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うんこの方程式〜ビタミンDサプリで便秘になる?

「ビタミンDサプリ5000IUを飲んだら便秘になって中止した」

 という方がいました。そういうこともあるのか?と思って調べたら...

あるようです!

☝️こちらでは、ビタミンDを過剰に摂ったことによる高カルシウム血症が便秘を引き起こすという説明です。

 高カルシウム血症とは、血液のカルシウムが多くなりすぎた状態です。便秘のみならず、腎障害などを起こす危険な状態です。

 もし高カルシウム血症になるならビタミンDサプリは即中止しなくてはなりません。(症状は👇を参照)

 ただしビタミンDサプリで高カルシウム血症になるのは、第一にビタミンKが不足している場合、第二に牛乳やカルシウムサプリでカルシウム供給が過剰になる場合です。(便秘になった方はビタミンDサプリと牛乳を併用していたそうです)

 納豆や海藻などでビタミンKを十分に摂ること、牛乳やカルシウムサプリを摂らないことで高カルシウム血症にならずにビタミンDサプリを使うことができます。


 では高カルシウム血症にならなければ、便秘を起こさないのか?

 ビタミンDサプリを飲むことで便秘になる理由は他にも考えられます。

 その理由は副作用というよりも、ビタミンDの作用そのものです。
 ビタミンDはカルシウムをはじめ腸管内のミネラルの吸収を促進します。ビタミンDを吸収・活性化するときにマグネシウムも吸収します。
 そうすれば当然、腸管内容物(うんこのもと)に残るミネラルは減ります。ミネラルが減ると、うんこは保水力が下がって水分が減り、小さく、硬くなりやすくなってしまいます。

 とてもよく使われる緩下剤に酸化マグネシウムがあります。これはマグネシウムが腸内に増えることでうんこの保水力が上がり、うんこを柔らかくするのです。

 私自身は自分でビタミンDサプリを実験的に5万IUとか大量に摂ってみても、便秘は感じませんでした。
 腸の動きが活発になって、かえって下痢をする、ゆるくなる、という人もいます。

 しかし、もともと便秘気味の人や、脱水気味・ミネラル不足気味(高齢者や女性に多い)の場合、便秘になりやすくなることも考えられます。

 便秘はとても多く、万病のもとと言われる病気です。感覚的には救急外来を受診する腹痛の患者の2割ほどは便秘です。便秘から虫垂炎(モーチョー)や腸閉塞、大腸破裂を起こすこともあります。

 ところが便秘はなかなか認められません。医者の多くはブスコパンなどで一時的に腸をゆるめさせて帰します。それでは一時腹痛が治まっても、便秘はひどくなって再来することになります。(昨夜の女性も何週間も「胸苦しさ、頭痛、腹痛」であちこち受診しても原因がわからず苦しんでいました)

 患者も便秘を認めたがりません。わざわざ夜中に救急受診したのに、そんなかっこわるい病名では納得しないのです。恥ずかしがって浣腸も嫌がります(ナースがしますが)。浣腸して大物を出すと腹痛はどこへやら、実にスッキリした、ちょっと拍子抜けした、そしてバツが悪そうな顔をして帰っていきます。

 私の勧めでビタミンDを飲んで便秘になるなんて人がいては大変申し訳ないので、今日はビタミンDサプリの摂取に限らず、便秘を避ける方法についてお伝えします。

 

 便、俗にいう「うんこ」は何でできているでしょうか?


 私は便秘で救急外来を受診した患者さんに、一つの方程式を教えます。


 大雑把にいうと、うんこはこの方程式で表され、足りない成分を補うことで便秘を解消できます

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①水

 うんこの重さの大部分は水分です。水分の多いうんこほど柔らかく、最終的に「水様便」俗にいう「下痢」になります。
 水分の少ないうんこほど硬く、最終的には「ウサギの糞」と呼ばれる「コロコロうんこ」になります。
 便に水分を保つ要因として、ミネラル(マグネシウムなど)や水溶性食物センイがあります。
 便に含まれる水分は純水ではありません。多様なミネラルを含んでいます。
 ミネラルを含むほど便の保水力が高くなります。

 身体が水分やミネラルを欲している場合は、腸から吸収される水分・ミネラルが増えることにより、うんこに残る水分・ミネラルが少なくなります
 ですから便秘を避けるには、脱水にならないよう、ミネラル不足にならないよう、普段から水分をよく摂り、自然海塩などで多様なミネラルを補うことが重要になります。

 便秘に悩む人というのは、水分摂取量が少ない人が多いです。飲むように言っても飲みたがりません。それは第一に、体のミネラルが不足しているので水を飲むとさらに薄まってしまうから。第二に、身体が冷えているので水を飲むともっと冷えてしまうからです。

 便秘の患者がよく来院するのは、猛暑の夏と、冬の寒い日の両極端です。


 こういう人に無理やり飲ませたり点滴で入れても、水を使えず浮腫むだけだったりします。
 男性に比べ女性に便秘が多い最大の理由は、女性の方が発熱機関であり水の貯蔵庫である筋肉が少なく、脱水になりやすく冷えやすいからと考えられます。(腸の長さ以上に)

 ですから、水とミネラルを一緒に補うこと、体を動かして筋肉を増やし、熱を作れるようにすることが根本解決になります。
 言うは易しですが、高齢者や運動嫌いの人に実行させるのはなかなか困難です。

 より簡単なのは、含水率の多い食べ物を食べることです。

「パサパサしたものはうんこもパサパサで出にくく、ヌルヌルしたものはうんこもヌルヌルで出やすくなる」

 と説明します。

 お米のご飯をよく食べる女性はご飯をあまり食べない女性より41%便秘が少なく、パンをよく食べる女性はパンをあまり食べない女性より41%便秘が多いという報告もあります。


 パンやスナック菓子などをよく食べる人は口の中も腸の中もうんこもパサパサになりやすいのです。

②菌


 うんこの主役は菌です。人間含め動物とは細菌の暮らす家であり、人の中で増えた細菌たちは「うんこ」という宇宙船に乗って世界に旅立ち、土となって植物を育てることで生態系が成り立ちます
 CO2とうんこは私たち動物にとって2大生産物です。人の生産性とは生態系レベルではお金を稼ぐ能力なんて関係なく、二酸化炭素とうんこを出す能力なのです。

 その菌の種類や多様性によって、うんこの性状はかなり違ってきます。その柔らかさ、まとまり、匂い、いい感じの菌が育っている時はいい感じになります。
 生産性が高い人間がいるとしたら、いいうんこを出せる人です。

 どんな菌が育つかは、第一に母親からどんな菌を受け継いだか?後からどんな菌を受け入れたか?どんな餌(食べ物)を与えたか?腸内の温度と水分、便のたまり方、クスリ(抗生物質で多くが死滅)の使い方などで決まります。

③食物センイ

 うんこの保水力を上げ、やわらかくすべっこくするのが水溶性食物繊維。

 うんこのかさを増し、大きく育てるのが不溶性食物繊維です。 

 便秘の解消に重要なのはまず水溶性食物繊維で。簡単に言えば『ヌルヌル』です。

 メカブ、わかめ、なめこ、オクラ、バナナ...ヌルヌルしたものを食べれば、うんこもヌルヌルになりやすいのです。

 不溶性食物繊維も重要です。食物繊維はいわゆる善玉と呼ばれる腸内細菌の餌になります。
 1人の腸内細菌は重さでいうと子犬一匹ほどになるそうです。(ワンコ一匹ぶんのウンコです)

 体の中で子犬を飼うつもりで、食物繊維を与えなくてはなりません。

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 食物繊維は炭水化物の一種です(炭水化物=糖質+食物繊維)。炭水化物抜きダイエットで糖質だけでなく食物繊維まで抜いてしまうとひどい便秘になります。
 糖質(デンプン)も腸内細菌の餌になります。過剰な糖質制限ダイエットも便が小さくなってしまいます。
 自分が糖質を控えたくとも、腸内細菌の分だけは摂ったほうがよいでしょう。

④胆汁(たんじゅう)


 うんこの色は、胆汁が素です。胆汁は肝臓で作られる液体で、胆嚢(たんのう)に貯められ十二指腸に油が入ってくると胆嚢(たんのう)が縮んでビュッと十二指腸に出されます

 胆汁は脂質の消化を促し、脂溶性ビタミンと鉄やカルシウムなどのミネラルの吸収を助けます。1日に500~800ml出され、ほとんどは腸管から再吸収されます。胆汁の一部が腸内細菌によって変化し、うんこを茶色にします。
 胆汁が出ないと、うんこは灰色になります。
 この胆汁の出方や再吸収の仕方は、消化吸収にも便の保水力にも強く関係します。

 胆汁の出が少ないと便秘になりやすくなります糖質中心で脂質をあまり食べない女性は便秘しやすく、胆嚢(たんのう)に胆汁が溜まりっぱなしになると胆石が出来やすくなります。

 胆汁が出過ぎたり胆汁の再吸収がうまくいかないと下痢をします。食べた後にすぐ便をしたくなる人(男性に多い)はこの傾向があります。
 小腸の再吸収機能が低下している場合、前の晩にアルコールを飲んだことで胆汁がたくさん作られた場合などに起こります。

 便秘を避けるには、胆汁を出すように十分な油を摂ること朝食にサラダにオリーブオイルなどをかけて食べるのがおすすめです。(私はオメガ3オイルが多いと下痢します)

 以上、うんこの方程式と、そこから導き出される便秘の解消法をお話ししました。

 便秘の原因には、うんこの中身の他にも、自律神経の副交感神経がうまく働けないこと(リラックスできない、クスリの影響など)、運動不足や筋力不足、肛門をうまくゆるめられない、などがあります。

 それぞれ別の解決策が必要になります。

 ビタミンDサプリを考えますと、ミネラルの吸収を促進するとともに、小腸の機能を改善する効果があります。
 すると逆に便に残るミネラルは少なくなり再吸収される胆汁が増えて、便の保水力が下がりやすくなります

 これはビタミンD本来の作用ですが、それが発揮されることによって便秘という結果に繋がるのはよくありません

 ビタミンDサプリの量を調節すること、食事に含まれる水分、ミネラル(主にマグネシウム)、水溶性食物繊維、胆汁を出すオイル類を十分に摂ることによって、ビタミンDを摂っても便の保水力を保ち便秘を避けることができます。

 もともとミネラルやビタミンDが枯渇している人ほど、サプリのビタミンDにいち早く接する腸粘膜がビタミンDを使って勢いよく腸内のミネラルを吸収してしまうため、便が硬くなりやすいかもしれません。


 ビタミンD欠乏は免疫力が低下し、様々な病の原因となります。
 便秘も万病のもとと言われます。

 ビタミンDはその吸収率・利用効率ともその人の年齢・体格・腸内細菌・マグネシウム摂取量・日光を浴びる量と肌色などによって大きく異なります

 同じ人でも、足りない時には多めに必要で、充足したら維持量で十分になります。

 ですから一律に1日何IUとは言えません。

 ビタミンDは消費量の面でも、まだわかっていないことが多いのです。

 ビタミンD欠乏も便秘もどちらも起こさないように、自分のからだの調子をよく感じるとともに、日々のお便りのメッセージを受け止めて工夫してみてください。

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