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人民新聞ガサイレ(家宅捜索)国賠訴訟 全面棄却 検察主張丸呑の大阪地裁 田口治美裁判長 根底に「日本赤軍関係者」の烙印と差別・弾圧

 2017年11月、兵庫県警は人民新聞の山田洋一編集長を詐欺罪で逮捕。本紙事務所を家宅捜索し、PCや読者名簿等を強奪した。山田は19年3月に有罪の不当判決が最高裁で確定した。だが本紙は不当な家宅捜索の責任を取らせるため、兵庫県に297万円の損害賠償などを求める国家賠償請求訴訟を大阪地裁に提訴(18年9月)した。
 21年9月15日、判決を迎えた。地裁第19民事部の田口治美裁判長(陪席は甲元依子・丸林裕矢裁判官)は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする」とだけ述べ、10秒で法廷から逃亡。法廷は怒号に包まれた。不当判決の内容をお伝えする。(編集部)

 山田の逮捕容疑は、「第三者に使わせることを隠して新生銀行の口座を開設し、キャッシュカードを詐取した」というもの。しかし、病気や海外渡航などで近親者に自分の口座の送受金を頼むことは誰もが行っていることだ。また「カード詐取」であるなら山田と新生銀行間のやり取りの問題であり、送り先や本紙は無関係だ。
 ところが兵庫県警は、逮捕当日に山田の自宅(兵庫県尼崎市)と新聞社を徹底捜索し、新聞社の生命線であるPC・読者名簿を押収し、本紙は休刊危機に陥った。現場で社員が捜索理由を何度聞いても答えなかったのに、捜索終了直後に「日本赤軍関係で逮捕・捜索」と一斉報道させた。事務所の入った雑居ビルを包囲し、社員や住人を検問し、地域からの孤立を狙った。
 結局、送金先が旧日本赤軍関係者の岡本公三さんであることが逮捕の本質で、「赤軍にこじつければ何でも許される」という弾圧だ。また権力と闘う人民新聞社を破壊する言論弾圧であることは明らかだ。今年4月の証人尋問では山田らが当時の状況を克明に証言したが、兵庫県側の弁護士は「放っておけば勝たせてくれる」とばかりにまともな反対尋問をせず、判決日にも来なかった。
 では、地裁はどう判断したか。10秒で逃げた田口らは、判決文で2つの言葉を延々と繰り返している。①新聞社の押収品は、全て山田の容疑と「一定の関係がある」「蓋然性を有すると認められる」。②「原告は不当だとるる主張するが、いずれもこれは認められない」。警察・検察の主張丸呑み判決だ。
 ①の「一定の関係」「蓋然性を有すると認められる」では、あまりに曖昧で間接的な表現であり、これを判決で多用しては、警察は「関係があるかもしれない」程度でいつ・どこで・何でも捜索できることになり、危険極まりない。私たち原告が「憲法の令状主義に反する」と批判したことも、「独自の主張で採用できない」と切り捨てている。
 ②は、いわば原告側が必死に準備し行った書類や証言=裁判闘争自体の全否定であり、これではもはや裁判は成り立たない。原告側の大川弁護士も、「『次々と』を意味する『るる』という言葉を使って主張を切り捨てる判決文はほとんどなく、明らかに強引だ」と憤っていた。

 判決文は、警察・検察の敵意と差別も丸写しだ。 まず、読者名簿のUSBが現場で解読できない、捜索立会人の社員が解読させないから押収したとのたまう。また社員が「叫び声を上げた」「PCの中身は見せない、パスワードは絶対に教えないと言った」と何度も強調し、「だから仕方なく押収した。本事件と関係する情報が蔵置されている蓋然性があるため」と書いているからだ。だが読者名簿は新聞社が最も守るべき情報で、PCが奪われたら新聞発行ができないし、事件とも無関係。拒否は当然で、そもそも人民新聞社が警察の捜索に協力するなどあってはならない原則だ。
 次に、警察は現場で立会人1人しか認めず、法で保証された撮影・録音・外部との電話を一切禁止し、軟禁状態にした。その手法や捜索に口頭で抗議すると、警察は体当たりして不当逮捕まで狙った。判決は、警察の異常な捜査手法を一切問わず、私たちの抗議の問題に転嫁しているからだ。
 また私たちは、危機感を社会化するため「マスコミや裁判所の人間が仮に個人的な罪で逮捕された場合、本社の仕事道具や読者名簿が全部押収されるなどありえないし、あってはならない」と訴えてきた。
 これに対し田口らは、「山田を含め4人程度と小規模の会社であって、山田との関係性が強いことが伺われる」、だから「容易に事務所内の証拠物が隠滅され得る」、「原告の事業規模等を踏まえれば、被疑事実との関連性は肯定され、大手の新聞社の記者等と比較する原告の主張は、事案を異にするので採用できない」と書いた。「小規模メディアなら何をしてもいい」という悪辣な差別と分断である。また、弾圧は小さな所から大きな所へ広げていくのが常道であり、判決はその道を開いたのだ。
 さらに判決は、「原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく理由がないから棄却する」と締めている。「司法の死」をこれほど表す結語はないだろう。
 田口は検事と裁判官の仕事を交互に行い、大阪地裁部総括判事に上り詰めた人間だ。結論ありきで検察の主張を丸呑みすることに慣れきっている判事なのだろう。
 判決後の報告集会、記者クラブの記者会見でも、弁護団、編集部、支援者が裁判長や警察・検察への怒りの声を上げた。本紙は弾圧に屈せず、活動を続けていく。

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