カンナ八号線を語らせて

 ふと仕事からの帰り道。頭の中に曲が流れてきた。松任谷由実のカンナ八号線だ。私はこの曲が好きだが、関連する何か、例えばカンナの花だか、中央分離帯とか、チェックのシャツだとか、そんなことは特に考えてはいなかったのだけれど突然にカンナ八号線が再生された。だけれど脳内での再生は限界があり、思い出にひかれてばかりなので家に帰って聴くことにした。

 カンナ八号線はどんな曲か。主観と偏見で紹介するならば、昔の恋を思い返す曲、と言える。順番に歌詞を載せて好きなポイントを存分に語らせてもらう。

チェックのシャツが風にふくらむ
後ろ姿を波をバックに焼き付けたかった
まぶたの奥に

それははかない日光写真
せつないかげろう
胸のアルバム綴じる日が来るの
こわかったずっと

雲の影があなたを横切り


 ここまでで爽やかな曲調とこの歌詞で想像が膨らむ。
 よく晴れた夏の日、青空をバックに大きな入道雲が水平線の上に浮いている。波打ち際を見れば一人いるあなた。少し強い風のせいで、シャツを時々膨らませながら佇んでいる。しかしその後ろ姿からはあなたの感情は読み取れない。それは遠いところから眺めているせいなのか、いつの頃からそうなのか。いつかくる別れの予感を感じながら、そしてその時を恐れるからこそ、この瞬間を目に焼き付けようと思った…。
ということが容易に想像できる。さすがユーミン天才が過ぎる。そしてこのあとのサビでは曲中で繰り返されるフレーズが流れる。

思い出にひかれて、ああここまで来たけれども
あの頃の二人はもうどこにもいない

 この歌詞が私はとても好きだ。昔の楽しかった記憶を頼りに、当時の気持ちを味わえると思い出の場所に来た。しかしそこはもうただの文字通り記憶にある場所にらなっていて思い出の場所とは程遠いところになっていた。そんな心情を察することができる。
 特に「あの頃の二人はもうどこにもいない」という歌詞、当時の二人はもちろんそこにいるはずはない。だがそれだけでなく二人のいずれもここに来たところであの頃の気持ちを思い出せなくなってしまった、というように私は読み取った。このもう戻れない、あの頃の気持ちさえ思い出すことは叶わない。歌詞だけ見れば悲しさを感じる。しかしそれを曲調によって過去の想いに別れを告げる、爽やかな切なさを感じさせる曲になっている。

 本当はこの曲を聴いて先日あった出来事をカンナ八号線の歌詞に重ねて書こうと思ったがどうしても野暮った来るなるのでやめた。これだけ良い曲なのだから自分の好きなポイントだけ語って爽やかに終わっておこう。ちなみに2番もこの曲の二人の関係性がわかるので是非とも通しで全て聴いてみてほしい。この駄文でもユーミンファンを増やす一助になればこれ幸い。


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