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アジアMBAパネルディスカッションの参加記録 - 台湾大学GMBA

アジアMBA夏祭りパネルディスカッションに当校から「ある学生が」参加したため記録に残しておく。(実際はだいぶ端折ったらしい)

MBAを目指した経緯

現職は台湾の欧米系企業で就業していますが、社内にMBAホルダーが珍しくなく、特に部門長クラスはMBA卒が多く、会社としてMBAは評価される土壌がありました。社内昇進も有利となるためというのが1点目。

次に、顧客窓口は経営層・財務部・管理部が大半を占めるため、異業種の経営トップ層と商談を円滑にするには経営の知識が不可欠と感じたためです。

建前はそんな感じではありますが、本音は純粋な憧れと学校説明会で教授と在校生の話に腹落ち感があり面白そうだと思ったからでした。

MBA生活

実際に働きながらMBAはかなり大変でした。特に1学期目はいろいろ失敗しボロボロでしたが、全てが新鮮でもの凄く楽しかったです。

8月14日に学校説明会もあるのでここでは深堀しませんが、国立台湾大学GMBAは多様性のバランスがとてもよいのが特徴です。

学生の多様性、教授陣の多様性があり、イベントが盛りだくさんです。
校風もLeave no one behind 誰も取り残さない風潮で、クラスメイトを家族として助け合います。あと、「ゆるふわ系」が多く、フレンドリーなのが特徴的かもしれません。

MBA卒業後、台湾で仕事をするに至った経緯

私の場合はMBA前から現職で働いているのですが、前職がシンガポールでフランス系企業で働いていて、シンガポールの人口の7、8割が中国語を話しますし、中国語を学んだらおもしろいかもと思い台湾に渡りました。元々は中国語を学んだら別の国で就活を考えていたのですが、予想以上に台湾が気に入ったこと、その間に台湾人である妻とも出会い、就職活動をすることになったのですが、日英中できて業界の経験がある人材が当時は台湾に少なかったことが理由であっさり就職は決まりました。

他の日本人卒業生の進路は、例えば私のひとつ上の学年の先輩は、卒業後就活して外資コンサルの日本法人採用となり、台湾在住でリモート勤務をしています。
もうひとりの先輩は元々私のように台湾で働いていたのですが、卒業後転職して、日系大手企業のアジア統括拠点シンガポール法人のグルーバル採用で台湾勤務しています。

近年の日本人の学生の傾向は働きながらのパートタイムが多いです。日本企業の台湾駐在員で通学している人もいますが、台湾で就職する問題点は給料が低いことがよく言われていまして、最近の傾向としては給料の高い国、シンガポール、香港、日本などで採用されて台湾で働く人が増えている印象で、デメリットの部分は解消されているように思います。

コロナ禍を経て台湾のビジネス状況はどのように変化しているのか

台湾を取り巻く環境は急速に変化しています。台湾においてはコロナ禍の影響は最小限に抑えつつ、ゼロコロナ政策からウィズコロナ政策に段階的に移行中で、世界全体と比べ経済は好調です。外資を含む在台湾の企業はコロナ禍のなかで売上が上がった企業も多く、また技術力を武器に半導体、エレクトロニクス、IT系など成長が加速しました。コロナ政策に成功した台湾に投資をする大手外資の参入が立て続けにあり、特に半導体分野においては世界を独占しています。

国際政治の側面では台湾、アメリカ、日本の結束が強まっています。今までグローバル企業におけるアジアのヘッドクォーター的機能はシンガポールや香港が主流でしたが、最近は日本企業でも台湾をアジアの統括拠点とする動きが増えてきました。近年マイクロソフト、グルーグルなどアメリカ系大手IT企業でも台湾に重要なデータセンター建設したり、ヨーロッパ系企業も再生可能エネルギー分野で大規模な投資を行っています。全体的に株価も好調ですし、相対的な台湾ドル高が進んでいます。

人的流れとして近年は外国人の流入が多く、香港人、日本人も増えたように思います。ヒトモノカネに加えて技術と情報が台湾に集中しているので、このような環境のなかビジネスチャンスは非常に多くなっているように感じます。

台湾MBAの価値はどのように活かせるのか

国立台湾大学GMBAは書面では欧米のケーススタディを多用していますが、一部アジアのケースもあります。台湾のケースは書面では少なく、というのも台湾企業、例えばTSMCなどは謙虚に自分たちはケースに値しないと言い、書面のケースにしたがりません。まぁ実際には企業機密情報が漏れることを嫌がっているだけかもしれませんが、そういった事情がある中で、実際に台湾企業を訪問をしたり、リアルタイムに生きたケースを学ぶことができるというのは大きな価値だと思います。

私自身は他のビジネススクールに行った経験はありませんが、既に欧米のMBAを取っていて、台湾のコネクションがほしいからという理由で台湾大学GMBAに来ている学生が一定数います。彼らがいうのはどこのビジネススクールも授業の内容はたいして変わらないということです。なので違いは誰と繋がることができるのかとROIに集約されてくると思います。

台湾大学自体の知名度はアジアでも高いと感じていていますが、台湾内においては断トツのブランド力です。私は在学中に就職活動はおこなっていないのですが、台湾大手企業や台湾人投資家からいくつか向こう側からよいお話を頂いたことはありました。

あと、駐在員のかたは上昇志向が強い傾向にあるので「台湾駐在中にMBAを検討したい」と考えるようです。数人、日本企業の駐在員のかたから台湾大学のMBAがどうか話を聞きたいと依頼されたことがあって、もちろん引受けるのですが、それをきっかけに現職のビジネスの話になったこともあります。

もうひとつ加えたいのは、日系ビジネス以外を開拓できるようになるということです。私の場合は欧米企業の台湾法人、日系ビジネス担当ですが、当然ながら「日系ビジネスしかやってはいけないというルール」はありませんので、GMBAでできた人脈から台湾系、欧米系企業との商談をすることも増えました。今後日系企業の規模が縮小していく傾向があるなかで「日系ビジネス以外も開拓できる能力」は必須となっていくでしょう。現職とMBAの人脈を通してそのような経験を積めることが将来の大きな糧になると感じています。

台湾で働く魅力、今後の現地ビジネス環境の展望

魅力として、台湾の特に半導体、エレクトロニクス、IT業界はそれぞれ世界トップレベルまで成長しました。そういった最先端の技術を間近に感じ、すぐにアクセスできる環境で働けるのは魅力的だと思います。好調な産業がすぐ近くにあるからこそ、台湾全体の景気が良くなり、ビジネスチャンスも増えますし、給料にも跳ね返ってきやすいかと思います。

外国人を含むマイノリティーに優しい政策を進めていて、人それぞれ違うことへの寛容度が高いのでストレスも少ないです。有給もほぼ100%消化が義務に近いのでライフ・ワーク・バランスも良好です。そういったことも外資が参入しやすい条件のひとつなのかなと思います。

人的流れとしては近年は香港人、日本人の流入が増えたように思います。GMBAにも香港人、日本人が増えました。

今後の展望は政府が英語の公用語化を進めてるのでますます国際化が加速するかと思います。既に複数観測していますが、日系含む外資企業のアジア統括拠点が今後も増加するでしょう。例えば日系企業であれば本社から日本人駐在員を台湾に送り、文化的にも日本に近く語学堪能な優秀な台湾人を育成して駐在員として東南アジアに送り込むというモデルのほうが双方にとってWin-winです。台湾企業と日本企業のパートナーシップもますます増加していくと思います。

ヒトモノカネに加えて技術と情報が台湾に集中しており、政治的にもアジア民主主義の灯台と言われる台湾で学ぶことはそれらを身近に感じながらみなさんの貴重な時間をより一層有意義にすることと確信しています。

最後に一言

MBAは入ってからが大変で私の場合はビジネスの基礎が全体的に弱かったために本当に苦労しました。働きながら3年かけていますが、その期間に出会い、苦楽を共にした仲間はかけがえのない生涯の友人です。なにかを犠牲にしなければならない局面もあり、覚悟は必要ですが、海外で働くうえで重要なネットワークを構築できることも大きな魅力です。

海外で働くということは常に自分がマイノリティになるわけで、厳しい立ち位置となることもありますが海外MBAの経験がそのような状況を乗り越える大きな助けとなると信じています。みなさんと世界のどこかでお会いできることを楽しみにしています。


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