![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/143724212/rectangle_large_type_2_2c8d8dfb7116f937fdc03557adac73d4.png?width=800)
バーでの小事件
みんなは女にボコボコにされた事ある?俺はある。物理的にではなく、言葉でだけど。
これは初めて女の子を紹介された時の話。
2回行った事のあるバーに久しぶりに遊びに行った。酒を飲みながらマスターとスケベで最低な話をしていた。するとマスターは「女の子を紹介しようか?」と言ってきた。
スケベな話をしていたものの、マスターとは仲良くなれた感じは無かったので意外だった。見せて貰った女の画像の印象は、優しそうな人と言う感じだ。二十代半ばでバーの常連らしい。
一応女の画像を確認したものの、俺は見る前から会う事を決めてしていた。当時、俺はマッチングアプリを頑張っていてとにかく会えるだけ会っていた。「面倒くさいメッセージのやり取り無しで済むなら会うのが当然じゃないか!!」と言う心境だった。
マスターは女に送るための俺の動画を撮った。何で写真じゃなくて動画なんだろう?と思ったが、正確に値踏みされるためのものなのだろう。何だかいやらしいと思った。
そのバーの中で女と会うことになった。寒い時期だった。俺はお気に入りのRAGEBLUEのチェスターコートを着て格好いいつもりだった。(今はそのコートは古着屋に売った。200円だった)
女の子(以下紹子と呼ぶ)は先に来てカウンターに座っていた。ワンピースにGジャンをはおり、可愛らしい顔をしていてややふくよかな方だった。紹子はそのバーの常連らしく、落ち着いた様子をしていた。
俺はヘラヘラしながら、紹子の隣に座った。これは俺がアプリをやってたから思ったのだが、アプリで沢山のメッセージのやりとりを省いて女の子と会えるなんて、“軽い”と思った。
メッセージのやり取りで自分に時間を割いてない男と会うなんて、大事なものをティッシュ配りみたいに誰にでも与える様な愚行だと思ったのだ。
うん、分かってる。今はこんな考えがバカげてるのは…。
でも、その時の空っぽな俺の頭はアチアプの基準に洗脳されていた。
紹子とのトークはあまり盛り上がらなかった。俺は相手を不当にもナメていたので、初対面なのにタメ口しか使わなかった。
持ってきてたタロットで(当時、女と会う時は常備していた)、紹子の恋愛運を占った。悪魔の正位置が出て、「会社の上司と不倫しそうかも…」と会って30分にしては、じめっとした事を伝えた。
そしてこれは、今でも自己嫌悪で恥ずかしくなるのだが、一時間程度話した後にマスターと紹子に向かって、「後は俺の悪口で盛り上がって下さい!それじゃあ!」とクソアニメのお調子者でも言わない様な事を言って帰った。
そのバーには、俺達とマスターの他にオタク風のおじさんの客がいた。バーにいる時、この空間で俺が一番魅力的だと思っていた。その自惚れが、俺を浮かれた男子大学生みたいにしていた。
相手が俺に惹かれた様子は全く無かった。だが、それでも全く構わなかった。俺は“紹介された子と会う”と言う陽キャっぽい事が初めてできて、それだけで満足していた。
紹子とはラインを交換していた。バーで別れた後、ラインで改めて二人で飯に行く話をした。勿論、俺が誘った。バーによく行くような女性が、普段どんな遊び方をしてるか聞いてみたかったのだ。
その子と飯に行くまで2週間くらいあった。その間にアプリで知り合った別の女の子をバーに連れて行った。俺と全く釣り合って無い小柄のかわいい子だ。そのバーにはジェンガやテーブルフットボールの小さい版みたいなのがあり、俺はそれを借りて二人で遊びたかった。テーブル席に座った俺達にマスターが聞いてきた。
マスター「友達?それとも恋愛関係?」
俺「どちらかと言えば恋愛?」
マスター「ふうぅん…」
ちょっと含みがあるような言い方だった。この時、俺はマスターが何を考えてるか分からなかった。
その数日後、紹子からラインが来た。なんでも好きな人ができて飯には行けないらしい。唐突な内容だと思ったが、俺はその時、金が全然無かったので飯に行けなくなって安心した。「分かった。またバーで会った時はよろしく!」と友達みたいなテンションで返信した。
その後、紹子と俺はバーで再会した。その時は、紹子の友達(以下友子と呼ぶ)もいた。友子はスリムな美人で、香水の趣味が抜群に良かった。そこで俺はこの二人からお説教を食らう事になる。
と言うのも、俺に女の子を紹介した直ぐに他の女の子を連れて来た事がマスターを不快にし、彼女等にその事を話し、それに加えて俺がマスターに話した下らない女遊びについてもバラされた様だった。紹子とご飯に行けなくなったのもそのせいだ。
彼女等の言った事をまとめると、
・女を紹介したマスターの店に、別の女の子を連れてくのはマスターに失礼だ。
・その事で感情的な問題が起き、客が離れればお店に損失が出る。これを考慮しなかった俺の行動は軽率だ。
これ等の主張は、主に紹子の友達の友子からなされた。真剣な瞳とハッキリした口調から、友子がこのバーが本当に好きな事と、強い性格が伝わってきた。
ごもっともだと思い、俺は直ぐ謝った。友子が俺を叱っても、友子には何の利益もない。
それなのに、他人を真剣に叱れる友子の熱意に感心して、「偉いねぇ」と善行に対する称賛の様に誉めた。どこか他人ごとの様な調子だったと思う。
と言うのも、友子の言い分はごもっともだと思ったが、心から反省したのではなかった。マスターを怒らせるのが怖くて黙っていたが、俺にも言い分があった。
(俺が紹子をどんな話の流れで紹介されたか、友子は知っているのか??
最低レベルの女遊びの会話からの流れでだ。そんな俺に、普通の女が紹介されるなんて思う訳ないじゃないか??軽い付き合いを求めてる女なら分かるが…。
もし、自分に恋人を探してる女友達がいて、それを下らない女遊びをしてる男に紹介する人間が、この世にいると思うだろうか??
それにマスターが俺を本気で害だと思えば、直ぐに俺を出禁にするだろう。マスターにその決断ができないのはありえないから、若い女が味方する必要なんて無いのだ)
友子のお説教の後、紹子が俺のラインが“おじさん構文”だと言い出した。俺は少し傷付いたが、偶然ノートとペンを持ってたのでダメな所を教えても貰ってメモしようとした。
そしたら紹子は、「それイイヨ~♪イイヨ~♪」と少し変わった口調で言った。
後で分かったが、紹子は俺の行動を傷付いたのを隠すカモフラージュだと思ったらしく、嘲りを含んだ煽りを見せたのだった。
しかし、俺は本気でラインのダメ出しを求めていた。俺は頭の回転が悪いので、むしろそんなカモフラージュを一瞬で思いつける人間になりたい。ラインの正しいやり方の本はメルカリでも見つからないのだ。
親切にも、紹子と友子はラインのアドバイスをくれた。友子の「何か変だよ君」と言う言葉も付いてきた。ノートにアドバイスを走り書きしながら、ありがたい気持ちだった。
友子はマチアプをやってるらしく、メッセージ画面をチラッと見せて貰った。色んな男とやり取りをしていたので、「モテるんだなぁ」と言うと、「女はこんなもんよ」と非常に冷めた口調で言った。さっきまで敏腕弁護士の様に俺を批判してて、自信満々な性格に見えたのに意外だった。恋愛に対してシニカルな面を持っていたのかもしれない。マスターに対して男の愚痴をマシンガンの様に放っていた。
話す事が無くなったのでバーから帰る事にした。紹子と友子は楽しそうにマスターと話をしていた。以前にも、マスターの紹介した人達の間で些細な問題があったらしい。今回の件も彼等の新たな酒の肴になるのかなぁと思った。
紹子と友子に別れの挨拶をするとにこやかに返事をしてくれた。
それからはもうそのバーには行ってない。マスターに嫌われてしまったから。
以上でこの話もおしまい。俺の行為は紹子のプライドを傷付けてしまったかもしれない。だとしたら、俺の想像力の低さのせいで申し訳無いと思う。当時の俺は、他人から女の子を紹介されるにふさわしい男では無かった。どうもすみませんでした。
これを読んでる男性は女性に敬意を持って、女性は初対面でタメ口を使ってくる男は即切っちゃいましょう!!
めちゃくちゃ個人的なながーいエピソードなのに、読んでくれた人には大変感謝致します。
それではまたの機会に、ではでは。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?