宮古島/陸上自衛隊ミサイル部隊の配備に抗議する/コロナ禍、軽視される離島の人命と人権/ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会事務局 清水 早子

島ごとクラスターになる⁉基地内集団感染のリスク

 琉球弧諸島の自衛隊軍事要塞化が進行している。今年3月、沖縄県の離島=宮古島にミサイル部隊が編成され、コロナ騒動の真最中にもかかわらず、4月5日、編成完結式典が行われた。昨年発足した警備部隊380名を合わせて700名規模となった。
 昨年3月4日、軍用車両が港から陸揚げされる際、私たちは車列前に立ちはだかり、制服警官に排除されるまで8時間阻止行動を闘った。
 防衛省はその経験を総括したようだ。今年3月に入ると、抗議行動を警戒して軍用車両を分割し、早朝に島に搬入した。気づいた時には、100台余りのミサイル車両が基地内に整列していた。構成は、新設の第302地対艦ミサイル中隊=約60名、長崎から本部ごと移転した中距離地対空ミサイル中隊を含む「第7高射特科群」=約180名、増員の警備部隊=約100名、計約340名の隊員も民間機等で分散してやって来た。
 世界中が未曾有の新型ウイルスの感染禍の困難に直面している。全都道府県に緊急事態宣言が出され、職場も学校も自粛を要請され、経済活動も生産活動も休止状態を余儀なくされ、市民生活は疲弊し、マスク、消毒、ソーシャルディスタンス2m以上と叫ばれている。
 そうした混乱のなか3月下旬、宮古島の陸自基地を訪れた熊本県軍駐屯地所属隊員6名のうち1名がコロナ感染。同隊員の接触者である宮古島駐屯地の隊員4名を隔離・経過観察していたことを、防衛大臣が公表したのは4月10日。しかし、自衛隊側も、4月8日に報告を受けていた市長も、宮古島島民に対しては、告知・注意喚起しなかった。

自衛隊には適用されない「自粛」
 それでも基地内では、10名程のグループごとに、隊員が密集し、マスクもせずに大声を出して軍事訓練を連日行っている。私たちは4月18日、駐屯地に対し「訓練と工事の中止」を要請し質問書を提出した。基地内で集団発生すれば、隊員もその家族も町へ出かけるので、市民への感染リスクは大きい。宮古島は人口5万5千人の離島で、医療資源は乏しい。感染者病床は3床しかなく、人工呼吸器も13個しかない。感染が拡大して島ごとクラスターになれば、簡単に医療崩壊が起こる。
 それでも自衛隊は、不要不急の訓練を続けている。私たちが要請行動した翌日も、「これが回答だ」といわんばかりに、訓練を続けた。住民の声など聞く気はないようだ。
 フェンス越しにマイクで訴えても、「住民の命など、どうでもいい!」というように訓練をやめない。市民に対し半強制的に「自粛」を要請しているが、その「全国標準」は沖縄の離島では、自衛隊基地内では、適用されない。
 湘南海岸や近郊の商店街に人が集まることを非難がましく報道しても、自衛隊基地内で実施される隊員の密集密接した訓練の事実を、全国メディアは取り上げない。
 4月21日、防衛大臣は会見で感染拡大防止の観点から「自衛隊の合同訓練を当面見合わせる」と語ったが、それは「一つの駐屯地や基地内で半数以上の隊員が参加する訓練」についてである。宮古島で半数というと350名にものぼる。それ以下の訓練は行われ続けるのだ。これは、密集ではないのか?
 この大臣会見以降、隊員はようやくマスクを着用するようになった。新聞配達や民間人が出入りする正門ゲート詰所の隊員すら、それまではマスク着用していなかった。この事実が国会で問題にされることはない。
 基地の情報は、隠される。基地建設工事の過程でも情報は隠蔽され、改ざんされてきた。基地内は、市民社会とは異なる基準で運営されている。政府・防衛省のダブルスタンダードは明白である。
 沖縄の離島で人命はこれほど軽く扱われ、人権は蹂躙されている。それは、末端の隊員の命が軽視されることにも通じる。露骨に政府方針に従わない自衛隊の姿がある。文民統制は機能せず、宮古島の自衛隊は治外法権状態である。
 自衛隊千代田基地は、①工事の過程で明らかになった「燃料施設の下の空洞と軟弱地盤」の問題、②「断層」が存在する問題、③「ウタキへの自由な立入権を奪われている」問題など、いくつもの問題が未解決のままだ。
 保良の弾薬庫建設予定地で続く造成工事も、連日千代田から土砂が運ばれ、この非常事態下でも工事は止まっていない。ミサイル部隊の配備という既成事実だけが積み上がっていく。
 なりふり構わぬ「棄民政策」が進行している日本。島民は、沖縄・離島の軍事要塞化の「人質」となっている。

陸自千代田マスクなし訓練


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