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縦に読みたい

浅生鴨さん編集の同人誌『異人と同人Ⅱ・雨は五分後にやんで』を読んで、確信した。

ウェブで読んだことのある文章が、別物に感じる。


幡野広志さんの『なんで僕に聞くんだろう。』を読んだ時にも感じていた。

ほとんど全ての内容は、Cakesでの連載で見ていたはずなのに、紙の本で読む印象はずいぶん違うように感じた。

①まず、横書きと縦書きでの印象の違い。

横書きのイメージは、学術誌や英語教材、ウェブ記事。

縦書きになっただけで、文芸作品のような香りがしてくる。

「はたのひろし」という名の余命を悟った世俗的な(実は徳の高い)お坊さんが、市井の人びとの悩みに気ままに応え導く物語のような、小説であるかのように読んでいた。実際の人生相談ではなく、創作物のように。

そういう読み方でも、素晴らしい読み物として読めてしまう。ふと現実の悩みと生身の解答なんだと思い返した瞬間に、震えましたが。

浅生鴨さんが何かで縦書きと横書きで印象が変わると書いていたが、なるほどと思っている。


②もうひとつ、紙の方がじっくり読み込める。

ウェブ記事はタブレットを使って読むことが多いが、ササっと流し読む癖があるようで、概要だけで細かい文言はあまり読めていないようだ。

紙の本では、解答を読みながら、さて質問の文言はどうだっけと、前のページをめくって行き来するのが容易で、この点、ストレスがないことにも気づいた。

やっぱり紙の本、良いよ。


③せっかくなので、『なんで僕に聞くんだろう』の感想を。

この本は、一般の方からの質問に対する回答、人生相談をまとめた本である。

質問ひとつを読むたび中断し、もし私がこういう相談を受けたら何を返せるだろうと考える。その後、実際の幡野さんの解答に進む、後半はこのような読み方をしてみた。

いかに回答をすることが難しいことか。そして脱帽、いや帽子どころか全毛を抜いても、そんなアドバイスは私からは出てこない。ハッとさせられることの連続。感心を通り越して畏怖を覚えた。

真摯で実直で、どれだけの体験と思考を積み重ねてきたんだろうと、気が遠くなる。


幡野広志さんという敬愛すべきひとが実在し、同時代を生き、その作品をリアルタイムで経験できる喜びを噛み締めよう。


しっかし、美味しそうなんだよなぁ、釧路のパフェ。必ず食べに行く。

なんで他人の食べものって美味しそうに見えるんだろう。


※冒頭の『異人と同人Ⅱ』はこちら