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【ハワイ・マウイ島】山火事が暴露した「植民地主義の遺産」 復興再開発というハゲタカが狙う焼野原

8月17日「Peoples Dispatch」
翻訳・脇浜 義明

 8月8日、ハワイのマウイ島で、21世紀までの歴史上で最大の山火事が発生した。航空写真は破壊の規模の大きさを表している。緑豊かで繫栄したラハイナは、焼け崩れた建物と野生生物の死骸の焼け跡になっている。火はまだ燃えていて、現時点で100人もの死者が出ているが、奥地の調査が進めば、その数はもっと増大するだろう。8月15日時点で調査できているのは、被災地の32%だ。
 元ハワイ州議会議員でグリーン・ニューディール・ネットワークの指導者であるカニエラ・イングは、山火事を「気候危機と植民地時代の貪欲を表現する、悲劇的象徴」と言った。破壊されたラハイナは、1890年代に米国に潰されて米国領となる前は、独立した王国政府だった。王国史跡は山火事で焼失してしまった。イングは、「貪欲な開発業者と土地投機屋は、ラハイナの景観を破壊したばかりでなく、山火事の延焼を防ぐ緩衝を破壊した」と言う。
 マウイ緊急事態管理庁は「再建には55億2千万㌦を要する」と見積もっている。2200の建物が焼失、その86%が住宅で、4500人が避難所を探している。それでなくてもハワイは住宅難だった。観光産業が物価を吊り上げたので、ハワイの生活費は米国本土の2倍である。
 マウイ島の一戸建て住宅の価格は平均120万㌦で、マンションは85万㌦。ハワイの最低賃金は時間給12㌦だが、一人の人間が最低限必要な物を購入できる生活をするためには、時間給18㌦で週40時間働く必要がある。貧困率が最も高い人種グループは先住ハワイ人と、その他の太平洋諸島の住民である。
 復興事業で建築される住宅は、住宅価格を押し上げ、先住民たちは住宅差別に直面するだろう。ジェントリフィケーションが進行するからだ。住宅運動「ハウジングハワイの未来」の事務局長スターリング比嘉は、AP通信社の取材で、「最近の新参者─一般的には高価な住宅を購入できる金持ちの米本土から来た人々─が、ラハイナの地元民と入れ替わるだろう」と語った。
 最も人口が多いオアフ島のホームレスの大半は、先住民と太平洋諸島出身者である。地域活動家は、山火事復興に便乗して住宅価格を吊り上げる不動産屋に抗議している。

2つのハワイ―気候変動起こした入植者と犠牲になった先住民

 気候変動で乾燥した熱波の日が続き、山火事が増えている。山火事に襲われたマウイ島西部は、火事の一週前日照りで乾燥していた。6月にマウイ島政府は、5月からの乾燥日照りを理由に、水道の利用制限を行った。洗車など不必要な水を使用した住民は、500㌦の罰金を取られた。だが観光業はハワイで使用する水の半分を消費しているのに、そのような罰金を科されなかった。
 ハワイ大学マウイ・カレッジ教授で活動家のカレイコア・カエオは「デモクラシー・ナウ!」のインタビューで、「観光資本がマウイの経済、住民、光景を変えた」と語った。
 山火事の後でもマウイは観光地だ。「3日前に火事を逃れて飛び込んで死んだ海で、観光客が水泳を楽しんでいるのを見て驚いた」と、現地の女性がBBCの取材に語った。「二つのハワイがあるのよ。私たちが暮らしているハワイと、あの連中が金儲けするハワイと」。
 19世紀の入植者が大農場を作った時に持ち込んだ外来種の植物がはびこり、山火事の火口箱となったのだ。カエオは言う。「ラハイナは昔湿地帯だった。入植者がそれを変えて、山火事が起きやすい土地にした」。「水路を埋め立てたり、流れを変えて、自然植物や森林を壊し、サトウキビ・プランテーションにし、次に、いわゆる『紳士の地所』『紳士の邸宅』の地に変えてしまった」。「大昔から住んでいた先住民は、入植者がもたらした大変化の犠牲になっただけだ」。

(人民新聞 2023年10月20日号掲載)

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