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なぜ「知的」な人が打つ判断をしてしまうのか?〜バイアスの避け方

 こんなツイートとブログを発見しました。

 「情報を自分の目で見よう」は完全に同意するところです。

 その下の「おばかな反〇〇チン」に関してはどうでしょう?同じグラフを見ても、私と永江氏では見方が全く違います。

 実は永江氏はドクチンが始まる前は自粛や過剰対策に反対していて、その視点には私も一目置いていた方でした。

 特にこちら👇の情報格差の要因が、押しつけられる情報を受け取るだけのプッシュ型(テレビなど)と自分から情報を取りにいくプル型(ネットなど)という情報源の違いによるという理論には感心しました。

 ところがドクチンが始まるとプル型とは自分からドクチン予約を取りに行く人のことになり、全く話が変わってしまいました。👇(その前に受けるかどうか判断する情報はプルしないの?)

 永江氏に限らず、私がその知性に一目置いていた人々が簡単にドクチンを打つ選択をしてしまったり、ドクチンを推奨してしまっている例はいくつもあります。

 有名なところでは、感染症の専門家である岩田健太郎氏。その著書『感染症は実在しない』、感染症も病気も実在しない概念であると喝破するこの本は、コ○ナ騒動のからくりを前もって暴いた名著であったはず。

 その趣旨はこちらの漫画と被りさえします。

 ところがご存知の通り、岩田氏はクルーズ船以来恐怖煽りに奔走し、その主張も論理的一貫性がなくジキルとハイドとさえ言われました。(WHOやファウチの言説もそうでしたね)

 今日は、どうして高い「知性」をもったはずの人々がこうなってしまうのか?永江氏のブログを参考に考えてみたいと思います。

(私が「正しい」とは限りません。ぜひ読者の皆様も一緒に考えてみてください)

①森を見て木を見ず(早合点)

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 まず永江氏は「世界の感染者数のデータがきれいな曲線を描いている」から「〇〇チンで感染爆発はデマ」と断定します。しかし私にはこの議論は乱暴すぎるように思われます。ドクチンは接種時期も接種率も各国まちまちであるため、世界の感染者数の平均のグラフでは接種の影響がわかりにくくなります。(世界平均でも接種始まってから増えてるように私には見えます。「曲線のきれいさ」との関係はわかりませんが)

 世界平均では昨年多くの感染者を出した欧米昨年は感染者が少なく今年ドクチンが始まってから感染者が増えたアジア・アフリカ諸国も十把一絡げになるからです。

 接種時期がはっきりしている各国データを一つ一つ見れば、日本をはじめそれまで感染者数が少なかった国々で接種開始と感染者数の増加に相関があることは明らかです。

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 以前、他にも多くの例があることを👇で説明しました。

 ただこれも以前👇ご説明したように、感染者の波は、波であるが故にドクチンが原因かどうかに関係なく上がれば下がります。

 ドクチン接種者がウイルスそのものをスーパースプレッドすることが明らかになったことを実証するように、各国でドクチン接種開始とともに多くの人が感染して高い山ができていますが、その後はやはり下がります。接種が続いても、多くの人がすでに感染済みになって少なくとも一定期間は新規感染者と数えられなくなるからです。世界平均では各国の変動はわかりにくくなってしまいます。

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 同じ記事で世界平均の波と日本の波のピークが同期していることもお話ししたように、確かに世界の感染者数の波はドクチン以外の地球規模の要因(季節)が大きいのですが、だからと言って各国の感染者数とドクチン接種が関係ないとは言えないでしょう。

 頭の良い人は早く分かったと思いたがる傾向があるので、全体をパッと見て自分が信じた理論と全体があっていればそれで納得してしまい、細かいところまで見ない傾向があるかもしれません。

 森を見て木を見ず、ということにならないよう、丁寧に事実を見ていく必要があるでしょう。

②リンゴとオレンジ(比較対象を間違える)

 永江氏は次に、ドイツの感染者数と死者数のグラフを提示して、

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 「〇〇チン効果で死者が少なく抑えられた」としています。どこを見て何と何を比較して「少なく」とおっしゃっているのかわからないのですが、7月からの波で感染者数と比較して死者数があまり増えていないことをおっしゃっているのかと思われます。あるいは、ドクチン開始前の1月ピークの死者数の波と比較して7月からの波で死者数が少ないことを言っているのかもしれません。

 永江氏は昨年8月にはこんな記事👇を書かれていました。

 感染者が増えても死者は増えない、いわゆるケースデミックを指摘していたのです。もちろんこの時まだドクチンはありませんから、「〇〇チン効果で」とは言えません。

 冬と夏では気温や湿度も人の免疫力も大きく異なるので、呼吸器感染症の死者数に差が出ます。例えば冬のインフルエンザの死者数は夏のインフルエンザの死者数より多いのは誰でも知るところです。

 夏の死者数がドクチンによって増えたか減ったかを言いたいなら、同じ季節の死者数同士を比べなくてはいけません。

 ドイツの7月からの人口100万人あたり死者数は、昨年と比べれば5倍以上に増えています。

 (データはこちらから)

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 これでどうして「〇〇チン効果で死者が少なく抑えられた」と言えるでしょうか? (皮肉?)

 永江氏は感染者の季節的な波も理解している。そして夏は感染者数が増えても死者数が少なくなることも理解している。

 それでも今年の夏の感染者数が冬に比べて(?)少ないのはドクチンの効果だと考えてしまうのです。

 次にフランスについても下👇のグラフから「同様に低く抑えられています」と言っています。

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 しかしやはり夏同士を比べれば、今年はドクチンがなかった昨年より感染者数・死者数ともに増えています。

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 感染者の増え方に比べれば死者数の増加はわずかだから致死率が下がってるはずだ!(それが〇〇チンの効果だ!)と思う人もいるかもしれませんが(感染者増えてる時点でドクチン逆効果じゃ...)、致死率のデータ👇を見ると

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 残念、致死率は昨年9月からしか出ていませんが、ほとんど変わっていません。

 そして永江氏は日本のグラフを示して「デルタ株によってファクターXが無効化された」と言うのですが、

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 それはまさにドクチン接種を契機としていたことには気づかないようです。

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 さらに「イギリス・イタリア・スペインなども死者数は非常に少なかった。〇〇チン効果だ。自分で見ればわかる」と言うので自分で見てみましょう。

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 3国ともやはり夏の死者数は、今年の方が多いのです。

 比較対象を間違えると、増えた・減ったの意味が全く変わってしまいます。

 比べようもないもの同士を比べてしまうことを、英語ではよく「apples and oranges」(リンゴとオレンジを比べるようなもの)と言います。

 比較するときはその対象が妥当かをよく吟味しなくてはなりません。(今年感染者が多いのはデルタ株の感染力が強いからだ!という方はこちら👇)

③チェリーピッキング(都合の良い例だけを挙げる)

ルーマニアの感染者増加はドクチン接種率が低いせいか?

 永江氏は次にルーマニアのグラフを示して、「ルーマニアの接種率はヨーロッパ最低」であり、死者が増加しているのはそのためとしています。

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 ところが、実はルーマニアの隣国と比較するとルーマニアの接種率は最低ではなく4人に1人以上の人が2回接種していたことがわかります。(「ヨーロッパ最低」はデマでした)

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 ルーマニアの接種率は周辺国の真ん中くらいであり、そして今の死者数も真ん中くらい。より接種率が高いセルビアの方が今の死者が多いのです。

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 注目すべきは、周辺国の中で最も接種率の高いハンガリーです。

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 ハンガリーは4月と5月に急速接種して、6月はじめにパッタリと接種をやめてしまった?のか接種数が報告されなくなりました

 その結果、4月13日にピークを持つ周辺国で最多の死者を出し、接種を中止?して以降、死者数はルーマニア周辺国の中で最低になりました。

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 それでも今でも人口あたり累積死者数が最も多いのは、接種率が最も高いハンガリーです。

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 コ○ナ死に限らない超過死亡を見ると、ドクチンが始まるまで、ハンガリーとルーマニアの超過死亡はほぼぴったり一致しています。ドクチンが始まると4月のドクチン接種が約2倍のハンガリーは、約2倍の超過死亡を出しました。

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 さて、ドクチンの効果とは何だったのでしょうか?

 自分の考えに都合の良い例だけを取り上げてしまうチェリーピッキング(おいしいとこだけつまむ)は確証バイアスの典型です。

 ところで、永江氏はなぜルーマニアを取り上げ、接種率がヨーロッパ最低と思ってしまったのでしょうか?おそらくこういうニュースを見たのでしょう。

 『EU最下位「圏」』を「ヨーロッパ最低」と思っちゃったんでしょう。これも頭の良い人の早合点と言えるかと思います。

 そしてこのニュース自体、そうやってルーマニアの低接種率を煽っておいて、ルーマニアの感染者・死者が増えたら「ほら見たことか!〇〇チンを打たないから!」と言うために書かれたある意味フェイクニュースと言えるかも知れません。

 早合点しやすい頭の良い人ほど、そうした情報にひっかかりやすいのかも知れません。私もルーマニア国民が接種拒否のニュースは見て喜んでしまいました。

 ところがそのニュースの後、示し合わせたようにルーマニアの感染者・死者が増え始めたのです。(よく見ると、元ニュースが出た8月31日以前から、次の波が始まっていました)

 その後ルーマニアで死者が増えたので、ドクチンを拒否したせいだ!と槍玉にあげやすかったのでしょう。しかしもっと接種率が高い隣国セルビアの方が死者が増えていたのでした。どうせチェリーピッキングするなら、より接種率が低くて死者が増えてるブルガリアをつまんだ方が良かったのに、まぁそれなら接種率が低くて死者が少ないモルドバはどうよ?って話になります。ではその国で昨年の夏と今年の夏を比べれば...すべての国で今年の方が死者が増えているのでした。)

ドクチンが死者を増やした可能性は一切考えない。

 次に永江氏の視点はアジアに移ります。マレーシアにふれ「接種率はかなり高いが中国製で効果がイマイチ」としています。

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 え?「イマイチ」どころの話じゃないでしょう?明らかに接種開始から感染者も死者も大幅に増えてるじゃないですか?接種開始前の死者数は1年間で約1000人、今では2万4千人超。どうしてこれで逆効果である可能性を考えないのか不思議です。

 きっと「〇〇チンが悪いなんてありえない」と脳が拒否するのでしょうね。

 そしてシンガポールのコ○ナ死者が7日平均ゼロ!と喜ぶのですが、シンガポールは日本同様に接種開始から超過死亡が増えているので、ドクチンにメリットがあったとは言えません(コ○ナじゃなきゃ死んでもいい人以外は)。ただ接種者の死はコ○ナ死とカウントしなくなっただけかもしれません

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ピークアウトがドクチン効果?

 最後はイスラエル。

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 永江氏は今までと違って死者数を出さず感染者数のグラフだけ出して「『〇〇チンのせいで感染拡大したガー』と反ワクにいわれていたけどしっかりピークアウトしました」と大喜び。ついに「ピークアウト」がドクチンの効果にされてしまいました。

 ピークアウトなんてドクチン始まる前から何回もしてます。接種開始前の方がよっぽど低いピークで。3回目接種が始まって、過去最大のピークが出たのです。

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 死者数も接種開始してから増えました。 

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 11月までにハイリスク層に接種が終了して重症者が減るのが理想としてますが、もともと日本はイスラエルよりずっと死者少ないんですよね。逆転したのは高齢者に接種が盛んだった今年5月前後だけです。

 どこをどう見たら

「いまだにイスラエルがなんとか言ってるおばかな反〇〇チン」

 と言えるのでしょうか?(誰か教えてください。)

 そしてなぜか永江氏は最後に始皇帝の話をします。

 始皇帝と言えば、建設を命じて未完に終わった未完の大宮殿『阿房宮』は「アホ」の語源となり、その死後に宦官趙高が鹿を馬だと言って2代目皇帝に献上し、その権勢で周囲に認めさせた故事は「バカ」の語源となったそうです。

 ご自身でもアホかバカなことを言ってるのは、きっと潜在意識では分かっていらっしゃるかな...と思いました。

 それなのにどうしてここまでドクチンが有効であることにこだわるのでしょうか?

 要因を推察してみます。

1 乱暴な議論→確証バイアス

 永江氏のブログから「頭の良さそうな」人ほど自分の思考に疑いを持たず早合点で乱暴な議論をしてしまい、その結果として確証バイアスが強まることが窺えたのではないかと思います。

 そうした人はすぐ異論を唱える人を「バカ」とか「〇〇派」と決めつけます。そして議論の内容によらず相手は「バカ」だから「〇〇派」だからわからないのだと言って本質的な議論から逃げます。その上からの物言いは、本当は本質的な議論では勝てないことを知っているからかも。

 自分が確証バイアスにハマっていないか確認するには、逆の立場からデータを見てみることです。

 先ほどの例で見れば、私は永江氏のブログ以前から、接種後に死者が減ったシンガポールや、接種後に死者が(一旦激増しながらも)減ったハンガリーに注目していました。自説に都合の悪いデータを無視するのではなく、あえて注目するのです。

 そうすると、シンガポールは超過死亡が増えていたり、ハンガリーは接種報告を中止していたことがわかったりします。

 あくまでも事実は認めつつ、論理はそこから構築しなくてはなりません。

2 プライドや立場→言えることが限られる

 自分が一度主張したことを撤回するのはプライドが許さない人もいます。特に自分が「反〇〇チン」とレッテル貼りして蔑んでしまった相手の主張に負けを認めるのは難しそうです。

 また政府や公的機関などいわゆる権力側はドクチン推しであり、疑問を挟むだけでも反逆者のようにに扱われる昨今、そちら側に与するのは自分の立場を危うくするという危惧もあるでしょう。

 童話『裸の王様』で「王様は裸だ!」と言えたのは童話では子ども、原本では黒人の召使、つまり立場のない人でした。立場のある人は皆、目の前の現実に口をつぐんだのです。

3 他の解決策を無視→利益相反(お金の支配)を疑う

 あとは御用学者をはじめ、ホリ○モン、ひ○ゆきなど、お金に支配された人々はスポンサーへの利益相反になるため、ドクチンを否定したくてもできないと考えられます。

 ドイツ車のCMに出ている人が、日本車を公けに褒めるわけにはいきません。

 何があってもスポンサーの製品を褒め、それ以外にどんなにいい商品があっても無視しなければ下手をすると契約違反で訴えられます。

 スポンサー製品がどんな欠陥品でもお金をもらったら売り込むしかないのです。

 相手がお金の支配でものを言っているかどうかは、他の解決策を認められるかどうかでわかります。もしお金の支配なく問題解決に最善の方法を探しているのなら、より良い解決策を無視することはあり得ないからです。

 ドクチン推しの人のほとんどは絶対に他の解決策を認めません。ビタミンDもBCGも、ヒドロキシクロロキンやイベルメクチンも完全無視です。

 それは問題を解決したいのではなく、自分の利益になる商品を売り付けたいだけの人の特徴です。

 医師のほとんどにとっても、自分に大きな収入をくれる商品であるドクチンと競合するあらゆる解決策は不利益です。なんなら収入源であるコ○ナに(他の病気にも)解決してもらっては困るのです。 

 

事実をそのまま受け取ることは誰にとってもなかなか難しいものです。

 以上、3つの要因を見てみると、まちがってしまう理由は結局、『志』の問題にあるように思われます。

 自分の立場やお金など、問題解決そのものとは関係のないものを求めている人には、事実は曲がって見えてしまうようです。

 「知的な」人というのは、その知性ゆえに誘惑も多く『志』を見失いやすいのかもしれません。

 相手は何を志して(何を目的として)話しているのか?そういう志本主義的視点を持って相手の話を聴くと、聴こえ方が変わるかもしれません。

 「情報を自分の目で見よう」は良いのですが、目の前にバーチャルリアリティをかぶっていたら現実は見えませんからね。


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