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【死に瀕する地球④】アマゾンの森林火災 違法伐採により今年だけで6万3000件

ロバート・フンジカー
『カウンターパンチ』9月9日 翻訳…脇浜義明

 1850年のアマソナス県設立を記念するアマゾン・デーにもかかわらず、ブラジルのアマゾン熱帯雨林の森林火事は荒れ狂っている。アマゾン・デーの精神にもかかわらず、違法な自殺的森林伐採が貴重な熱帯雨林を破壊している。5年ごとに続く長期干ばつのため、樹木が育つ時間がない。エコシステムがすっかり衰弱しているのだ。
 NASAの人工衛星グレースの映像が、アマゾンが破滅状態にあることを伝えている。「ディープ・レッド・ゾーン」と呼ばれる水位の異常低下流域が拡大している映像だ。「これは恐ろしいことだ」とNASAの専門家が言っている。12~2月がアマゾンの雨期だが、この雨期の降雨量は通常の75%だった。「今や運命の瞬間だ。生と死の転換期だ」と科学者。
 熱帯雨林で火事は滅多に起きない。湿気が充満しており、樹木の枝から絶えず水滴が滴り落ち、冷気が漂っているからだ。仮に下草が燃えたとしても、湿気のためにすぐに消えるから、「雨林」と言われるのだ。
 しかし、法律が禁じているにもかかわらず、森林伐採がはびこり、伐採跡地で火事が頻発している。ブラジル国立宇宙研究所によれば、今年だけで既に6万3000件の森林火災が発生している。
 アマゾンには世界有数の貴重な自然遺産や豊かな生態多様性がある。まだ未発見のものも含めて豊富な薬財資源もあり、何よりも大切なのはアマゾンが世界気候の調整役であることだ。アマゾンがなければ、世界の生活はスティーブン・キングのホラー映画のようになるだろう。そのアマゾンが、必要もないのに、違法行為のために燃えているのだ。

 ヤシ油や大豆や綿花を栽培するため、牛を飼うため、金や石油を採掘するため、材木を得るために、貴重な森林資源を伐採し燃やさないでも、世界はちゃんと暮らしていける。しかし、熱帯雨林が破壊されると、世界は暮らしていけなくなる。
 国際的非営利団体「レインフォレスト・アライアンス」によれば、ブラジル政府は意図的に企業の森林破壊を見て見ぬふりをしてきた。ボルソナロ大統領はそういう国際社会の批判をかわし、環境NGOが政府の評判を傷つけようとして放火しているという、ひどいことまで言った。
 彼がトランプを真似ているのは明らかだ。国連で「アマゾンはまっさらで、一切手を付けていない」、「ブラジルは自然を大切にする」と、平然と嘘をついた。この国連演説で彼はトランプを賛美した。彼が国連で演説をしている間に、アマゾンの熱帯雨林は燃え盛っていた。彼が大統領に就任してから、不法な森林伐採は84%も増加した。
 地球温暖化のせいで、気候変動が激しく大きくなっている。科学者が示したIPPC(気候変動に関する政府間パネル)モデルをはるかに超える異常さだ。
 北極から南極にいたるまで、手に負えない異常気象が頻発し、アマゾン熱帯雨林の生命を支える統合性が崩れていった。時間がたてば社会は克服できない難問を抱え込むだろう。
 シベリア、北極、南極、グリーンランド、オーストラリア、アマゾンにその証拠が見られる。アマゾンの干ばつ、900年間続いている中東地域の干ばつ、800年間続いているオーストラリアの干ばつ、東南アジア、中央アメリカ(乾燥回廊)、砂漠化したチリ中央部、干乾びたアフリカの一部、中国の爛倉江の下流になるタイのメコン川の100年間続いている水位低下などなど。例をあげればきりがない。
 世界の国々が協力し合って化石燃料使用を止めないと、手遅れになるだろう。

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