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労働組合 コロナ緊急労働相談ホットライン開設/被害は弱者から 救済は金持ちから/真っ先に切り捨てられる非正規労働者

 「国の対策も急ごしらえで曖昧。混乱が広がっている」―こう語るのは、ひょうごユニオンの小西純一郎さんだ。同氏は、「労働局も行政も、『わからない』『上に伝えます』ばかり。自治体で対応できる範囲を超えている」とため息をつく。緊急事態宣言が発せられた東京・大阪・兵庫など大都市圏では、コミュニティユニオン系の労組が、各地で緊急ホットラインを開設。休業、時短、解雇、雇止め労働相談を受け付けている。各地の労働組合の取り組みを取材した。(編集部・山田)


 ひょうごユニオン、ひょうごパートユニオンネットワーク、NPO法人ひょうご働く人の相談室、NPO法人ひょうご労働安全衛生センターは、3月16日、共同で「新型コロナウイルス」労働・雇用ホットラインを開設。今も相談を受け付けているが、相談件数は200件を超えている。

緊急事態宣言後も鳴り続ける電話

 相談内容は深刻で、緊急を要するものばかり。緊急事態発令後も電話は鳴り続けているが、解決の道筋が見えず、混乱は深まるばかりだ。相談活動を続ける前出小西さんは、「今回のような『非常事』には真っ先に社会的・経済的弱者がダメージを受けることが、改めて浮き彫りになった」と語る。
 ホットラインを開設した4団体は、3月16日、「緊急要望書」として、①働く者の収入と雇用を守るための公的な措置を講じる、②国に対する働きかけを強めること、などを兵庫県と兵庫労働局に申し入れをした。
 連帯ユニオン・関西ゼネラル支部(大阪市)でも、3月15日の第1弾に続き、27~29日にも緊急ホットライン第2弾を開催。東京東部労組ら3団体も「新型コロナウイルス関連」労働相談を実施中で、「おなかがすいて動けません」(女性パート)などの悲痛な声が届けられている。
 連帯ユニオン・関西ゼネラル支部の大橋直人さんは、相談の特徴について、「①雇用形態では、第1弾の相談=27件のうち24件が非正規。新型コロナに関わる経済的打撃が、現在のところ非正規労働者に集中している、②ホテルとその関連業種からの相談が2割を占めていて最多であったが、その他さまざまな業種に影響が広がっている」と語る。
 また、政府の経済対策については、「救済対象は企業救済のための措置や株価対策が中心」、「深刻な被害を受けるのは、非正規労働者やフリーランス、救済されるのは企業や金持ちだ」と語る。
 また、ひょうごユニオンの小西さんは、「日頃の相談では女性の割合が高い傾向にあるが、今回は男性も多く、ほぼ同数」と指摘。経済的影響は、非正規労働の中でも女性だけでなく男性にも広がっている。

「支援」ではなく「休業補償」を

 「30万円給付支援策」にしても、住民税非課税水準、または収入が50%以上減少した世帯とされるが、共働きで配偶者の収入が激減し、生計の維持が困難になっても国の支援を得られない、などの問題が指摘されている。
 安倍政権が打ち出した「108兆円緊急経済対策」だが、「108兆円」は民間融資などを含んでおり、「真水」と呼ばれる政府の財政支出は39兆円。このうち今回新規追加された国・地方の財政支出は、19兆円ほどでしかない。特に、事業者の資金繰り対策や家計への支援となると10・6兆円(補正予算)で、お粗末のかぎり。まさに「看板に偽りあり」といえる「対策」だ。
 時短・解雇・休業への「補償」が「支援」として出されていること自体も、政府の消極的姿勢が見て取れる。休業補償なしに安倍首相の言う「人と人の接触を8割減少させること」などできず、コロナの感染爆発を食い止めることはできないだろう。個人への直接補償は、非常事態脱出の必須条件だ。

ホットライン相談内容

東京
〇派遣切りで解雇され、寮も出なければいけない。
〇3月1日から休業させられているが、給料が1円ももらえず休業補償もない。(10年勤めている飲食店のパート)
〇就職が決まっていた会社から、『コロナで仕事が無くなり、採用はできなくなった』と連絡がきた。補償を取りたい。
〇2カ月間休まされていて給料が1円も払われていない。毎月の社会保険料の支払いも、住宅ローンもある。大変困っている。(旅行会社の正社員)
〇中国人の私へのいじめがひどいです。自宅待機を命じられて自宅にいますが、休業手当もなく、このまま退職させられそうです。

兵庫
〇夫がタクシー乗務員をしているが、2月以降、お客さんの減少で、売り上げ・賃金が大幅に減っており、今後どうなるのか不安。(タクシー会社の正社員)
〇小学生の子どもがいるが、少人数職場で休みにくい。休んだ場合の休業補償について教えてほしい。(薬局のパート労働)
〇休校により子どもの世話が必要になったが、会社は年次有給休暇で休んでくれという。新たな休業補償の内容を知りたい。(小売り・パート)
〇学校と市役所のマイクロバスの運転をしているが、1月末から仕事のキャンセルが相次いで、3月はゼロになりそうだ。(派遣/運転手)
〇休校で保育時間延長になったが、自分は小学生がいるので休めない。スタッフも、マスク・消毒薬も不十分な状態が続いており、矛盾を感じる。(パート/学童)
〇子ども相手の音楽教室をしているが、2月から休校の関係で教室が中止になっている。3月以降も続くなら生活の見通しがたたない。

大阪
〇コロナウイルスの影響で売り上げが落ちているため、派遣先が派遣社員全員その日から完全に出勤を停止すると発表。すべて休まされた。仕事がないので生活が立ち行かない。(中国人・女性、派遣)
〇派遣先は、中国産の品物を輸入する業務。中国から製品が入らなくなり、仕事がなくなったので、1カ月前に派遣先から解雇と言われ、先日解雇された。(男性、登録派遣)
〇内定取り消しになった。生活できないので、生活資金を借りたい。(女性、50代)

電話相談 受付窓口

ひょうごユニオン(兵庫)   TEL078-382-2116
連帯ユニオン 関西ゼネラル支部(大西)
        :06-6881-0781、06-6881-0110
新型コロナウイルス関連 雇用不安労働相談(東京)
    :03-3604-1294/03-3604-5983

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