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令和7年度の派遣労働者の一般賃金水準を公表

厚生労働省は、令和7年度に適用される派遣労働者の一般賃金水準を公表しました。この情報は、派遣元企業や派遣労働者を使用する派遣先事業所にとって重要な指標となります。本記事では、新しい賃金水準の詳細と、それに関連する重要な情報をお伝えします。

令和7年度の一般賃金水準

令和7年度に適用される派遣労働者の一般賃金水準は以下の通りです:

  • 職業安定業務統計を活用した一般賃金水準:1,248円(前年度比+30円)

  • 賃金構造基本統計調査を活用した一般賃金水準:1,320円(前年度比+44円)

これらの数値は、派遣労働者の賃金決定において重要な基準となります。特に、労使協定方式を採用している派遣元企業は、この一般賃金水準を参考に、派遣労働者の賃金を決定する必要があります。

賃金水準の変動

令和7年度の一般賃金水準は、前年度と比較して上昇しています。賃金構造基本統計調査を基にした場合、85職種で賃金水準が上昇し、44職種で下降しています。この変動は、労働市場の動向や経済状況を反映したものと考えられます。

派遣元企業は、この変動を考慮しつつ、個々の派遣労働者の賃金を決定する必要があります。また、派遣先事業所も、この賃金水準の変動が派遣料金に影響を与える可能性があることを認識しておく必要があります。

一般賃金水準に用いる各指数等の更新

一般賃金水準の算出には、様々な指数や調整値が使用されています。令和7年度の通達では、以下の更新が行われています:

  1. 賞与指数:0.02(変更なし)

  2. 能力・経験調整指数:各年数に応じて更新

  3. 学歴計初任給との調整:12.6%(変更なし)

  4. 一般通勤手当:73円(+1円)

  5. 退職手当に関する調査:就労条件総合調査と賃金事情等総合調査を更新

  6. 退職金割合:5%(変更なし)

これらの指数や調整値の更新は、より現実的な賃金水準の算出につながります。派遣元企業は、これらの数値を参考に、適切な賃金設定を行うことが求められます。

派遣労働者の同一労働同一賃金

派遣労働者の賃金決定に関しては、「同一労働同一賃金」の原則が適用されます。これには、以下の2つの方式があります:

  1. 派遣先均等・均衡方式

  2. 労使協定方式

派遣先均等・均衡方式

この方式では、派遣先の正社員との均等・均衡待遇が求められます。派遣元は、個別の待遇(基本給、賞与、通勤手当、福利厚生など)ごとに、派遣先の正社員と派遣労働者の職務内容や職務内容・配置の変更範囲を比較し、不当な待遇差が生じないようにする必要があります。

労使協定方式

この方式では、派遣元の過半数労働組合または過半数代表者との間で締結した一定の要件を満たす労使協定に基づいて待遇を決定します。この協定には、対象となる派遣労働者の範囲、賃金の決定方法、職務内容等の公正な評価方法、有効期間などを定める必要があります。

特に重要なのは、賃金が「一般労働者の賃金額と同等以上」であることです。この「一般労働者の賃金額」が、今回公表された一般賃金水準に該当します。

厚生労働省編職業分類の改定

令和7年度の一般賃金水準の算出には、改定された厚生労働省編職業分類が使用されています。この改定は、産業構造や職業構造の変化に対応するために行われました。主な改正内容は以下の通りです:

  • 大分類項目の見直し:11項目から15項目に

  • 中分類項目の見直し:73項目から99項目に

  • 小分類項目の見直し:369項目から440項目に

  • 細分類項目の廃止:892項目から0項目に

この改定により、より現代の労働市場に即した職業分類が可能となり、それに基づいた一般賃金水準の算出が行われています。派遣元企業や派遣先事業所は、この新しい職業分類を理解し、適切な職種の選択や賃金設定に活用することが重要です。

ハローワーク別地域指数の訂正と再発防止策

厚生労働省は、令和6年度のハローワーク別地域指数の算定に誤りがあったことを公表し、その訂正と再発防止策を実施しています。

訂正に伴う対応の進捗状況

令和6年7月31日時点での進捗状況は以下の通りです:

  • 52事業所、338人の派遣労働者において、賃金額の引き上げおよび差額の支払いが実施済みまたは確定

  • 41事業所では、誤りのあった指数による労働者派遣の実績がなかった

  • 42事業所、248人の派遣労働者について、フォローアップを開始

派遣元企業は、この訂正に伴う対応が必要かどうかを確認し、必要な場合は速やかに対応することが求められます。

再発防止策

厚生労働省は、以下の再発防止策を実施しています:

  1. デジタル技術の導入によるヒューマンエラーの排除

  2. 外部業者を活用したベリファイ方式の実施による公表数値の確実性の確保

  3. 作業や発注の前提となる事項の確実性の確保

  4. 課内体制の強化及び作業手法の整備

これらの再発防止策により、今後の一般賃金水準の算出や公表がより正確に行われることが期待されます。

派遣元企業・派遣先事業所への影響と対応

令和7年度の一般賃金水準の公表は、派遣元企業と派遣先事業所の双方に影響を与えます。

派遣元企業への影響と対応

  1. 賃金水準の見直し:新しい一般賃金水準に基づいて、派遣労働者の賃金を見直す必要があります。特に労使協定方式を採用している場合は、協定内容の確認と必要に応じた改定が求められます。

  2. 労使協定の再締結:賃金水準の変更に伴い、労使協定の再締結が必要になる場合があります。その際は、過半数労働組合または過半数代表者との協議を丁寧に行うことが重要です。

  3. 派遣料金の見直し:賃金水準の上昇に伴い、派遣料金の見直しが必要になる可能性があります。派遣先事業所との交渉を適切に行う必要があります。

  4. 職業分類の確認:改定された職業分類に基づいて、派遣労働者の職種を適切に分類し直す必要があります。

派遣先事業所への影響と対応

  1. 派遣料金の変動:派遣元企業からの派遣料金の見直し要請に備える必要があります。賃金水準の上昇が派遣料金に反映される可能性が高いです。

  2. 均等・均衡待遇の確認:派遣先均等・均衡方式を採用している場合、新しい賃金水準を踏まえて、自社の正社員と派遣労働者の待遇の均等・均衡を再確認する必要があります。

  3. 情報提供の準備:派遣元企業から、均等・均衡待遇のための情報提供を求められる可能性があります。自社の正社員の待遇に関する情報を整理しておくことが重要です。

まとめ

令和7年度の派遣労働者の一般賃金水準の公表は、派遣労働市場に大きな影響を与えます。派遣元企業と派遣先事業所の双方が、この新しい賃金水準を正しく理解し、適切に対応することが求められます。

特に重要なのは、派遣労働者の適正な待遇確保です。同一労働同一賃金の原則に基づき、派遣労働者が公正な待遇を受けられるよう、派遣元企業と派遣先事業所が協力して取り組むことが必要です。

また、今回の職業分類の改定や、ハローワーク別地域指数の訂正と再発防止策の実施など、派遣労働に関する制度や運用の変更にも注意を払う必要があります。

派遣労働は、日本の労働市場において重要な役割を果たしています。この新しい一般賃金水準を適切に活用することで、派遣労働者の待遇改善と、労働市場全体の健全な発展につながることが期待されます。

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