印税という魅惑の言葉

爆風スランプの『無理だ!』のなかに

こんなレコード出したって(無理だ)
ベストテンには出られない(無理だ)
印税生活できますか?(無理だ)

という歌詞がある。

たぶん印税という言葉を初めて聞いた瞬間だった。「税」ってつくのに収入なんだ、自分の作った音楽や本なんかが売れると「印税」という収入が入るのだと理解した。

「印税生活」って、なんだか憧れる。知らないとなおさら素敵なもののように妄想してしまう。不労所得のような、どことなく悠々自適な感じ。

なお、爆風スランプは、ザ・ベストテンでちゃっかりこの歌を歌っていた。


ずいぶんたって、一度だけ「印税」をもらう機会があった。

たくさんの著者がいる専門書で、共著者としてちょこっとだけ文章を載せる機会があったのだ。すでに専門家不在の分野で、過去の研究の紹介について、たまたまその後継の部署にいたことで回ってきた依頼だった。

増刷するほど出回る本ではなく、一度だけ印税収入通知が来た。

「印税」って文字を見ただけで、無性にうれしくなった。


しかし、その額、数百円。

「印税」って売れた分だけ手元に入ってくるので、ほとんど儲からないのだ。

あの原稿、結構時間がかかったんだけど、時給100円にすら遙かに届いていません。一回いくらとかで原稿料をもらった方が、よほどマシだろう。


「印税生活」なんてただ事ではない、果てしなく大変だと、つくづく思った。


敬愛する田中泰延さんが、1,500円の本が1冊売れたとして、著者の懐に入るのは100円に満たないと言っていた。10万部以上のベストセラーを毎年出さないと、社会人時代の年収には及ばないとか。怖い、震える。


無理だわ。印税生活。爆風さん、私は印税生活できません。


私は印税を払う方で良い。印税宣言。本は大事に読もう。なるべく新刊を定価で買おう。できる範囲で、かまわないから。