL01S.html


澤田氏は調査を始めて一週間で見つけ、林理事長に報告している。それを警察に報告しなかったのはむしろ林理事長の問題ではないのだろうか?

林理事長 vs 澤田副学長 ふたりの対立とは何か?

林理事長と澤田副学長の間のには溝があると報道されている。ではその対立の溝とは何なのだろうか?

「時事ドットコム」が18日、澤田氏の代理人から提供された録音データを基に2人のやりとりを伝えている。

<林氏>
今、補助金不交付の可能性が非常に高い。もし、先生が役員のまま、事情聴取を受けたとマスコミに出ると、恐らく不交付じゃないかというのが、みんなの見立てなんですけれども。

<澤田氏>
補助金をもらうために私に辞めろということですか。

<林氏>
補助金もありますし、社会的にも許されないじゃないですか。私も本当に社会的制裁を受けて仕事も非常にキャンセルされてますし、講演会も延期とか言われたりしている。なぜかというと、隠蔽したことに私も手を貸している(と言われている)。あの大学の理事長ということで、すごく悪い印象を受けている。第三者委の後、私も学長も何らかの処分を受けると思います。

<澤田氏>
ですからなぜ、私だけ第三者委の処分の前ということになるのでしょうか。

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/330807

騒ぎになっていて、誰も処分されないようでは文部科学省から補助金をストップされる。林氏は、理事長として生け贄を差し出すというような思いだったのかもしれない。
しかし、「講演会も延期とか言われたりしている」「隠蔽したことに私も手を貸している(と言われている)」なんていうのは私情と公務を混同しているようにも思う。
この人は、本当に理事長に相応しいのだろうか。

澤田氏は林氏のことをこう批判している。

批判を浴びた8月の記者会見を振り返り、「私の態度が高圧的で不遜だった。記者の後ろに学生、教職員などがいることを忘れていた。学生にも非難の声が浴びせられているかもしれず、申し訳ない」と謝罪した。
 9月に林氏から対面で求められた辞任を拒否した理由は、「辞めることで、主張する者を単に排除するような組織になってしまうのではないかと心配した」と説明。その上で、林氏の「私たちは補助金も欲しいし、たたかれたくない」などとした発言を、「辞任に相当するような説明ではなく、世間体ばかり気にする発言。事実や真実を無視して大学を動かすことは到底あってはならない」と批判した。

もし、自分が澤田氏のような副学長で、学生の大麻所持が疑われているときにどうするだろうか?

大麻を見つけた時点で、警察に「逮捕してください」と連絡するだろうか?
それとも学生の将来のために自首を促すだろうか?

澤田氏が会見や取材で言っているのが本当だとしたら、澤田氏は学生に自首を促すために7日間かかった。そして林理事長に報告した。それから5日間、林理事長がこの話を預かっていたことになる。

これは「空白の12日間」としてマスコミが騒ぐのが正しいのだろうか?

責められるべきは、大麻を所持していた学生が一番だろう。
しかし、澤田氏は副学長として、学生の将来を考え、教育的に自首を促したに過ぎないのではないだろうか?

「ブツ」「カス」「パケ」という専門用語を使う澤田副学長を何かとても恐ろしい存在のように描いているマスコミに問題はないのだろうか?

大麻所持についての法律も知っている澤田副学長は、自分に被害が及ぶことを覚悟で学生に自首を促した。
会見での言葉遣いは悪いが、澤田副学長の行動だけを追うと、違う人物像も見えてくるような気がする。

澤田氏がパワハラの損害賠償請求で林理事長を訴えるのは、ある意味当然のようにも思う。
しかし、澤田氏という人は、そのことが日本大学のブランドイメージをさらに毀損することになるのを考えるような人ではないのだろう。

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