サプリのコツは続けないこと〜ビタミンD過剰症について
ビタミンDサプリを勧めると、過剰症を心配する人が多くいますのでまとめます。
まずビタミンD過剰症の基本を知るために、こちらののぶながさんのわかりやすい動画を紹介します。
基本的な動画の内容には賛成です。
ただし、私は大人は1日5000IUを目安に夏は休む(減らす)という使い方をお勧めしています。(子供は肝油ドロップ1日1粒あるいは体重10kgあたり1日1000IU、夏は休む)
また高カルシウム血症はビタミンK欠乏や牛乳・乳製品摂取が関係し、ビタミンDサプリだけでは語れません。
動画内で紹介されているVD過剰症の論文はトルコからのものです。トルコは日本より紫外線が強くビタミンDを作りやすい一方、ビタミンKを多く含む納豆も海藻も食べず乳製品摂取の多い国です。日本人と同列には語れません。
現代日本人の9割はビタミンD不足または欠乏とも言われます。
こちらのクリニックでは、男性の85%(7人中6人)、女性の95%(20人中19人)が不足または欠乏だったそうです。
日本人がビタミンD過剰を恐れるのは、今日食べるものを買うお金にも困っている人が稼ぎすぎを恐れる様なものなのです。
過剰になったある女性の場合
それでも、先日Twitterでこのような👇返信をいただきました。
これはとても珍しいことなので大変興味深く、詳しくお聞きしました。
まず確認するのは単位
血中濃度の数字を挙げて「過剰か?」と言う人に、真っ先に確認することは単位です。
ビタミンDの血中濃度には2つの単位があり、検査機関によってどちらを使っているか異なるため、確認する必要があります。。
30未満は不足、20未満は欠乏と言う場合、単位は「ng/mL」です。
もう一つの単位は「nmol/L」で、「2.5 nmol/L =1 ng/mL」です。
つまり、75nmol/L未満は不足、50nmol/L未満は欠乏ということになります。
「100以上だから過剰だ!」
と言う人が「nmol/L」の検査結果だったので実はちょうどよいことがあります。
あるいは
「40だから不足してない!」
と言う人が「nmol/L」の検査結果だったので実は欠乏していることもあります。
必ず単位を確認しましょう。
この方の場合は、ちゃんと「ng/mL」で130だったので過剰ということになります。
そんな例は珍しいので状況を伺うと
もう5年ほどビタミンDサプリ5000IUを毎日飲まれていて
2020年7月78.4 → 2021年1月81 → 2022年5月130(ng/mL)
とのこと。
5月はまだようやく日光でビタミンDを作れるようになってくる季節で、この時期に過剰になるのは何か他の要因があるはずです。
すると、ビタミンD添加ヨーグルトを併用されていたとのこと。
ヨーグルトにどのくらいのビタミンDが入っていたか分かりませんが併用は注意ですね。
特に牛乳や乳製品とビタミンDの併用は、高カルシウム血症のリスクが上がるので私はお勧めしていません。
しかしこの方は血中カルシウムは基準値の下限ギリギリだったとのこと。ビタミンKが十分にあれば、ビタミンDが過剰になっても高カルシウム血症にはならず、何の実害も生じないことがわかります。
怖いのはビタミンD過剰ではなく、高カルシウム血症・ビタミンK欠乏なのです。
コロナ治療の臨床試験では1回20万IUが用いられました。20万IUは1日5000IUなら40日分を一気に取ったことになります。それでも何の有害事象もありませんでした。
(治療効果も出ませんでしたが。1万IU週2回では大きな効果が出たのに)
またこの方は身長155cm体重35kgとかなり細身でいらっしゃるので、ビタミンD血中濃度が上がりやすかったと考えられます。
一般に大柄で体脂肪率が高いほどビタミンD血中濃度は上がりにくくなります。
ビタミンDサプリ1日1万IUを毎日1年間摂っても血中濃度が30ギリギリくらいにしか上がらない人もいるので、かなり個人差は大きくなります。
この方の例からわかることをまとめると
①ビタミンD5000IUを4年間毎日摂っても体重35kgの人でも過剰にはなっていない。
②血中濃度が130ng/mLになってもビタミンKが十分であれば高カルシウム血症にはならず実害は生じない。(逆にビタミンDサプリ使用時はビタミンKも十分に摂ることが重要)
③ビタミンDサプリやビタミンD添加食品の併用時は過剰に注意。
ということになります。
余談ですが、この方は骨密度が低いのを気にされてビタミンD添加ヨーグルトを食べていたとのこと。
ビタミンDはカルシウムの吸収を助け(Ca血中濃度を上げる)、ビタミンKはカルシウムが骨に使われる(Ca血中濃度を下げる)のを助けてくれます。
しかし、そもそも体が丈夫な骨を必要としていなければ骨密度は上がりません。
体重が軽く負荷が低い、そして男性ホルモン・女性ホルモンが低い場合、栄養素は十分でもなかなか骨密度は上がりません。
骨密度を上げるには、片脚立ちやかかと落とし体操で骨に適度な負荷をかけること、筋トレして男性ホルモンや成長ホルモンを分泌することが必要になります。
そして骨や筋肉を強くするにはカルシウムだけでなくタンパク質・脂質が必要なので、それを食べる必要があります。
また牛乳乳製品はカルシウム・マグネシウムのバランスが悪く、かえって骨折を増やすことはカルシウム・パラドクスとして知られています。
サプリメントの摂り方に話を戻すと、私はビタミンDに限らず
サプリのコツは続けないこと
と考えています。サプリメントは基本的には栄養素です。栄養素は足りなければ不調が起こります。
不足している栄養素を補えばその不調が消え、体調が改善します。
ビタミンB1欠乏なら脚気になり、ビタミンB1を補えば脚気が治ります。
ビタミンDを補えば、くる病、うつ、花粉症、様々な皮膚病や癌その他慢性疾患の改善が期待できます。
サプリはその効果を感じながら使うことが大切です。
しばらく飲んでいるとその栄養素の不足はなくなり、効果を感じなくなります。
そうしたらやめてみる。それでまた不足するなら不調を感じる。飲んでいた時の方が調子良かったと感じる。
それでサプリを再開するとまた効果を感じる。
それを繰り返しているうちに、自分にはどの栄養素がどのくらい必要なのかわかってくるようになります。
そうしたら、生活の中で日光浴や食事で栄養素を補うことでサプリを減らせるかもしれません。
サプリにはお金もかかりますし、信頼性や添加物の問題もあります。
飲まずに体調が良ければ、それに越したことはありません。
体力・お肌・髪・気分・便・尿などの変化を敏感に観察すれば、欠乏している栄養素なら直後に、軽度の不足でも数週間のうちには効果を感じることができます。
飲んで何の効果も感じないなら、お金の無駄かもしれません。
プラセボ効果と言って、何の効果もない偽薬でも薬の30%ほどの効果が出るものです。
効果を期待して飲んでいるのに何の変化もない、「いい感じ」すらしないなら、それは少なくとも必要ない、場合によっては有害かもしれません。
ずっと続けていると、その栄養素は過剰になりがちになります。(蓄積して過剰になるか、排泄する負担が増えます)
過剰になって不調を起こしても、ずっと飲み続けているとそのサプリのせいだとは気づきにくくなります。
何年も飲んでいたクスリをやめてみてはじめて、ああ、あれが余計だったんだと気づくことがよくあります。
サプリでも同様です。
感じながら使うと言う意味で、マルチビタミンなどで多くの栄養素を一度に摂るのも私はお勧めしません。
いろいろめんどくさいからまとまったのを飲み続ける、という考え方もありかもしれませんが、例えば、蓄積性はないと考えられている水溶性ビタミンのビタミンB6、ビタミンB12、葉酸サプリの長期使用(10年)は癌を増やすなどの報告もあります。(逆に減らすという報告もありますが)
ビタミンB群やビタミンKなどは、本来腸内細菌がつくるビタミンでもあります。それらの細菌にとってビタミンは排泄物ということです。それがサプリで大量に入ってくることはそうした必要なビタミンを作ってくれる善玉菌の生息環境をおびやかすかもしれません。
ビタミンDについても本来は日光を浴びて皮膚で作るホルモンです。サプリにずっと頼ってしまうと、ビタミンDを作る能力は落ちてしまうかもしれません。
夏にビタミンDサプリを休めば、足りなければ無意識のうちに浴びた日光から体がビタミンDをつくれます。過剰であれば体は日光を浴びてもビタミンDをつくりませんので、自然な値まで下がるでしょう。
夏はビタミンD欠乏により花粉症やうつや風邪をひきにくいのも、サプリを休みやすい理由です。
もし不調を感じれば夏でも再開します。数日から数週間間隔を空けて飲むのもいいでしょう。
どのくらい休むかは、その人の暮らす地方や天候、日光を浴びる量などによって大きく異なるので一概には言えません。やはり感じながら、厳密には血中濃度を確認しながらということになります。
サプリを摂る様になったのはヒトの歴史ではごく最近。もちろんメリットも期待できますけれど、わかっていないことが多いのです。
あくまで基本は食事や生活。サプリは補うものとして、自分の心と体を確認しながら上手く使っていきましょう。
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