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寛容 会場に読経の声が響く。 祐平は、遺影で微笑む寛人に自分の知らない別人の彼を感じる。 …寛人。お前、本当に死んだのかよ… 祐平の心の問いに答えはなく、葬儀社の会場係の声が彼の耳に届いた。 「御親族の皆様。ご焼香を順番にお願い致します」 焼香台の前に立つ親族たちの背中で寛人の遺影が見えなくなった。 * 「御親族の皆様。ご焼香を順番にお願い致します」 それまで床に視線を落として喪主席に座っていた開斗だが、葬儀員の声で顔を上げた。 彼の視
告白 体調不良を理由に長期休暇を取った開斗が出社をしなくなると、祐平に対する妙な噂話が社内で一気に広がり始めた。 そんな矢先のある日、祐平は若杉と飲んだ。 「島村と連絡は?」 「休暇届けのメールが最後です」 「メールってお前、一緒に暮らしてるだろう」 「彼とは別れました」 「いつ?」 「先週末です」 祐平、若杉をジッと見つめる。 「何だ?」 「ご存知だったんですか?」 「何が?」 「彼が寛人の息子だと」 若杉、少し間を置いて頷く。 「いつ頃からです?」