執筆者紹介②(松下一功)

ブランドデザイン研究所主宰
株式会社SKYPHLOSOPHY会長の松下一功です。

松下一功氏写真

企業のブランド戦略や広報戦略に、既に30年以上関わる筆者ですが、
この間、経営におけるブランディング及びマーケティング手法は大きく変容してきました。

今では経営コンサルタントとして、ブランド事業戦略に関わる私ですが、
キャリアのスタート時はグラフィックデザイナー。
時はバブル経済下、私の勤める会社も受注量は増える一方。
私は多くのメーカーや飲食店のブランドデザインを、
会社に寝泊まりしながら追求していました。

当時盛んに用いられたブランディング及びマーケティング手法に
CI(コーポレートアイデンティティ)VI(ビジュアルアイデンティティ)があります。
アイデンティティ(identity)は、「同一であること」「本人であること」といった意味を基本とする単語ですが、広告業界では「本人」あるいは「そのもの」であることの自他による確認と解され、主に他社、競合商品との差別化、特に「好ましいイメージを醸成する個性づくり」として活用されていました。

私の友人で、同じく広告マーケティング畑にいた、
とある優秀なプランナーが手がけたCIに「トマト銀行」があります。
山陽相互銀行から「トマト銀行」への行名変更と、愛らしいマーク、キャラクターで絶大なプロモーション効果を上げた有名な事例ですが、
実は同行とトマトには、取り立てて関連性はなく、
その意味でトマトを中心としたストーリーや哲学は、
周到に練り上げられた「戦略的アイデンティティ」であったのです。

この事例から分かるポイントは、あくまでも「自分がどう認知されるか?」
自分が何者なのか以上に、マーケットの反応が主体
な点です。

こうしたマーケティング広告全盛期、
私がでデザイナーとして関わった多くのCI/VIも、
基本は同様に「戦略的アイデンティティ構築」だったのです。


その後、技術力の飛躍的向上による機能や品質の高度化、
またインターネットの普及等による高度情報化の一途をたどった日本ですが、ブランディング&マーケティング手法も大きく変化していきます。

モノからコト(機能から体験)コトからココロ(体験から感動)の時代へ。
当時、華やかなプロモーションや大々的なキャンペーン告知がやや影を潜め
物事との本質を見極めようとする風潮の中、
企業は「本当の自我は何か」「事業活動の目的、使命は何か」を、
深く追求する
ようになります。

例えばスターバックスコーヒー。その価値はコーヒーの味ではなく、
「第三の場所(サードプレイス)」であったり、
ハードロックカフェの価値が料理では無いように、
「企業文化の確立」こそが、重要になっていきました。

この事象には、マーケティング全盛期とは異なる、大きなポイントがあります。
それが「インナーブランディング」(組織内ブランド意識向上活動)の重要性です。

仮に企業文化を声高らかに宣言し、広告しても、
働くスタッフや関係者が、実際に文化を創り上げていかなければ、
その目的が達成できないのは明らかです。

今日、弊社への依頼で多いのが、コアバリュー(根本価値)や
ビジョン・ミッション・アクションの策定ですが、
これこそはまさに、企業文化や事業意義を明確にし、
自分達の文化を創る、有効な施策
なのです。


そして今、ブランディング及びマーケティング手法が、
改めて変わろうとしています。
私は「共感ブランディング」の時代と定義しています。

事業体を主体とした縦組織では無く、人的ネットワークを広く持つ働き方に変わる中、
企業や事業が何で在るか以上に、自分は何のために生き働くのか?
つまり、自己確立をベースとした行動や消費が主体となりつつあるといわれています。
そして、組織やチームを構成する力が「共感」だと私は考えています。

では、その「共感」の正体は何で、これからの組織創りはどう在るべきなのか?

研修やセミナー講師仲間の間で「ティール組織」が話題となり、
心理学面でも、「人がなぜ協力し合うのか?」といったテーマが解き明かされる中、
アメーバ経営コンサルティングや組織コーチングで高い評価を得ている
渡邊佑氏と、この執筆を通じて明確化し、
本ロジックを深め続け、実践する行動を、「心本主義経営」と定義。
活動をここに、スタートさせたいと思います。

文責:松下一功

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