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沖縄辺野古・高江/工事作業員もコロナ感染/「緊急事態宣言」下で進む基地建設/地元の疑問に答えない安倍政権/沖縄県民 島袋 一太郎(仮名)

 沖縄県でも新型コロナウイルス感染者は増え続けている。デニー知事は4月20日、県独自の緊急事態宣言を出した。
 新型コロナが流行り始めた頃から、ゲート前の座り込みや、マスクもなしに何十人も立ち並び大声を上げる警備員、そして排除のときの機動隊員との接触が「濃厚接触」ではないかと、市民らも危惧をしていた。特に基地警備員は、全員ヤマトからであり、4月以降に移動してきた新人も多い。
 私たちは①マスク着用、②座り込みの際には「ソーシャルディスタンス」を保ち、③排除に来た機動隊員に接触する前に自ら移動する、などのルールをつくり、抗議行動を続けてきた。
 しかし、4月12日、名護市で初の感染者が出た。このため、参加者から感染者、あるいはクラスターが発生した場合、抗議行動を維持できなくなるとの判断から、4月15日から連休明けまで抗議行動を休止することが「オール沖縄会議」で決められた。
 一方、米軍嘉手納基地でも3月28日、感染者が出たことが判明。海外から戻った米兵だが、詳細は明らかにしていない。この件のみならず、米軍は基地内の感染者に関して詳細を非公開にする方針を公表したが、米軍関係者は基地内外で県民と接触するので、到底許せるものではない。
 さらに、4月16日には辺野古新基地工事に携わる作業員から感染者が出たことが判明。17日、シュワブでの工事は休止されたものの、安和桟橋、塩川港での船への積み込みは行われていた。河野防衛相は、当初工事を進める考えを示していたが20日、一転してすべての作業の中断を決めた。

辺野古設計変更を申請

 沖縄の感染者は、人口比で言えば全国14位、クラスターも発生し、危機的状況といえる。県民に、生活維持に必要な場合を除き外出自粛を要請し、県職員の半数を在宅勤務、知事給与3割削減など、県を挙げての感染拡大防止に取り組む緊急事態宣言を20日に発表した。ところがその翌朝、なんと政府は、辺野古新基地の軟弱地盤改良工事を伴う設計変更を県に申請した。
 デニー知事は「現下の状況を全く理解していない」と抗議。しかし国は、緊急事態宣言の対象を全都道府県に広げたことを受けて、知事は、「国、県は新型コロナ対策に主眼を置くべきだ。(政府の)姿勢に疑問を呈さざるを得ない」「県が求める対話に応じることなく、工事の手続きを一方的に進めることは到底納得できない」と断じた。タイミング的にも、内容的にも問題だらけである。
 さらに、4月10日には、米軍普天間飛行場から、発がん性が指摘される有機フッ素化合物のPFOSを含む泡消火剤14万リットル(ドラム缶720本)が強風にあおられ周辺地に漏れ出し、その泡の塊が園児たちの頭上に降ってきた。
 大事故にもかかわらず米軍は、基地外の除去作業をせず、宜野湾市消防署員が代行させられた。設計変更申請はこうしたなかでおこなわれたのである。
 河野防衛相は「識者の議論を踏まえた」、と言うが、検討しない「技術検討会」、監視しない「環境監視等委員会」に対し、地質学の専門家チームは、「護岸が崩壊する恐れがある」と指摘している。政府に軟弱地盤への疑問・再調査要請に答える姿勢はない。
 埋め立て用土砂の調達は、県外から県内へと切り替えたが、その調達先も決まってないし、県内環境へのダメージも検討されていない。また護岸を作らずに土砂を海中投入することによる汚濁防止策も示されてない。
 にもかかわらず、環境に及ぼす影響は「当初計画と同程度」とし、環境アセスメントも「やり直す必要はない」と言う。
 今年3月に出た住民訴訟の那覇地裁判決でも、設計変更について、「改めて環境影響評価が実施されるべき」としている。法治国家というならば、これに従うべきである。

高江で続く活動家の逮捕  

 昨年12月21日、沖縄県・米軍北部訓練場に「正当な理由なく立ち入った」として、刑事特別法第2条違反容疑で6人が現行犯逮捕され、逮捕から10日後、処分保留のまま釈放された。その後も同罪による逮捕が続いている。
 今年に入って、5人が令状逮捕された。2月19日には、「昨年11月に北部訓練場に入った」として、5人が刑特法違反容疑で令状逮捕された。同時に、家宅捜査も行われ、パソコン、携帯、通帳、キャッシュカードなどが押収された。過去の同法違反での逮捕は、12月の件も含め、現行犯か米軍からの身柄引き渡しによるもので、令状逮捕は異例だ。今回も検事から勾留請求が行われたが、地裁が却下し、2月22日夜に全員釈放された。
 これまでは、市民が訓練場内に入っても民間警備員によって出て行くように促され、市民らはそのまま出て行って終わっていた。過去のケースまで持ち出して逮捕するのは異例だ。刑特法に詳しい弁護士も、「身柄を拘束する必要はない、処罰が必要な事案でもない」、とコメントしている。
 押収令状には、北部訓練場とは関係のない、普天間飛行場代替施設、自衛隊基地、海上保安庁に関する資料などとも記載され、単に刑特法2条違反のみならず、反基地運動に対する弾圧であることが明らかとなっている。
 今回逮捕された5人は、2月25~29日に安和桟橋で取り組まれた集中行動の関係者でもあり、山城博治・沖縄平和運動センター議長は、「(集中行動の)関係者を狙い撃ちしたのだろう」、「新基地建設の計画変更で抗議行動が勢いづくことを恐れた国が、容赦なく市民を抑え込んだ。決して許さない」と批判した。ちなみに昨年10月の集中行動では、埋め立て用土砂の積み込みを1週間完全に阻止し、大きな成果を出した。2月、行動でも大きな成果をあげている。 
 12月逮捕、2月逮捕とも、処分保留中だ。3月末に弁護団が確認したところ、「捜査中」とのことだった。今後県警がさらに強硬な態度に出てくるのか、予断を許さない。不起訴、略式起訴、起訴とあらゆる可能性がある。
 今後とも注目していただき、ご支援いただければ幸甚です。

【救援カンパ先】
振替口座名:高江・刑特法による不当逮捕を許さない会
口座番号:
01750-6-151881

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