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「さわや」

直木賞の発表があった。受賞された西条奈加さん、ノミネートの時点で唯一名を知っていた。一冊うちに積んであるのだ。たしか、盛岡のさわや書店で買ったのではなかったか。

ずいぶん前になるが、盛岡出張の機会が何度かあり、そのたびに「さわや書店」に行くのが楽しみだった。あと、福田パン。

盛岡駅に併設されているフェザン店に立ち寄ったのが最初だった。手書きのポップが乱立し、平積みされている本も他の書店とは明らかに違っていて、なんと面白い本屋だと思った。全国的に有名な書店だというのは後で知った。時間があれば、駅から20分くらい歩いたところにある本店にも行った。さわや書店で知った本がたくさんある。

野口卓『軍鶏侍』、辻堂魁『風の市兵衛』、高田郁『澪つくし料理帳』、畠山健二『本所おけら長屋』、相場秀雄『震える牛』、、、たぶんすぐに思い出せないけどまだまだある。出張に行くたび、スーツケースを重たくして帰ったものだ。

西条奈加さんの『四色の藍』も、さわや書店のポップにつられて買った本だ。

いま目の前の書棚に背表紙を見せて収まっている。さわや書店で激押ししていた作家さんだから、絶対面白いということはインプットされていた。ただし、まだ読んでいない。読んでいないのだ。


すっかり盛岡に行く機会がなくなってしまったので、ちょっと淋しい。出張は何の用事だったか記憶が曖昧だけど、さわや書店とカトルカールはよく覚えている。あと、福田パン。


さわや書店員だったという田口さんの本を、地元の書店で見かけて嬉しくてすぐ買った。

ただし、これも、まだ読んでいない。

「買うまでが読書」という言葉をSNSで目にして、救われている。



そうそう、「さわや」といえば、隣町に同じ名前のパン屋さんがある。地元の小麦でつくった食パンが美味しい。弾力が強くてしっとりしていて美味しいのだ。巷の高級食パンよりも好き。福田パンと比べたら、、、迷う。

私の人生で「さわや」という名前のお店は、全部素晴らしい、ということになっている。なお、n=2。