子宮頸がんにかからない方法5 血糖値を上げすぎない


前回はダイエットするなって言ったのに!
今度は食べすぎるなっての?
と思われるかもしれません。
しっかり食べて栄養状態を良くすることは、必ずしも血糖値を上げることではありません。


また研究をご紹介しましょう。


参考1 )血糖値レベルと子宮頸部悪性新生物の関係
Relationship Between Plasma Glucose Levels and Malignant Uterine Cervical Neoplasias


 子宮頸がんと診断された女性の診断時のステージ(進行度)と血糖値の関係を調査したところ、進行度の高い(予後の悪い)人々ほど血糖値が高い傾向があったということです。


参考2 )糖負荷と癌の関係:メタアナリシス
Glycemic index, glycemic load, and cancer risk: a meta-analysis


 では、特に大腸癌と子宮頸癌で、血糖値を上げる食事でリスクが高まることが示されました。
 以前から、癌細胞は糖をエネルギー源としており正常細胞より何倍もブドウ糖を取り込みやすいことがわかっています。
 癌細胞が酸素がなくてもブドウ糖を分解して生きる現象は、発見したノーベル賞受賞者のワールブルク氏にちなんでワールブルク効果と呼ばれます。
 癌細胞のブドウ糖を取り込む特徴を利用した検査がPETです。
 つまり、ブドウ糖が多いほど癌細胞ができやすく増えやすいということになります。


 実はこれに関して、私は痛恨の経験があります。
 まだ普通(?)の外科医として働いていた頃、がん患者の術後に高カロリー輸液を行うことが推奨されました。
 術後の回復が早まると言われたのです。
 NST(栄養サポートチーム)と呼ばれる専用の研修を受けたチームを立ち上げて栄養指導を行うと、毎週診療報酬が加算される仕組みです。
 その指導に従って実際に高カロリー輸液を行うと、私の患者さんたちは回復が早まるのではなく癌の転移再発が早まりました
 これは統計をとったわけではなくあくまで私の実感に過ぎませんが、それまでには経験したことのない再発と進行の速さでした。
 ワールブルク効果を考えれば、術後でたいして運動もできない人にブドウ糖たっぷりの高カロリー輸液を与えれば癌細胞の増殖を助長することは理にかなっています。
 NSTは栄養管理の研修を受けたチームですが、その研修内容が糖質中心のカロリー栄養学に基づいています。
 もともと高カロリー輸液をせずとも、入院すると急に悪化する癌患者は珍しくありません
 手術や抗がん剤のストレスはもちろんですが、日光を浴びずビタミンDが低下しやすいこと、運動しにくくなること、そして、カロリー控えめ糖質中心の病院食が、その原因として考えられます。


 どうして悪くなることが「正しい」とされ、診療報酬が加算されるのか?
 人が流す情報の裏には、誰かの利益があります。
 テレビでもネットでも無数のCMはあなたのためではなく、スポンサーの利益のために流されます。

 ほとんどの「正しい」は
 ほとんど「ただ恣意」


 なのです。


 私も「正しい」に乗っかって、多くの患者さんに不利益なことをしてしまったのですが、そもそも目的がその人を助けることであれば、助けられなかったことは何かが間違っていると気づくはずです。

 
 権威や何かが「正しい」と決めたのだから間違いはない、とにかく診療報酬が加算されるんだからいいじゃない、従わないと逆に怠慢と罰せられる、村八分にされる。
 そうした仕組みの中では、誰も間違いに気づきません。気づいたとしても言えません。
 患者はムダに苦しみ、医療関係者はムダに疲弊し、国や自治体はムダに財政破綻へと向かいます
 それは癌よりずっと恐ろしいことです。


 おっと、いけない!子宮頸がんの話にもどります。
 癌細胞はブドウ糖をエネルギーにしているのですから、逆に考えれば、過剰なブドウ糖がなければ進行が遅くなり、消えやすくなるのです。
 すると、癌細胞とは、そもそも余ったブドウ糖を処理するためにいるのではないか?とさえ考えられます。
 生物とは、自分の状態を揺らぎながら一定に保つ存在です。(福岡伸一氏に言わせれば「動的平衡」です)
 平衡を保つには、どんな物質であれエネルギーであれ、入れたら出さなくてはなりません。
 ブドウ糖という物質は、エネルギーとして使うか、体脂肪として貯め込むか、尿に排泄するか、ということになります。
 このうち、糖を尿に排泄するのは(糖尿)、大量の水を必要とし、腎臓もダメージを受けます。
 体脂肪として貯め込むと肥満になりますが、これも過ぎれば負担が大きいため、身体は脂肪をため込むホルモンであるインスリンを効きにくくしてセーブします。(インスリン抵抗性)
 それでも余り過ぎて処理できない糖をムダに使うシステム、それこそが癌細胞なのかもしれません。 では、がんができないように、あるいは消えるようにするには、身体の中で糖を余らせない、まず糖を食べすぎない、食べたら運動して使えばよい、ということになります。
 このうち、現実的なのは、食べ物を減らすことより、運動してエネルギーを使うことです。
 前回、栄養が足りないのはダメと話しました。
 必須栄養素が足りないと、そもそも生きられません
 ただ、食べ物には全ての必須栄養素がまんべんなく入っているわけではないので、一番摂りにくい栄養素を十分に摂ると、必ず他の栄養素に余りが出ます
 特に穀物は、必須アミノ酸の割合がヒトと違い、糖質が多いので、穀物で栄養を満たすには大量に食べねばならず、結果、大量の糖が余ることは避けられません
 それは必ずしも悪いことではなく、だから余ったエネルギーを使って様々な活動ができるのです。
 今、私がこの文章を書く作業も、いいね!がほしいというより、第一に、仕事をしてもトライアスロンをしてもまだ余っているエネルギーの発散なのかもしれません。
 身体活動が多い人ほど癌発症のリスクが低く、予後もよいことは多くの文献で認められています。
参考3 )身体活動と癌:予防と生存 システマティックレビュー(最もレベルの高いエビデンス) アメリカNIH

参考4)身体活動を増やすと13の癌のリスクが減る


(日本の医学界も認めているのに、医者から患者に勧められることはほとんどないのはなぜ?)

 十分に食べて、いっぱい動く!

 それはまさに健康な人の生活そのものではないでしょうか?
 そうした生活をする人には、癌細胞は発生する必要がないのです。

(Facebook2019年11月13日より)

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