『用もないのに』奥田英朗
薄手の文庫なのに、読み終えるのに8年かかってしまった。
すでに売れっ子となった著者が、出版社のオファーで記事と趣味をかねて、野球を見に行ったり、ライブに行ったり、お遍路体験をしたり、その合間にビール飲んだりという、ゆったりした紀行文?である。
気楽に読めるというのが何より良いのだが、なぜだかしばらくほったらかしていて、引っ越し後にみつけてようやく読み終えた。不思議と、再開してからの方がグイグイ読めた。
それは良いとして、ひとつ、妙に頷かされた一文があった。
阪神の「六甲おろし」を除いて、球団の応援歌はどれもひどい。
これには「激しく同意」である。
今は日本ハムファイターズのファンだけど、あの「ファイターズ賛歌」って、歌うのなんか恥ずかしいんだよなぁ。子供っぽいというか。
私のプロ野球ファン暦のスタートは、ドラゴンズだったのだけど、「燃えよドラゴンズ」もなんか歌うのが気恥ずかしい。選手の名前が入っているのもちょっと。
ドラゴンズファンの奥田氏も
はっきりと田舎臭い
と断言。手厳しい。
あと、ライオンズが優勝したときは、今はなき旭川の西武デパートで松崎しげるの「うぉぅうぉぅうぉぅラーイオーン」、ホークスが優勝したときはダイエーで「若ターカー軍ー団ー」が延々と流れ続けていて、げんなりした記憶がある。普通の歌謡曲の方がいいのになぁって。
しかし、「六甲おろし」だけは、別格だ。朝ドラのモデルになった古関裕而の曲、やっぱりすごい。ファンじゃないけど、心の残るし、みんなで大声で歌ったら気持ちいいんだろうな。そこに入っていく勇気はないけれど。
奥田氏はこうも言っている。
既成の歌でよいではないか。横浜ベイスターズなら「勝手にシンドバッド」、楽天イーグルスなら「青葉城恋唄」でいいのだ。
これは大賛成。というか、サザンだなんて横浜うらやましすぎる。
ファイターズはどうだ。北海道出身の有名歌手はいっぱいいるじゃないか。松山千春、北島三郎、細川たかし、中島みゆき、GLAY、ドリカム、ジュディマリ、、、
いや、やっぱこれだ。
さて、最後まで読み終えて、50歳直前で書かれたエッセイであることを知った。今の自分とほぼ同年齢である。
昨年から今年にかけて読んだ本で、著者が50前後であるものがいくつもあって、不思議な気持ちでいる。