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いつも枕元に置いている

読み終えたくないと思う本に出会えるのは幸せなことだ。

毎日、何かしら本を開くようにしている。長編の続きであったり、アンソロジーの一編だったり、読みかけの新書だったり、その時の気分で。

しかし、どれも読む時間が取れなかったり、じっくり読む気分が起こらない日もある。

そんな日でも大丈夫な本がいくつかある。なかでも最近は、小川洋子さんのエッセイ『遠慮深いうたた寝』を拠りどころにしている。

枕元に常に置いてある。

一編は2〜3ページしかなく短時間で読める。内容は著者が見聞きしたことや日常の風景、本の話題など。

難しい言葉はないのだが、やわらかで端正な、澄んだ深みを感じる文章に、気づけば背すじがしゃんとなる。こころが正されると言ったら言い過ぎだろうか。言葉の歪みを矯正してもらえるような気持ちになる。

一遍ごとに、本を閉じて余韻を味わいたくなる。

それぞれのエッセイを読み終えた後、言葉にすると「すごいなぁ」くらいしか出てこないのだが、そんな感想で十分なのかもしれない。


本当に少しずつ、一遍ずつ読み進めている。すぐに読み終えるのが、もったいなくて。(※決して、まだ読了していないことの言い訳ではない。)