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【京都市】財政破綻危機叫び進める「公的ケア削減」と「再開発」

編集部 サパタ

ーー京都府京都市は「10年以内に財政が破綻する」という記者会見を行い、緊縮政策プラン「行財政改革2021―2025」を打ち出した。この文書は誤った原因分析を基に、危機を意図的に作り出し、京都市政が今後推進しようとしている諸政策を危機の処方箋として実行するための政治的マニュフェストである。今後、このような財政破綻を口実にしたショックドクトリン的手法は、全国の自治体で行われる可能性がある。

財政危機を口実に公的ケアをカット


 「行財政改革2021―2025」において、4500億円という莫大な財政を浪費した地下鉄東西線の影響には少し触れるているが、基本的には国の地方交付税の削減、人口減少と経済の低成長によって財政破綻の瀬戸際になったという、全国に共通の条件をあたかも自然災害のように原因として当てはめている。受益者負担の原則をもとにした財政の「必達目標」なるものを設定して、5年間で1630億円の財源を捻出することが、強い決意主義のもと宣言されている。

 そのため保育園・学童保育、障害児の放課後デイの利用料の値上げ、保育士の給料の引き下げ、保育園の民営化の推進、国保料・敬老乗車証の値上げ、公営住宅の家賃減免の廃止など、コロナ禍で重要性が再認識された公的ケアに対するコストカットの徹底が行われる計画だ。

 女性労働・シャドーワークと密接に関わっている再生産領域における公的ケアの大幅な削減は、ジェンダー的な搾取構造を強化するものであり、受益者負担の徹底なる言葉は行政の役割放棄に等しい。

 一方で京都駅周辺(東九条など)の再開発とセットになっている京都市立芸術大学の移転の305億円を既定路線とし、堀川地下バイパストンネルの1500億円、数千億円の京都市からの支出が危惧されている北陸新幹線の推進など、財政破綻した根源である開発プロジェクトへのさらなる「投資」が民間活力の活用などの名目で温存されたままだ。

駅前から貧困者を追い出し、富裕層向けに整備する「開発」

さらに京都市による複合化・集約化による「投資的経費の抑制」と経済の成長戦略という項目から今後の重点政策を分析することができる。「投資的経費の抑制」とは、これまで京都市が整備してきた公共施設は民間のテナントを含めた複合施設の新たな建設によって統廃合し、生まれた空き地は商業施設やマンション業者などに切り売りすることを意味している。

 例えば小中学校、幼稚園の統廃合は、さらなる土地の売却と多額の経費が必要になる小中一貫校の設置(一貫校2校の整備で150億円必要となる)が緊縮財政の政策メニューになっている。また、公園や公共図書館などの民間委託が掲げられており、公共施設というコモンが営利化と売却の危機にさらされている。

 また「成長戦略」として、農地である市街化調整区域の産業用地への転換や、不動産デベロッパー・金融業者と連携して駅前に子育て世代の誘致を名目とした、マンション開発の推進などが提言されている。公的ケアの削減とセットの子育て世代の誘致とは貧困者を市内から追い出し、駅前を富裕層向けの地区として整備することを意味している。

 公的ケアの削減とコモンの私有化、巨大交通インフラ投資、再開発と土地投機への都市政策の重点化という全国的な傾向に、ショックドクトリンにさらされた京都の運動はどのように対抗していくのか。その観点から今後も取材を行いたい。

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