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隣人の影

昨日、すっかり日が暮れた頃、北側の小さな窓に節足動物らしき影がチラチラとゆれていた。

けっこうな、不気味さである。

街灯に照らされ、うっすらと見える腹の膨らみといくつかの脚。おそらく糸にぶら下がっているのだろう、視界の端でユラユラゆれる影が怪しかった。

しかし、自分の姿をして人間に気味悪く感じさせているなんて、当のクモからすれば大きなお世話、「知らんがな」だろう。彼らは自分が生きるために、夜な夜な身を粉にして、いや身から糸を出して、定置網を張っているだけだ。

すまんな、クモよ。キミは悪くない。


今朝、明るくなった頃にはもう窓からその姿は見えなかった。窓を開けてクモの巣を払ったが、おそらく隅っこの方で隠れていたのだろう。

今夜また、窓越しに彼が、ゆれながらあらわれた。


長い付き合いになるのだろうか。