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フラメンコギター弦レビュー#1

新しく発売されたフラメンコギター弦を試奏用にいただいたのでレビューしてみようと思う。

今回紹介する3種の弦は、Solera Flamencaからリリースされた新商品。Solera Flamencaはフラメンコギタリストの間では有名なバルセロナのショップで、ギターの品揃えもさることながら、そこを訪れた著名ギタリストたちの試奏動画が数多くSNS上に上がっていて、個性の際立った演奏、また録音へのこだわりからもショップのクオリティの高さがうかがえる。

これらの弦は、SNS上でたくさんのスペイン人ギタリストが使用している様子を見ていたが、この度日本でも発売が開始されたとのことで、さっそく使用させてもらった。

まずは”acompañamiento"と"concierto"のシリーズ。

これは伴奏用とコンサート用(ソロ演奏用)と、用途を分けた弦で、これまでになかった発想だと思う。でも考えてみればフラメンコギターは、(漠然と、とはいえ)白=伴奏用 黒=コンサート用といった使い分けをされているし、僕自身も伴奏用とソロ用で弦高を変えるためにサドルを使い分けている。(ラスゲアードを中心にするか、単音弾きを中心にするかの違い。)だから、弦にも伴奏用、ソロ用があるのも理にかなっていると思う。

"acompañamiento"

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弾いた瞬間に、まず弦の感触が太いと感じた。(チャートを見てみると微妙に各弦の直径が少し太目に作られている。)そしてその太さは音色にもそのまま出ている。親指で弾いた低音に、シギリージャやソレアに欠かせない野太さがある。それでいて高音もしっかり前に出てくる。
びっくりしたのはラスゲアードをした時だった。複数の弦をかき鳴らすと、ギターによって各弦の分離が良い場合と音が一つの塊になる場合があるが、この弦は強烈に後者。まるで6本の弦が束ねられて1本の太い弦になったかのように感じた。弾力性が豊かなので、その太い束がまるでムチのようにしなり、弾くフレーズにグルーブのうねりを加えてくれる。初めての感覚だった。

"concierto"

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コンシエルト=ソロ演奏 と名付けるからには、ラスゲアードよりも単音弾きに照準が当てられているはず。この弦は期待を裏切らなかった。単音の艶、伸び、そして輝き。最近の主流のコーティング感はありつつも、生々しさもしっかりと感じられる。そしてラスゲアードも、クラシック弦に時々見られるような、弦が暴れてしまう感じもない。フラメンコ弦の中でもクラシック方向に寄りつつ、それでもあくまでもフラメンコ弦という、ギリギリのところにうまく収まっていて、非常に均整のとれたバランスの良さを感じた。また、音量感も申し分なかった。
小さなことを付け加えると、弦の長さに無駄が少ないのも好感度が高かった。フラメンコではヘッド側に余った弦を輪にして巻く習慣があるせいか、必要以上に長い弦もよく見られるが、エコの概念からすると時代に逆行している印象もあったので。


"Alma by Vicente Amigo"

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そして、なんと、あのビセンテ・アミーゴが初プロデュースしたという弦、Alma。
豪華なパッケージのデザインも相まって、SNSを賑わせていた注目の新アイテムだ。あの完璧主義のビセンテの名を冠する以上は、中途半端なものであるはずがないが・・・。
弾いた瞬間、「ビセンテだ!」と思ってしまった。
まずはアタック感。何を弾いてもフラメンコらしい、というよりもビセンテらしいアタック感がしっかり出る。そして音の粒が一つずつ、クリスタルな玉になって飛んでいく。
さらに低音のメタリック感。ギラリと刃を剥いたようなキレの良さ。
フレットへのビビリも込みで計算されていると思うので、弦高は低めに設定した方がよりビセンテらしい雰囲気が出るだろう。
全体にはパリッとしつつ、決してドライではなく、むしろウェットな印象を受けるのが不思議だった。
とにかくちょっと笑ってしまうくらいビセンテの音だった。
弦だけでよくぞここまでビセンテを表現できたな・・というのが正直な感想だ。

Solera Flamencaのサイトを見ると、老舗メーカーのルシエールが弦の生産をやめてしまったことをきっかけに、よりニーズに合った弦を自分たちで作ろうと思い立ったとのこと。これら3種類の弦は、これまで試したどんな弦とも違っていて、それぞれの非常に明確なコンセプトを見事に体現化している。

日本での取扱店はまだ多くないようだが、
Spain Guitar Online Shop
にて販売中、とのことです。



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