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新型コロナウイルスに有効?/医療先進国=キューバが開発したインターフェロン/ヘレン・ヤッフェ(イェール大学出版ブログ、2020年3月12日)  翻訳 脇浜 義明

 中国の国家衛生健康委員会が新型コロナウイルス病原菌と闘うために使った薬は30種で、そのうちの一つが、キューバが開発した抗ウイルス薬インターフェロン・アルファ2bであった。この抗ウイルス剤は、中国・キューバ合資会社「長春海伯爾生物技術有限責任公司(ChangHeber)」が2003年から生産していたものだ。

キューバは世界有数の生命工学先進国

 キューバの生命工学の専門家ルイス・エッレーラ・マルティネス博士は、この薬が新型コロナウイルスと似た特徴を持つウイルスに有効であると語った。臨床例では重症化と合併症を抑制することが認められた。この薬は、1981年にデング熱と闘うためにキューバが開発したインターフェロンで、このおかげでキューバは世界有数の生命工学先進国となった。


 生命工学企業はジェネティック、アムジェンなどの私企業が米国にある。しかし1981年、キューバは非営利の学際的フォーラム「バイオロジカル・フロント」を設立した。発展途上国はこの「組み換えDNA・ヒト遺伝子治療・バイオセーフティ」など生命工学医療技術の利用手段がなかったが、キューバの学術研究の発展で大いに助けられた。キューバは、米国の情報封鎖と妨害の中でそれを成し遂げた。


 キューバのインターフェロン開発過程を見てみよう。インターフェロンは感染に際して警告反応し、細胞に抗ウイルス防御を高めるよう「合図する」たんぱく質である。この作用をロンドンの研究者が最初に見つけ、その後1960年代に米国人研究者がネズミの腫瘍を攻撃することを発見した。
 70年代にこの研究を受け継いだ米国人ランドルフ・クラーク・リーはキューバを訪問し、カストロ首相にインターフェロンの特効薬性を話した。キューバの血液学者の医師たちがクラークの研究所へ留学、インターフェロンを研究した。


 また、1981年には6人のキューバ人がフィンランドのカリ・カンテル博士の元を訪れ、共同研究し70年代にヒト細胞からインターフェロンを分離することに成功した。カリ・カンテル博士は、その技術を特許登録しないで全世界に公開し共有したのである。6人は帰国後すぐにキューバ最初のインターフェロンを開発し、その品質をカンテル研究所が確認した。

デング熱・B型骨髄炎・エイズを克服

 そのタイミングも良かった。というのは、その数週後にキューバでデング熱が勃発したからだ。生命を脅かすデング出血熱を引き起こすウイルスがアメリカ大陸で出現したのは初めてであった。34万人のキューバ人が感染、ピーク時には1日で1万1千人が発病し、死者は180人に上った。キューバはCIAがウイルスをばら撒いたと疑ったが、米国は否定した。しかし最近の調査で、デング熱は米国から持ち込まれたという証拠が明らかになっている。
 キューバ公衆衛生省は、デング熱に対しキューバ製のインターフェロンを使い、死者数はすぐに減少した。これはインターフェロンを使った予防・治療の大規模な事例として世界的に注目を浴び、1983年この症例に関するシンポジウムが開催され、カンテル博士が絶賛した。
 生命工学医療に確信を得たキューバ政府は、81年に「バイオロジカル・フロント」を設立し研究活動を奨励した。その研究から「インターフェロン2b」も開発され、多くのキューバ人の命を救った。86年には「キューバ遺伝子工学・生命工学センター」が設立された。
 1916年以降キューバでは、散発的にC型骨髄炎およびB型骨髄炎が流行した。世界にはA型およびC型骨髄炎に対するワクチンはあったが、B型に対するワクチンがなかった。すぐにこれと闘うチームが結成され、1988年世界初のB型骨髄炎ワクチンの開発に成功した。1989~90年に700万人のキューバ人にワクチンが投与され救われた。国連はこのワクチン開発を表彰した。
 キューバ製のインターフェロンは、デング熱に適用された後も、B型C型肝炎、帯状疱疹、HIVエイズなどさまざまなウイルス性疾患の治療に使われ、有効性と安全性を発揮してきた。細胞内のウイルス増殖を抑える機能があるので、がん腫の治療にも用いられた。今インターフェロン・アルファ2bが新型コロナウイルスにも臨床され、特効薬になり得るかどうかは、時間が経てば分かるだろう。

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