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鼻うがいの「落とし穴」とその避け方

 鼻うがいをして耳が痛くなった熱が出た副鼻腔炎になった、中耳炎になった、アメーバ脳炎が心配、(追記:鼻が痛い)などの声が時々ありますので解説します。

鼻うがいはちゃんと行えば特に風邪のひき始めなどにとても効果的で、慢性疾患や自己免疫疾患の予防・改善にもつながる優れた方法です。
 過剰にリスクを恐れることなく、しっかりやり方を知って行ってほしいと思います。

鼻うがいの落とし穴1:副鼻腔炎


 このTweet👇のように鼻の奥が痛くなって高熱が出るのは、急性副鼻腔炎と考えられます。

 鼻うがいで副鼻腔炎を起こすのは、副鼻腔に水を入れて溜まったままになってしまったからです。
 副鼻腔に水が入ってしまうのは、第一に鼻うがいの水を入れる向きが上を向いているからです。
 以前動画で説明しましたが、鼻うがいの目的は鼻ではなく上咽頭を洗うことです。

ノズルの先端は上ではなく後ろ、耳の下くらいの高さを狙うくらいのイメージがおすすめです。

 また顔を下に向けるのも副鼻腔に水が入りやすくなるので、まっすぐ前か軽く上を向くくらいの方が副鼻腔に水が入りにくく、上咽頭に水を当てやすくなります。
副鼻腔の入り口は左右にありますので、ノズルは外側ではなく正中やや内向きを狙います
 残念ながら、鼻うがいキットの箱に書いてある図やテレビCMなどが悪い例なので、上を向けてやってしまっている人が多いのが実情でしょう。

 それで問題ない人はいいのですが、問題ある人もいるのです。

鼻腔に一気に水を入れすぎないことも大切です。
 1回水を入れたら、反対の鼻から水が出終ったのを確認軽くフンと鼻から息を出して(強くやると中耳に水が入る鼻腔を空にしてから次の水を入れます
副鼻腔の入り口は鼻腔の上のほうにあります鼻腔が水でいっぱいになると、溢れた水が副鼻腔に入りやすくなります。

焦らずゆっくり鼻うがいしましょう。

鼻が詰まっていて反対の鼻の穴から水が出ない時は、水が溢れて副鼻腔に入りやすくなります鼻が詰まっている時は鼻炎が起こっていて病原菌が繁殖していることもあり、そうした菌を副鼻腔に押し込んでしまうことにもつながります。
鼻詰まりは鼻水や鼻くそなど何かが鼻に詰まっているわけではなく、鼻腔の粘膜がむくんでいるのです。どんなに強く鼻をかんでも鼻うがいしても鼻詰まりは解消しません。(鼻詰まりの解消には、グルテンと牛乳を止めること、ビタミンDがおすすめです)
 むしろ鼻詰まりがひどい時、反対の鼻の穴から水が出ない時は、鼻うがいを避けた方が良いでしょう。

 もし副鼻腔に水が入ってしまったら、深いおじぎをするように顔を下に向けると水が抜けやすくなります。下を向いてゆっくり顔を左右に向けて水が抜ける向きを探りましょう。 

副鼻腔炎にならない鼻うがいのコツ
①ノズルは上を向けず、後ろを狙い、少し内側に向ける。
②1回水を入れたら反対の鼻の穴から水が出終わってから次の水を入れる。
③鼻が詰まって反対の鼻の穴から水が出ない時は鼻うがいをしない。

鼻うがいの落とし穴2:中耳炎

 鼻うがいの水が耳管という鼻と耳をつなぐ中耳というところに入って溜まったままにしておくと、中耳炎を起こすことがあります。

 耳管は普段は閉じていますが、あくびをしたときや大きく顎を開いた時、飲み込み動作の時、鼻腔に強い圧力がかかった時に開くことがあります。
鼻うがいを上に向けて強い水圧をかけると、耳管が開いて中耳に水が入りやすくなります
 ここでも、ノズルは上や外ではなく後ろやや内側を向ける。1回水を入れたら反対の鼻の穴から水が出終わってから次の水を入れる。鼻が詰まって反対の鼻の穴から水が出ない時は鼻うがいをしない。ここまでは副鼻腔炎と同じです。
 さらに、水が溜まったまま耳管を開かないために、鼻うがいをした直後は鼻をかまない、強く力んで鼻息を出さないことです。

 もし中耳に水が入ってしまったら、少し時間をおいて、鼻腔の水が抜けてから、スキューバダイビングなどで言う「耳抜き」をします。鼻をつまんで軽く鼻から息を出すと時間が開いて耳に溜まった水が出やすくなります。

鼻腔に水が入った状態でやるとさらに水を押し込んでしまいますし、中耳炎になってからでは痛みが出るかもしれませんからタイミングが重要です。

中耳炎にならない鼻うがいのコツ
①ノズルは上を向けず、後ろを狙い、少し内側に向ける。
②1回水を入れたら反対の鼻の穴から水が出終わってから次の水を入れる。
③鼻が詰まって反対の鼻の穴から水が出ない時は鼻うがいをしない。
④鼻うがいの直後は鼻を噛まない。


鼻うがいの落とし穴3:アメーバ脳炎

 鼻うがいでアメーバ脳炎(原発性アメーバ性髄膜脳炎)になって死亡したという例は、インドやアメリカで数例報告されています。

日本では1996年の佐賀県の女性1例だけの報告、鼻うがいとは関係ありません
 人食いアメーバ、脳食いアメーバなどとテレビ番組やネット上などでセンセーショナルに恐怖を煽られますが、とても稀な疾患です。

 このアメーバ脳炎を防ぐために、鼻うがいの水は煮沸してから使うべきと言う人もいますが、私は水道水で行っています
 第一に、日本の水道水から脳炎を起こすアメーバが見つかったことはなく、その症例も極めて限られるからです。
 このアメーバ、フォーラーネグレリアは塩素で死滅しますから、日本の水道水でアメーバ脳炎が起こることは考えにくいです。
 起こるとしたら、水道水よりむしろ環境中にアメーバがいて、空気と共に鼻腔に吸い込み、それを脳に入れてしまった場合です。
 水道水を心配するより、キットの清潔さに気をつけた方が良いでしょう。
 アメリカで鼻洗浄機からこのアメーバ脳炎で死亡した症例も蓄膿症の男性で洗浄機が不潔だったと報告されています。(そもそも蓄膿症[慢性副鼻腔炎]に鼻うがいは適応を間違えていると私は思います)
 いくら水を煮沸しても、鼻腔内にはもともと様々な微生物がいるのです。
インドやアメリカ南部の不衛生な水道水では煮沸する必要があるでしょうけれど、日本では必要ないのではないかと思います。
(追記:日本の水道水も信用性は落ちてきてますが


 最初に引用したツイートの方も煮沸した水を使って鼻うがいをしたのに副鼻腔炎になってしまったことでもわかる様に、日本の場合、問題は水よりも鼻うがいのやり方にあります。

 実はこのアメーバは温泉にはありふれています。私たちは温泉の湯気とともに、アメーバをすいこんでいるでしょう。それでも日本の温泉でアメーバ脳炎が起こったことなどありません

 ですから私はアメーバ脳炎は心配していません
 強いて言うとしたら、温泉での鼻うがいは避けた方が良いかもしれません。温泉水や風呂桶のお湯その他の溜り水で鼻うがいするのはもちろんやめましょう。
不衛生な海外や熱帯地域で鼻うがいする場合は、煮沸した方が良いでしょう。

アメーバ脳炎にならない鼻うがいのコツ
①キットは使うたびに使う直前と直後に洗う。
②日本の水道水では基本的に心配なさそう。
③温泉での鼻うがいは避けた方がいいかも。
④風呂桶のお湯や溜り水は使わない。
⑤海外や熱帯地域では水を煮沸してから用いる。

 最後に繰り返しますが、 鼻うがいはちゃんと行えば特に風邪のひき始めなどにとても効果的で、慢性疾患や自己免疫疾患の予防・改善にもつながる優れた方法です。
 過剰にリスクを恐れることなく、しっかりやり方を知って行ってほしいと思います。


追記:とにかく鼻うがいはただ鼻が痛い!と言う人は、おそらく塩の濃度が間違っています。0.9%の塩水、100ccの水に0.9g(厳密には0.9081…g)の塩なら痛くありません。重曹を少々入れるなら合わせて0.9gです。薄いと痛いので、市販のパックを使っても痛い方は、キットに水を入れすぎていないか?(なみなみ入れず、線の所までですよ)ご確認を。慣れると濃いめが気持ちよく感じ、効果も高いようです。

👇0.9%より濃い塩水での鼻うがいした群はしなかった群に比べて、コロの症状が2.6日短縮され、家庭内感染が35%有意に減ったという論文(ちなみにタミフル がインフルエンザの症状を短縮する効果は0.6日)


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