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2021年に読んだ本の振り返り

2021年の読書を振り返る。新刊本は先に整理したので、今回は既刊本も含めて主にどのような経過で本の連鎖が生じたかを思い出してみる。


○歴史への誘い

「海神の子」(川越宗一)はエキサイティングだった。「倭寇」という言葉は中学歴史で知っていたが、その実情や周辺のできごとについては全く知らなかった。同時代の物語をもっと読みたくて、「旋風に告げよ(鄭成功)」(陳舜臣)「韃靼疾風録」(司馬遼太郎)へ。さらに中国の物語に順を追って触れようと「小説十八史略」(陳舜臣)。どれも素晴らしい読み物だった。陳舜臣の書籍に入手不可能なものが多くてちょっと悲しい。学生の頃にはたくさんあったのになぁ。

「オリガ・モリソヴナの反語法」(米原万里)でソ連の一面に触れた。ジッドの「ソヴィエト旅行記」を思い出した。その後まもなく読んだレイさんのnoteにも刺激され、プチ・ソ連(ロシア)~モンゴルブーム到来(といっても本を買うだけであまり読めていないのだが)。司馬遼太郎の「ロシアについて」で近代日本史とも関係が深いことを再認識し、このあたりで上記「韃靼疾風録」にも手を伸ばした。積ん読がたくさんある(渋滞している)ので楽しみ(ということにしておく)。


○医療(職業)文学

感染症について、西浦教授の著書で疫学の考え方に触れ、「疫病と世界史」(マクニール)で俯瞰し、小説「エピデミック」(川端裕人)を通じて疫学のエッセンスを感覚的に知った。「傷痕のメッセージ」(知念実希人)では病理医が身近に。いずれも科学的基礎がしっかりしていて、充実した読みごたえだった。

実際の学問や仕事を理解することは容易ではない。これを小説という形で知ってもらえるならば、それはとても効率が良いことかもしれない。もちろんその小説が面白いことが大前提だ。我が農業試験場も題材にならないかと考えてみたが、、、地味だな。


○文化への誘い

『世阿弥最後の花』(藤沢周)は、能を全く知らない私でも、その精神世界を垣間見た気分になった。技術を極めた上で、さらに自意識を超えたところに本当の芸がある、その精神性は落語など他の伝統芸能や芸術にも通じるだろう。世阿弥自身の著書も読んでみようと『すらすら読める風姿花伝』(林望)も拝読、なんと論理的であることか。なお、岩波文庫の『風姿花伝』が容易に理解できそうになかったのでスルーしたのはナイショだ。


○初めましての巨匠たち

2021年に初めて読んだ方々。出会えて良かった北大路公子米沢穂信中島らも米原万里

「年月日」(閻連科)は読んだ直後にはピンとこなかったのだが、なぜかその情景は忘れられなかった。7~8月に記録的な雨不足となった頃、本書を思い出してザワっとした。

「モモ」(エンデ)も初めて読んだ。これはいい。名作。

そして、2021年に読んだ本で最も衝撃を受けたのは、カミュの「異邦人」だった。頭の中に浮かんだ映像が未だに心に残っている。



まだまだあったはずだけど、思い出したところまで。

本の話って楽しい。