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【アメリカ】自由の国襲うQアノンとはなにか。「合法的クーデター」という恐るべき可能性

編集部 脇浜 義明

 米国で台頭する極右「Qアノン運動」は、前世紀のナチズム、反ユダヤ主義(黒人・褐色人、黄色人もユダヤ人と扱われる)、白人至上主義(アーリア人=白人)の焼き直しだ。「Q」は、恐らく「4チャンネル(英語圏を対象とした世界最大規模の画像掲示板」に投稿した匿名人物の頭文字で、「アノン」は「アノニマス」(匿名)の略語である。
 かつての反ユダヤ主義ナチズムは、「ユダヤ人が我々の文化と政府を転覆して世界支配を目指している」という陰謀論を展開した。
 Qアノンは、ハリウッドのリベラル俳優や民主党政治家、ユダヤ人富豪ジョージ・ソロスなどが、秘密結社(「カバール」や「ディープ・ステート」と呼ばれる)として結成した。子どもの血を飲む悪魔崇拝儀式を行っている。
 そして、非白人移民を使って、「大いなる置き換え(有色人移民が白人から社会と権力を奪い取るという思想で、もともと欧州の移民排斥運動から発したもの)」という陰謀論を展開している。「同性愛者やトランスジェンダーを奨励して伝統的な米国文化と政治を破壊しようとしている」という陰謀論も広めている。
 欧州の反ユダヤ主義のネオ・ナチ思想が米国で根付いて、「グローバル主義者―リベラル、社会主義者、民主党員、LGBTQ権利擁護者、移民擁護者―を逮捕・処刑せよ」という運動になった。

ーー選択迫られる米国社会 保守専制主義政府か左翼政府か

 Qアノンを支持する一般米国人には、貧困白人層が多い。ユダヤ人の児童買春や子どもの血を飲むことやジョージ・ソロスの陰謀を、本当だと思っているようだ。彼らも普段は優しい愛国者、人の親、人の子である。
 しかし国家の敵と思い込めば、たとえ民主主義を破壊してでも倒さなければならない、と考えている。トランプのような危険人物を担いででも実行しようとする。この固定観念を変えることは難しく、それが共和党の草の根基盤となっている。
 デジタル・メディア『ヴァイス・ニュース』によれば、Qアノン運動推進者のジョン・サバルがQアノン集会を開いた。4人の共和党議員をゲスト・スピーカーに招き、「ユダヤ人が共産主義、第一次及び第二次世界大戦を作り出した」という、悪名高いネオ・ナチ映画を上演するという。
 保守主義者は、一般に反ユダヤ主義的陰謀論が好きである。特に過激な演説を好むようだ。その意味で彼らは、保守主義を越えてファシズムに導かれやすい。ちょうどイスラエルの政治風土の中で暮らすイスラエル・ユダヤ人が、ファシスト化してパレスチナ人嫌悪・迫害をやることと同じだ。
 Qアノン、トランプ、共和党は、憎悪とフェイクニュースの塊りである。しかし、司法機関は保守独裁状態で、地方州では黒人らの選挙権を奪う州法制定が進行しているので、合法的クーデターの可能性はいつでもある。米国はラテンアメリカでそうしたクーデターを指導してきたので、米国社会でもそれが起きる可能性は十分ある。
 ある意味で米国は、「保守専制主義政府か左翼政府かを選択しなければならない時期に近づいている、」と言える。

写真:トランプラリーで星条旗柄のQサインを掲げる男性


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