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ビタミンDはCOVID-19パンデミックを終わらせることができる可能性が高い

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最新研究の確からしさ分析

 8月29日、ランダム化比較試験によってCOVID-19重症度を著しくかつ劇的に低下させる方法が初めて示された。

 高容量のビタミンD(カルシフェジオールとして)を投与された研究対象者はICUに入るリスクが50倍低く(リスクが1/50になり)、致死率も同程度に低下したのだ追加分析参照)。

これらの知見が正確であるならパンデミックの終焉は近い。この研究には複数の制限があるが、与えられた条件においてはその結果を正確に評価して深堀りすることが重要である。
 我々はこの研究報告の確からしさを見積もり、この結果を今すぐ治療に採用することと、さらなる研究結果を待つことのどちらのリスクが高いかを分析する。

この報告は真実か?

 ランダム化比較試験とは、患者がランダムにその治療を受ける群とコントロール群(治療を受けない群)に振り分けられ、何らかの臨床的知見がその治療によるものか、他の要因によるものかを判別する研究である。これまでビタミンDとCOVID-19の関係には強い相関があることを示す多くの研究があるが、因果関係は立証されていなかった。
 例えば、もともと不健康な人々は日光暴露が少ないためにビタミンDが低いなら、COVID-19の重症度とビタミンDの相関関係は因果関係とは言えない。

 私たちは今、ビタミンDをCOVID-19患者に投与する最初のランダム化比較試験の結果を手に入れた。もしそれが適切に行われたなら、因果関係がついに確立し、有効な治療が見つかったことになる。

 しかしながら、この研究には結果を歪めてしまうかもしれないいくつかの制限が存在する。その問題を検討し、確かさを検証してみよう。より数学的に厳密な分析は下の追記を参照。

1.  サンプルが少ない、だから結果は偶然かもしれない。

 ランダムに治療群に振り分けられた患者が単なる偶然によって重症化しにくかった、ということは常に起こり得る。研究結果が偶然によって起こりうる可能性は有意確率(p値)を使って計算される。私たちの計算上、この研究結果が偶然である可能性は10万分の1以下である。

 理解すべき重要なことは、有意確率で確認されたならサンプル数はもはや問題ではないということだ。サンプル数を増やす目的は2つの群のランダムな差を減らすことにより、治療が最終結果に違いをもたらすより大きな要因であることを浮き彫りにすることだ。有意確率は研究規模と治療効果の両方によって改善される。(訳者注:治療効果が小さくてもサンプル数を増やせば治療群とコントロール群に有意差が出やすくなる)

 この研究では治療効果があまりに強いので、比較的小さなサンプル数(76人)でさえも有意差を出すために必要なよりはるかに多いことが明らかになった。

 確証を持って言えることは、もし仮にこの研究結果が正しくないとしても、それはサンプル数や偶然のせいではないということである。

2.  コントロール群がより多くのリスクファクターを抱えた人を含んでいる。

 コントロール群はたまたま有意に多い高血圧患者を含んでいた。そのためにコントロール群でICU入りが多かったとも考えられる。研究者たちはこの問題を見つけ出し、この問題がどの程度影響を与えるか別の分析(ロジスティック回帰)を行った。その結果、研究結果はわずかに弱められるだけでビタミンD投与群はICU入りが『50分の1に減少』から『30分の1に減少』となり、この結果の95%CI(95%信頼区間)は1/4〜1/300の間であった。
 我々は控えめな見積もりとして1/12を採用することにしよう。

 我々はもう一つの分析を行った。高血圧患者は必ず重症化すると仮定し、サンプルから高血圧患者を除外して分析したのだ。その結果、研究結果はそれでも明らかに有意であり、p値は1/5,000(=0.0002、偶然この結果が出るのは5,000回に1回)であった。(一般的な閾値は1/20=0.05)

 検討すべきもう一つの問題はこの治療群とコントロール群の不均衡がランダム化や論文自体のより深い問題(訳者注:捏造や改竄)を示唆するかどうかである。報告された高血圧患者の差の有意確率の値は0.002であり、これはランダムに割り当てられた場合500回に1回起こりうることになる。しかしながら、これは研究結果に影響する少なくとも10の変数の一つに過ぎず、いずれかの変数にこうした不均衡が起こる確率はおよそ50回に1回になる。ランダム化は患者の入院時にコンピューターによって行われており、そのような間違いは起こせそうもなく、そして捏造としては大きな意味を持たない。(特に、後で報告されて訂正されたから)

 これは明らかに偶発的なことであり、査読者たちが指摘したこと以上のことを疑う理由はないと考える。

3.両群の患者はヒドロキシクロロキンとアジスロマイシンでも治療された

 両群の患者は標準的な治療を受けた。当時、標準的な治療とはヒドロキシクロロキンとアジスロマイシンであり、現在ではいずれも効果が否定されている。これらの薬物による副作用がビタミンDが効果を示した研究の中立性を損なうことがあり得るだろうか?あり得そうもない。投与試験はヒドロキシクロロキンとアジスロマイシンによって結果が異なることを示したが、いずれも軽度のリスクしかない。

 また、これらの薬が研究結果に干渉しうるメカニズムは知られていない。

 我々はこれによって研究で示された治療効果が減少するのは最大でも12倍〜8倍(50倍のうちの)であると見積もる(即ち、他の薬によってビタミンD群の重症化は50%増えた可能性がある)

4.この臨床試験は二重盲検プラセボ投与試験ではない

 投与試験の参加者や研究者によって(無意識にでも)結果が歪められることを予防するために、どの患者が治療群でどの患者がコントロール群かを参加者も研究者も知らないことが望ましい。この臨床研究はそうなっていない。

 これは確かにこの研究の弱点である。この弱点は、ICUへ入るかどうかの決定を、病院の倫理委員会のメンバーを含む、患者がどちらの群に入るか知らない人々で構成される専門家委員会に任せることで緩和されており、決定は体系化されたプロトコールに基づいている。

 我々は研究者たちに研究手順についてより詳しい情報を求め、この問題は偽薬製造に関する技術的な理由によることがわかった。我々の印象では、データをICU入り決定者から隠す誠実な努力ができる限り行われており、二つの群はビタミンD投与以外で異なる扱いを受けることはなかった。
 
 我々はそれでもこの弱点によって研究で得られた知見が間違いとなり、研究が完全な詐欺になり得る可能性を考慮する必要がある。ビタミンDに関しては宣伝による利益は全くなく、詐欺は後の研究によって暴かれるから、我々はこの可能性は最大10%と見積もる。

5.他のまだ特定されていない要因があるかもしれない

 もちろん、二つの群の劇的な違いの原因として別のまだ特定されていない要因があることはあり得る。これは通常、論文を掲載する医学雑誌の責任になるだろう。この研究は、雑誌は査読されてビタミンD専門の小さな雑誌に掲載された。出版社はElsevierであり、『the Lancet』と『Cell』(訳者注:どちらも一流医学・生物学雑誌)も出版している。

 このような大きな発見は理想的には世界をリードする一流誌に掲載されるべきだが、上記のような制限により、そしておそらく出版の緊急性により、小さな雑誌を選んだことは理解できないことではない。

 臨床試験が比較的シンプルなので、我々は大きなリスクとなる未知の要因を見出すことはできず、効果減少はあったとしても最大で8倍から6倍(50倍のうちの)、そして結果が間違いである確率は10%と考える。

6.研究の事前確率は低いか?

 同様に重要なことはビタミンDがCOVID-19を治療できる見込みであり、それはこれまでに発表された論文の知見に基づいて検証される。
 例えば、もしある研究が5分間の首のマッサージが肺がんを治すと発表したとして、たとえ統計的に有意性が高かったとしても、それは研究に何か間違いがあった可能性がとても高いと考えられる。

 この研究では逆だ。

・ビタミンDは、気道感染症に対して有効であることが知られている。

・ビタミンDは、サイトカインストームの一部でありCOVID-19重症化の要因として既に知られているIL-6の危険なレベルまでの上昇を予防する

・「ブラジキニン・ストーム」によるCOVID-19重症化に関する最新の分析は、ビタミンDが有効な可能性のある治療と示している。
・ビタミンDがCOVID-19に与えるその他の効果はこの研究に複数引用されている:レニン-アンジオテンシン系の制御、好中球活性の調節、肺上皮バリアを正常に保つ、上皮の修復を刺激する、そして上昇した血液凝固を落ち着ける。
・多くの先行研究(例えばこれこれ、そしてこれ)が低ビタミンDとCOVID-19重症化の相関関係(因果関係ではない)を既に示している。この新しい論文はその相関が因果関係であることを証明するだけだ。
最近の研究ではカルシトリオール(活性型ビタミンD)が試験管内においてSARS-CoV2に対して直接に抗ウイルス効果を示した

 しかしながら、これまでのところ示唆されたのはより弱い効果(重症化を50%減らす)であり、1/30にするものではない。だから治癒に近いことを示唆する今回の新しい発見は当初驚きであった。しかしさらなる実験によれば、この研究には何の矛盾もないかもしれない。詳細なデータとともに出版されたある研究の再実験では、高レベルの血液ビタミンD濃度(50ng/ml超)は感染率をほとんどゼロに近く落とすことを示した。

 治療効果は服用量とともに増加する可能性があり、この研究で使われたような非常に高い服用量で、治癒に近いことが達成された。もう一つの可能性は、短期間の高容量カルシフェジオールは長期間のビタミンD3サプリメント内服より有効性が高い可能性があることだ。
(訳者注:カルシフェジオール=カルシジオール、25(0H)コレカルシフェロール、25(OH)ビタミンD。血液検査で測られるビタミンD。活性化されてカルシトリオールになる一つ手前の状態)

 加えて、研究者たちは臨床試験が完了した後も患者たちに同じ方法で投与を続け、同様の結果を得たと報告している。

 全体として、先行する知見を加味すれば、より強い効果や無効というより、やや弱い効果の方が考えられる。我々は控えめに1/6〜1/5と見積もろう。

 まとめ この発見は真実である

 検討したいずれの可能性もこの臨床試験の結果明らかになった有意な知見を否定することはできなかった。効果を拡大するいくらかの小さなバイアスが起こった可能性は大いにあり得る、しかしビタミンDに効果が無いということはありそうもない。

 上記の数値をまとめると、我々は以下のように見積もる。

・20%の確率でビタミンDはCOVID-19に有意な効果を持たない
80%の確率でビタミンDは重症化と死亡をおそらく1/5程度に減らす。はるかに大きく減らす可能性もある。

リスク管理

治療方針を決定するためには、この結果が真実であるかどうかだけでなく、各治療法の潜在的な有害性と有益性を比較しなくてはならない。

選択肢1 待機

簡単な決断はさらなる研究がこの知見を証明するまで待つことだ。これは成功した臨床試験の第一報の後、多くの医療専門家がとる決断だ。

もしその治療が無効でも、この決断にはコストもリスクもない。

もしその治療が有効なら、上記で分析したことに基づけば、この研究でのコントロール群の結果、そして典型的な入院患者の結果と同様になる。

・重症化と長期間の後遺症に苦しむリスクが20%上がる
・死亡するリスクが5%上がる。

選択肢2 治療を適用する

 第二の選択肢は今すぐ入院患者にビタミンDによる治療を適用することだ。
 この場合、高容量のビタミンDによる患者への有害性が問題になる。

 ビタミンDはすでに知られた治療法であるから、リスクについても豊富な情報がある。

この研究で用いられたのは従来使用されてきた最大推奨量の約10倍である。 (入院初日に532μg=約2万IU、3日目と7日目に266μg=約1万IU、その後、週1回内服を退院もしくはICU入りまで継続)

 しかし、この研究での治療期間は比較的短い(退院か、ICUに入るまで)。これまで同程度の要領を用いた短期間の研究でも安全であることがわかっている

・ビタミンD過剰のリスクは非常に高い血中濃度を長期間維持することによって起こる。

 それにしてもリスクは比較的小さく、低カルシウム食とステロイドで治療可能だ。厳密に管理された入院患者ではリスクはかなり小さいと考えられる。

・COVID-19に特異的なリスク:ビタミンDは細胞のACE2発現を増加する。ACE2はコロナウイルスの受容体となる。だから、これまでのところ、その使用に懸念があった。しかしCOVID-19患者を対象にした新しい臨床試験で有害な影響は見られず、その心配は緩和された。この研究が全く間違っていて、意図的にあるいは致命的な間違いでビタミンD治療群のより悪い結果が隠されたという可能性は無いとは言えないがとても小さい。

 現存する知識に基づけば、提出された治療法のリスクは低いことが明らかだ。

 そのリスクは患者の血中ビタミンD濃度をモニタリングすることでさらに下げることができる。
 高くても、例えば80ng/mlまでに保つことだ。

 この治療法のリスクは以下より低いと見積もられる

・重大な合併症が出るリスクが5%上がる。
・死亡するリスクが1%上がる。

結論
 
・この治療法が非常に有効である確率は50%以上である。

・有効である場合、この治療による利益は、治療によるリスクを2倍をはるかに超えて大きい。

 直ちにこの治療法を適用することが正しい決断であることは明らかである。

 病院がさらなる研究を待つ決断をするなら、治療の遅れがもたらす患者への不利益に勝る非常に強い根拠が求められる。


COVID-19の世界的な影響

 この分析は、もしこの治療法が広く用いられたなら、COVID-19の重症化は季節性インフルエンザ程度に抑えられ、種々の制限の緩和を可能にし、経済や社会の健康の大きな改善につながることを示している。


 さらなる結論として、確証はより低くはなるが、ビタミンDはCOVID-19の軽症例にも有効であるかもしれない。先行する研究ではビタミンDレベルは感染率とも相関が示されている。今回の新しい研究は重症例について因果関係を確立したが、軽症例についての相関関係が因果関係である可能性も高めたと言える。
 これはビタミンD療法(例えば血中レベルを30~40ng/mlに引き上げること)が広く広まれば、R0(訳者注:基本再生産数)を減らすことができる可能性を示唆する。もしその減少幅がこの研究で示されたように著明ならば、R0は1以下に下がり、パンデミックを止めることができる可能性がある。

 ビタミンD欠乏は既にとても多く、この用量ではリスクは取るに足らない。各国政府は直ちに国民へのビタミンD検査とサプリメント摂取を奨励し資金を提供すべきである。


 付記ーBayesian分析

 確率の専門家にとって、Bayesian干渉を用いた以下の分析がより厳密である。仮説の事前確率を明らかにし、それぞれの仮説における研究結果の条件付き確率を計算することにより、より正確で確固とした結果が得られ、サンプルサイズや有意確率や信頼区間を分析する必要がなくなる。

仮説

我々は考えられる5つの仮説を定義した。

仮説1 ダメージ:ビタミンDがCOVID-19を悪化させる
仮説2 無効:効果なし
仮説3 2倍:ビタミンDはCOVID-19重症化リスクを約2倍減らす(1/2にする)
仮説4 5倍:ビタミンDはCOVID-19重症化リスクを約5倍減らす(1/5にする)
仮説5 20倍:ビタミンDはCOVID-19重症化リスクを約20倍減らす(1/20にする)

事前確率
 
 第一に、それぞれの仮説を今回の研究以前の知識に基づいて確からしさを見積もる。前提として、有効な薬物はほとんど知られていないが、上述したように、ビタミンDとCOVID-19の相関を示す研究は多数あり、そのメカニズムについて説明しているものもある。反面、前述したようにACE2を増やすことによってビタミンDがCOVID-19を悪化させるリスクもある。

 我々はこれらの事実を基づいて事前確率を以下に見積もる。

仮説1 ダメージ 10%
仮説2 無効 67%
仮説3 2倍 15%
仮説4 5倍 5%
仮説5 20倍 3%

研究への補正

上記に検討された制限に基づいて、我々は研究結果に以下の補正を加えた。

・コントロール群の2症例をICU入りから非ICU入りに移すことで、高血圧患者の割合がコントロール群で高かった補正とする。

・治療群の1症例を非ICU入りからICU入りに移し、逆にコントロール群の1症例をICU入りから非ICU入りに移すことで、研究者が二重盲検としなかったことによって可能となったバイアスの補正とする。

・治療群の1症例を非ICU入りからICU入りへ移し、逆にコントロール群の1症例をICU入りから非ICU入りに移すことで、まだ特定されていない不明な弱点の補正とする。

・上記のように、この研究がひどく間違っており却下されるべき確率は20%と見積もる。

 報告された表は以下であったが、

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 我々は以下のように補正することになる。

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条件付き確率

 次に我々は、5つの仮説について、補正された研究結果を用いて確からしさを見積もる。これを行うには、コントロール群のICU入りのオッズ(9:17=9/26=34.6%)を用い、仮説の要因で補正し、治療群で見込まれるICU入りオッズを求める。例えば、2倍仮説で見込まれるオッズは9:17x2=9:34、もしくは確率20.9%になる。
 それから我々は二項分布の公式を用いて(50の臨床試験のうち3つの)正確な研究結果の条件付き確率を見積もる。これは合計100%になるように標準化される。最後に、20%:80%となった事前確率を用いて平均化する。20%の確率でこの研究は意味がないことを加味する。

全てを計算すると次の表になる。

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まとめ

 このより厳密な分析はビタミンDがCOVID-19に対して有効である確率が約80%であるという結論と非常に近く、ICU入りリスクを5倍減らす確率が最も高い。


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